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冬の色がする。 2022年11月20日

朝。

電車から見える

街の色が

とても綺麗だ。


まだ眠い頭の中で、どうあがいても一限に間に合っていない電車の中で、考える。

色んなことを考える。

時々ぼーっとする。それも、気づいたらやめていて、また色んなことを考えている。気が付いたら考えて、気が付いたらぼーっとして、また考えて、ぼーっとして、その繰り返し。

そんな風に頭を回す人たちを沢山乗せながら、

電車って走っているんだろうなと思う。


隣に立っている人は、
今何を考えてるんだろう。

つり革一つはさんで隣の人。秋物のコートに、冬用のマフラーを巻いている人。何考えてるんだろう。

朝に見たニュース。がんばって起こした眠そうな家族。朝ご飯。会社のスケジュール。目の前に座る人の金髪。昨日の夜やったソリティア。

何、考えてんのかな。
私と一緒で、眠くて、何にも考えてないのかな。

物凄く悩んでいるかも。

反対に、とても楽しみにしていることがあるのかも。

今してたあくびも、

泣いてるのをごまかすためだったらどうしよう。マスクしてるからって、誰も見ていないからって、公の場で崩れるのって勇気がいると思うから。

反対に、笑いそうなのをこらえるためだったらどうしよう。マスクしてるからって、誰も見ていないからって、公の場で大笑いするのって、これも勇気がいると思うから。

それとも単に眠いだけかな。

だといいな。

眠いよね、朝って。最近寒いし。




寒い季節の朝に電車に乗っていると、見えてくる街並みの中に、「桜色の場所」がある。

朝早く、澄んだ空気をした街並みの中にある。太陽の光が家やアパートを照らしていて、見える建物の壁一つ一つが、ピンクとオレンジを混ぜたみたいな色に染められている。そのほんのり明るくて優しい朝日の色に、元の建物の色が透けていて、だから全く同じ色は一つも無くて、それで街全体が一つのモザイク画のようになっているのだ。

それを見ると、毎年「あ、冬だ」と思う。



「桜」は春のものだけど、「桜色」は、冬の朝の色だと思う。
桜の色。桜の花びらの色。ほとんど白い薄めのピンクに、透明なオレンジの傷。でも絶対に、ピンクではない。オレンジでもない。花びらが薄くて傷つきやすいから、いろんな傷の色が混じっている。遠くから見ると、元の薄ピンクと、傷と、汚れと、色々混じって、世界に一つだけの色になる。元の一つ一つの原色なんて全くとどめていなくて、それでもどこかに元の色はちゃんと透けていて、混ざって混ざって混ざっていて、なんか、もう、

「何かと混じって綺麗なら、もうそれでいいんだよ」

って聞こえてくる。








か、どうかは別として。




冬の朝に電車で見る景色。快速列車で一瞬にして通り過ぎる、ほんの少しだけ見えるあの色が、電車の窓から見える景色の中で一番好きだ。


今日の朝。

電車から見えた

街の色が

自分の大好きな桜色で、

とても綺麗だった。


いつまでも眠い頭に、どうあがいても一限に間に合っていない電車の中。隣の人のあくび。光る目元。照らす朝日。車窓の向こう。街並み。それが今日、今年初めて、桜色だった。

それを見ながら、

色んなことを、考えて、

色んなことに、ぼーっとしていた。



そんな、朝だった。









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