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木のカルタ 2022/11/13

・地元の文化の話でも。


北海道の田舎では、百人一首が木製なんです。
知ってた?

読めそうで読めないこの木の札を取り合うのが北海道の百人一首。

普通の百人一首は短歌の「上の句」を読み上げて、それに対応する「下の句」の書かれた札を取る。

この木の百人一首は、「下の句」を読み上げて「下の句」の書かれた札を取る。

なので「下の句カルタ」なんて呼ばれてたりする。
普通のカルタと同じルールでわかりやすい。

なので北海道の人は百人一首の上の句を知らないままの人が多い。
「村雨の~」と言われても全然ピンとこないけど、「きり立ち」って言われたら「ああ!」ってなる。



僕の親世代はわりと盛んにやってたと思うけど、今の子は知らない子多そうだな……。

おや??
「ものや」です。




・通常の百人一首は1体1で50枚ずつ札を持つが、下の句カルタは3対3のチーム戦。

布地に雑に線が引かれてて、目の前の人と勝負をする形。
自分の陣地と向かい陣地の札は取れるが、横の人のは取れない。

相手の陣地の札を取ると、自チームの好きな札を1枚相手に送り付けられる。
ここの戦略性が面白い。


・3人の札の分配は自由。1人5枚以上は持たなきゃダメだけど。

ただ、上級者のチームはだいたい5:5:40で持つことが多い。

5:5:40
40:5:5
の形で向き合って対戦する。

40枚持つ人が「守り」とか「受け」とか言われるポジション。
真ん中の5枚持つ人が「中堅」。向かいの人も5枚しか持ってないので多分暇なポジション。
「守り」の対面のポジションが「突き」。相手の守りから札を取って、自軍の守りの要らない札を押し付ける攻撃ポジ。


なんでこの形になったかは知らない。
でも上級者はみんなこれ。
wikiにも書いてる。


・敵陣の札を取ることを「入った」、自陣の札を取ることを「上がった」という。

まじで同時に突くと
「入ったぁあ!」「上がったああ!」
「え、今入ったって」
「いやいや完全に上がった」
みたいなやりとりになる。

そういう時は審判に判定を求めるが、審判も判断出来なければ読み札を山札に戻してもらってもう一度どこかで読んでもらう。

大会とか大人数でやるとどこか別のチームがこの制度使ってて、読まれたのに誰も取らないみたいな時間が発生することも。


・普通の百人一首は着物を着て優雅にやるイメージが大きいと思う。ちはやふるとかのイメージ。
あれも実際優雅じゃないんだろうけど。

下の句カルタは服装の指定がない。
ジャージにTシャツが1番多いと思う。

異質なのが、「威嚇」「煽り」をしてもいいところ。

読み手が札を読む時、前に読まれた札の下の句を読んでから次に取る下の句を読むルールがある。
いきなり取る札の歌を読み上げると分からないからってことだと思う。


なので前に読まれた札の下の句を読んでいる時は威嚇タイム。
床をバンバンと叩き、気合いを入れるために叫ぶ。
実際相手の威嚇が怖いと萎縮してしまうので割とマジで効果はある。

相手の札を取った時はその勢いで相手の床をバンバン叩き、なんならフィールド上をハイハイで床を叩きながら敵全員を煽る。


今考えると怖いわ。なんの時間なんだ。

ガチ勢はこんな感じ。
大会になるとどのチームも叫んで叩いてかなりうるさい。

ガリレコの高井さん(北海道剣淵町出身)もネタにしてる。
ちゃんとやってた人の動きですね。




・特徴なのがもう1つ。
読み手の読み方が厳密に決まっている。

例えば
「我が衣手に 雪は振りつつ」(わがころもでに……)
「我が衣手は 露に濡れつつ」(わがころもでは……)
などの途中まで文字が完全に同じ札がある。(自重札|《じちょうふだ》という)

実はこれ、読み方がちゃんと決まっているので
「わ」の発音のさらに前の「w」くらいで確定できる。

ここで文字で書くのは難しいんだけど、
「ぅわーがー」と読み始めると「我が衣手は」だし、「ンぅわ~がっ」と読み始めると「我が衣手に」になる。
なのでプレイヤーは「わ」のさらに前の「ゥ」か「ン」を聞いて取れる。

というか自重札は読む前に1呼吸置かれることが多く、自重札が他になければもう読む前に取れちゃったりする。



みたいの読み方のルールがなんとなく決まっていて、読み手に求められるスキルも中々高い。
実家のカルタの箱の中には読み方の一覧表が挟まってる。

「身を尽くしてや恋」と「身を尽くしてもあはん」も
「ンムィ~」から入れば「あはん」の方。

訳分からんでしょ?こういうもんなんです。

と言っても読み手によってわりとクセがあるので、全然抑揚を付けてくれない人もいたり。
そういうのも考えながらプレイしていく競技なんです。


・こういう分かりにくい札が読まれてどっちか微妙な時は手で札を隠して相手に取られないようにブロックしたりするのも許されている。

流石に両手で完全ガードすると怒られるけど、片手で札の前に手を置いて確定したら親指で取ったりする。

あと札に触れない程度にフェイントをかましたり。

こう書くとちょっとスポーツマンシップからは外れてるね。


・あと「お手付き」(北海道弁で「てっぱ」)も普通の百人一首とは違う。
たしか普通の百人一首は読まれた札がある陣地の札はどれ触っても大丈夫だったはずだけど、下の句カルタは当たりの札以外の札は少しでも触れるとお手付きになる。

なので指先で強タップをする感じで札を取る。
普通の百人一首みたいに札を吹っ飛ばしたりはあまりしない。たまにしちゃうけど。

お手付きをすると、お手付きをした枚数分相手から札が送られてくる。
当たり札を取る時に横の札にカスってお手付きになるのがあるあるのパターン。

(マナー悪いけど上記のガードしてる手を押して無理矢理お手付きにさせたりする戦法もある)



・ルールや特徴の違いはこんなもんでしょうか。
だいぶ荒々しいカルタだってのが伝われば嬉しいです。(誰?)




・小学生のころ、地元の町内会で百人一首を教える会があってよく参加してた。

僕の地域の町内会はお寺で練習させてもらっていて、立派な仏様の前で小学生から大人まで30人くらいで同時に練習。
そこのお寺のお坊さんが読み上げてくれるのでめちゃくちゃ聞き取りやすかった。

町内会どうしで大会も開かれており、それはそれは白熱したバトルを繰り広げていた。

町の大会で勝つと地区の大会へ進出。
僕の地元は北海道の1番北の地区なので稚内の大会に出た。

そこでさらに勝つと全道大会。
まあ北海道ローカル競技なので実質全国大会なのだけど、札幌の定山渓ビューホテルで大会がある。

ぼく一応、全道大会に出たことがあるんです。
補欠だったからあんまり覚えてないけど。

多分このnote読んでる人の中では1番ガチ勢です。

というかマイナーすぎて存在を知ってる人は僕だけなのでは……?


・友達の松山くんは「末の松山」っていう札を絶対に取るマンだったし、僕は乙女座なので「乙女の姿」を絶対に取るマンだった。

こういうお気に入り札を相手に取られると精神的にやられるのでお気に入りは作らない方がいい。


・実家には下の句カルタがある。
しばらく触ってないけど、年末に帰った時に出してみようかな。

ばあちゃん家にもあるはずだし、親父に読んでもらって親戚と遊んでみようかな。
みんな麻雀してるか。
姪っ子がひらがなスラスラ読めるようになったらやってみよう。



・長くなった!おわり!




いらん写真

フォロワーさんと一緒にやきいもフェスと東京ミステリーサーカス(謎解き)に行ったよ
レポート日記はそのフォロワーさんが書いてくれたので割愛!

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