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デジタルで実現する新しい物流の形 #01 【ハコベル株式会社代表取締役社長CEO 狭間健志】

ロジ人では物流テック(LogiTech)と分類される業界の著名人、サービスをインタビューしていきます。今回は、2022年8月にハコベル株式会社代表取締役社長CEOに就任された狭間健志さんにお時間をいただきました。#01では物流のデジタル化についてお聞きしていきたいと思います。

▼ ハコベル株式会社代表取締役社長CEO 狭間健志氏
2009年に東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了後、ベイン・アンド・カンパニーに入社。2017年に同社を退職し、同年ラクスル株式会社に入社。執行役員ハコベル事業本部長として5年間職務に携わったのち、分社化に伴い2022年8月、現職に就任した。


より多くの運送会社にアクセス可能に

ー はじめにハコベルの事業内容を教えていただけますか。

大きく二つの事業を展開しています。
一つ目は、運送マッチングサービスです。
運送マッチングサービスは、荷物を送りたい人(以下、荷主と呼ぶ)と運送会社を結びつけるマッチングサービスになります。

現在38,000台強の車両が登録されており、荷主にとって必要なときに、必要な種類のトラックを手配できます。運送会社やトラックドライバーの方々にとっては、非稼働時間を有効的に活用できるメリットがあります。


二つ目は、荷主へのソフトウェア・システムの提供です。
具体的には「ハコベルコネクト」と呼ばれるシステムで、配車の最適化や協力運送会社との受発注(運送業務の依頼をすること、また依頼を受けること)から運行管理、請求・支払までワンストップで実現する物流DXシステムになります。

荷主や協力運送会社にとって、業務自動化・受発注に関する情報の一元化により、物流データの可視化、業務コスト削減、輸配送コスト削減に繋がるメリットがあります。

ー 運送マッチングサービスをどのようなきっかけではじめられたのでしょうか。

二つ理由があります。一つ目は、荷主がより多くの運送会社にアクセスできるようにするためです。
日本には約60,000社の運送会社がありますが、荷主が運送を依頼できる運送会社は限られています。

なぜかというと、物流業界の受発注業務は極めてアナログな世界で、最適な運送会社をより多くの選択肢から選ぶのではなく、自分たちが知っている選択肢から選ぶことが一般的になっているためです。

二つ目は、多重下請け構造を解消するためです。
物流業界には中小企業が非常に多いため、運送業務を受託しても自社で対応しきれず、他社に委託する現状があります。つまり、元請け企業が二次請け、三次請けと再委託する構造となっています。

ですので、その構造を解消するために「インターネットを通じて、荷主が運送会社に直接発注できる仕組みを作りたい」という思いがありました。

運送マッチングサービスでは、インターネット上で「この日の運賃は高い」「この日の運賃は安い」と状況によって価格を決める仕組みにより、元請け以外の運送会社と適正な価格でのマッチングを可能にすることで、多重下請け構造の解消を目指しています。


受発注業務に留まらない業務全体のデジタル化

ー 「ハコベルコネクト」は、どのようなきっかけではじめられたのでしょうか。

運送マッチングサービスを運営する中で「ウェブを通じてハコベルに運送を依頼する仕組みがほしい」とご意見をいただき、システムの提供を始めたことがきっかけになります。

また、受発注業務をデジタル化するだけでなく、それ以外の業務もデジタル化しなければ、業務全体の生産性が高まりません。
そのため、受発注から運行管理、請求・支払まで業務全体をワンストップでデジタル化することを目的に、「ハコベルコネクト」を提供しています。


ー 「ハコベルコネクト」を活用するとどのようなメリットがありますか。

大きく二つあります。一つ目は、配車が最適化されることです。
このシステムでは、運送マッチングプラットフォームの仕組みを用いることで、最適な運送委託先の選定を自動で行います。
それにより、「輸配送コストが高い」「繁忙期に配車ができない」などの課題解決を実現します。

二つ目は、受発注業務をデジタル化することです。
従来、受発注のやり取りは紙・電話・FAXが多いため、業務効率が低いと同時に協力運送会社間で情報が分断されているといった課題がありました。

例えば、昔は旅行をする際に予約サイトなどは存在せず、営業時間内にホテルに電話をして直接予約をしていました。
しかし、現在はいつでもどこでもインターネットを通じて、ホテルの空室状況を確認し、予約をすることができます。運送依頼も同じような世界を実現する、ということです。

「ハコベルコネクト」では、クラウドサービス上で受発注情報を一元管理し、荷主や協力運送会社が閲覧・更新できる環境を提供することで、業務効率化、受発注情報の見える化を実現します。

それにより、荷主は運送会社に応じて運送依頼をFAXや紙、電話と分ける必要がなくなります。
また、口頭のみのやり取りにならないように、発注が確認されたら自動で通知が来たり、「稼働◯時間前にも関わらず、書類が来ていない」という場合にアラートをかけたりすることも可能です。

アナログからデジタルへ移行する困難

ー 運送マッチングサービスを提供する際、届ける荷物によって必要なトラックも変わってくるという難しさがあると思います。そのあたりは、どのように解消されてきたのでしょうか。

おっしゃる通り難しいです。
2015年に運送マッチングサービスを始めた当初は、軽貨物のマッチングサービスを提供していました。そこから一般貨物である2トン、4トン、大型などの領域に踏み込んでいきました。

サイズ以外にも、横幅は標準、セミワイド、ワイドがあります。長さにはショートとロング、高さは高床、低床などの種類があります。
他にも、荷室が箱車かウィング車か……とかなりの種類がありますので、変数の多さには苦しみました。

軽貨物の運送はサイズがほとんど決まった世界でしたので、一般貨物に領域を広げていくフェーズはとても大変でしたね。

そこで我々がとったアプローチとしては、初めから完璧なサービスを目指すのではなく、まずは最低限の機能をそろえ、お客様に使っていただく。
その中で頂いたフィードバックをもとに、機能を整備・拡充していきました。


ー 現場の方たちが今までアナログで行ってきたことを、 システムに変えていく難しさもありますよね。

はい。物流はミスの許されない業務であるため、物流現場の方にとってシステムを導入した場合に、業務が問題なく行えるか不安があります。

「ハコベルコネクト」の強みは、サービスとしてゼロから作ったわけではなく、運送マッチングサービスを行っている中で自社のオペレーションで使ってきたシステムを提供している点です。
そのため、システム導入後のギャップが少なく、また「よくある質問」も基本は社内で解決してきた経験があるものです。

しかし、お客様の業務内容と自社の業務内容が異なる場合もあります。
その場合、エンジニアとカスタマーサクセス、営業がお客様の業務内容を徹底的に目で見て理解し、すり合わせを行うことで、システム導入後にスムーズに業務が行えるよう努めています。

ー なるほど…!ハコベルさんが提供するサービスは現場に寄り添って構築し、既に使われてきたものだからこそ、物流問題の解決を実現できるのですね。

<取材・編集:ロジ人編集部>


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