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その選択の背景に迫る!?

先日書かせて頂いた以下のnoteに、事前告知のように「無条件による判断は別のnoteでまとめます」と書かせて頂いた件、ようやく書き始めることができそうです。

前回のnoteでは、書籍「影響力の武器」の内容を元に、人が何かを判断するときには以下の6つの原則が働いている、という話を書かせて頂きました。

返報性・・・何かを受け取ったら、それにふさわしい何かをお返ししないといけないと思ってしまう原則
コミットメントと一貫性・・・自分が一度決めたことに対しては、それを貫き通さないといけないと思ってしまう原則
社会的証明・・・周りが正しいと思うことは自分も正しいと思ってしまう原則
好意・・・その好きなものは全てが良いと思ってしまう原則
権威・・・肩書きに対して、信用し、服従してしまう原則
希少性・・・少ない物事に、価値があると思ってしまう原則

今回のnoteでは、なぜそれらが働くのか、という点を「ファストアンドスロー(Fast & Slow)」という本を切り口に書かせて頂きたいと思います。
(この本、とても良い本なのですが、めちゃ長いし、例が多いので読むの大変です。。)

判断は頭の中で二人の異なる人間が行っている!?

このファストアンドスローの中で、主軸となっている大きな考え方が、「人の思考は二つのシステム”システム1”と”システム2”が働いている」という考え方。簡単に書くと、システム1がせっかちな、短絡的な思考で疲れ知らずな自意識過剰なのに対し、システム2は遅い、論理性を大切にする思考だけど疲れやすい思考、という違いがあります。まぁ、何でも信じて暴れ回る弟(システム1)と、それを管理する臆病者のお兄さん(システム2)、みたいなイメージでしょうか。
さらに、もう少しそれぞれの思考についての特徴を書いていくと

システム1・・・感情を動かす。因果関係で判断する。いつでも活動している。潜在意識の元で活動している。何でも信じやすい(特に見たこと、経験したことなど)。数字は平均で見る。

システム2・・・論理性で判断する。難しいと感じたときに活躍する。疲れやすい。いつでも機能しているわけではなく、「やるぞ」と意識をしないと普段は基本的に何もしない。数字は合計で見る。

つまり、常時バックグラウンドで活動しているのがシステム1で、必要時に活躍するのがシステム2です。そして、システム2はシステム1の監視役ということして、普段は目を光らせ、論理性におかしなところがないか、など判断しています。しかし、上述の通り、システム2は疲れやすいため、何か論理的に忙しい場合(例えば、暗算をしなければいけない場合など)や、システム1の主張があまりにも強いとき(感情で突き動かされている時)、判断できる情報が少ないときは、システム1の判断で動かされてしまいます。
今回は、あくまでも「影響力の武器」の6原則を切り口に説明をしていくので、この「ファストアンドスロー」の内容については最下部の要約で書かせて頂くだけとします。ただ、この本の中には、有名なハロー効果や単純接触効果、ヒューリスティック(錯覚・置き換え)、アンカリング効果なども、システム1の影響で引き起こされていること。その他、システム1があるが故に、人はわかったつもりになってしまい、統計が上手く扱えない(勝手に相関性があると判断してしまう)などの話も記載があるので、興味がある方は書籍自体を読んで頂けるとよいかもしれません。(むしろ、とてもためになります。)

影響力の武器のそれぞれの原則との関係性

そして、上述の記載でわかるように、影響力の原則は全てシステム1の作用によって行われています。それだけ人というのは、無意識化で様々なことを判断している、ということですね。もちろん、全てを論理的に判断するということはとても難しいし、現実的に脳が処理しきれないのですが、だからこそ、自分の判断が間違っていない、と根拠なく思うのは大きな落とし穴がある、ということにつながるわけです。

それでは、それぞれの原則に対して、システム1がどのように関わっているのか、細かく見ていきたいと思います。

<返報性>
返報性は相手から何かを受け取ると、お返しをしなければいけないという原則。これは、システム1の感情面の働きかけによるものだと考えることができます。相手から何かを受け取ったとき、人には無意識下で「貸しをつくっておきたくない」という思いが働きます。そして、この無意識下の気持ちが、反射的に何かお返しをしなければいけないという衝動に駆られる要因ということです。
なので、前回のnoteにも書きましたが、対処としてはお返しが妥当なのか、ということをシステム2を使って論理的に考える(打算的ですが、もらったものの価値は例えば時間にするとどの程度の価値で、だからどの程度の価値なら返す妥当性があるか、など)と、知らない間に返報性を相手に悪用されなくてすみます。

<コミットメントと一貫性>
コミットメントと一貫性は、自分が何か決めたことは、それを一貫しようとしてしまう原則。これが働くのは、システム1が因果関係を重視するため。そして、因果関係を重視した結果、Aという事象とBという事象に、勝手に自分の中で因果関係をつけ、正当化してしまうのです。例えば、自分がこの車がほしい、と思い、アンケートに名前を書いてしまう(コミットメント)と、その車の価値に対して盲目的になり、自分が車が必要な理由を勝手に列挙し、作り上げ、購入してしまう(一貫性)わけです。
この対処としては、本当にコミットした内容と最終的に判断した内容が客観的に正しいのか、自分にとって都合のよい情報しか集めていないのではないか、ということを疑うことで対処できる可能性があります。(とはいえ、多くはコミットメントをしたことすら気がつかない場合もあるので、冷静に振り返るタイミングすらもてない可能性もありますが。)

<社会的証明>
社会的証明は周りが正しいと思うことを自分も正しいと思ってしまう原則。これは、システム1が慣れ親しんだ物を受け入れやすいから。システム1は、そのものが正しいかどうかよりも、その物との接触を好意的に受け止め(単純接触効果)、そして採用しやすいのです。つまり、周りが正しいと思っていること、つまり社会的に多くの事象が溢れる内容については、単純接触効果の原理が働いて、無条件に選択してしまうのです。
これを避けるためには、物事を全体に対する対象事象の大きさに目を向けると良いかもしれません。例えばですが、ある流行のクレープ屋さんがあったとします。テレビでも取り上げられ、連日もうそれはすごい長蛇の列。そして人はその長蛇を見てさらにそこに群がるわけですね。しかし、よく考えてみてください。どれだけおいしいクレープでも、あなたが好きな物が例えばメロンパンであれば、行くべきなのはクレープ屋さんではなくパン屋さんなのです。つまり、周りがどうか、というよりも、もう少し俯瞰して、状況を整理する意識を持つことが大切ということです。

<好意>
好意は、一部が良ければ全部よいと思ってしまう原則。これもシステム1が因果関係を好み、そしてまずは信じるところからスタートしてしまうから。特に手元に情報が少ないときは、前述の通りシステム1は事前の印象を元に様々な事象に勝手に因果関係をつけていくため、それによって、事前の印象がよければ、その対象のことを知らないほど、都合の良いように勝手に良いイメージが次々と膨れ上がっていく。まさによく言われるハロー効果とはこのこと。
この現象を避けるには、起きた事象を個々に理解し、各々に対して評価をすることが大切。一度良いことを言ったから、あるいはSNSではフォロワーさんが多いからと言って、盲目的にその人のことを全て信じるのはよくない。本当によくないです。Twitterに関して、ちょっと具体的な話をします。一度好意の原則が働き始め、相手をフォローする、と言うコミットメントをすることで、そのフォローしたと言う行動に対して一貫性を保とうとするのです。これが全て論理性を無視した、感情的なシステム1で無意識で行われている。そう考えると、恐ろしくないですか?しかも、本人たちはあくまでも論理的に考えていると思っているから、少し外部から異なる意見を言うと猛反発するという。

<権威>
権威は、権力者や有識者と呼ばれる人の話を無条件に信じて、そして服従してしまう原則。これは、システム1がまず人を信じ、そして自分のみた情報(例えば、着ている服や乗っている車、宝飾品など)から勝手に相手のもっともらしさを因果関係で結びつけ、その権威者のことを正しいと思ってしまうため。さらに、人は何か難しい質問を問われると、自分が答えることができる簡単な質問に置き換えて、その答えを導き出してしまう(ヒューリスティック)。だから、自分が何かを判断できない時は、その問題を置き換え、自分の意見より専門家の意見がよっぽど正しいと思い込んでしまい、疑いにくくなるのです。
それを解決するには、相手がどんな権威であったとしても、相手の言っていることに対し、因果関係ではなく、全体から見た判断として間違っていないか疑うことが大切です。これまで何度も出てきているように、因果関係というのは非常に都合がよく、ある一部の事実だけを切り出して、どうとでも結びつけることができるのです。その点を踏まえて、もう一度その権威者の話を冷静に聞いてみると良いかもしれません。

<希少性>
希少性は、少ない物事に価値があると思ってしまう原則。システム1は特徴を捉えることはうまくできますが、規模を捉えることが苦手なため、「数が少ないということは、それだけ大勢の人が欲する、価値のあるものなのだろう」と勝手に因果関係をつけて、価値を高めてしまうのです。実は簡単・大量に生産できるのに、生産数量を絞ることによって希少性をあげることは、製造業者であればさほど難しいことではありません。しかし、全体像を捉えられないシステム1は、目の前の物の少なさや、人が次々に手にとっていくのを見ていると、本来の生産可能数量や、物の価値は見失って、感情に刈りたれられ、気がついたらレジに商品を持って進んでしまうのです。
この希少性の罠に嵌らないようにするには、仮にその物がいつでも手に入る状態であったときに同じような欲望を抱くのか、という点で考えることが解決の糸口になるかもしれません。そうすることで、本当に自分が欲しているのは本当に必要(あるいは感情的にも欲しい物)だからなのか、それともたまたま希少性に動かされているかが判断できるかもしれません。

ファストアンドスローのポイント箇条書き

ここまでつらつらと、ファストアンドスローと、影響力の武器に書かれた6原則を関係させて書いてきましたが、実はこの中であまりにも書ききれなかった部分があるので、ファストアンドスローの各章のタイトルと、その中で重要だと思ったポイントを書き出しています。僕自身があとで振り返るために書いているため、正直これを読んだだけでは中身の理解はできないと思いますが、なんとなく「こんなこと書いてあるんだなー」と概要を理解いただき、本を読むかどうかの判断に役立てていただければ良いかなと思います。

冒頭
・統計を学んだ人ですら、主観的なバイアスがかかってしまう
・専門知識を持っていて、状況を理解した上で決定する判断は正しいことが多い。ただし、複雑な問題になると知らない間に簡単な質問に置き換えてしまい、そしておきかえたことにすら気がついていない。
・人は自己理解を過大評価し、偶然を過小評価する。

第一章:システム1(速い思考)とシステム2(遅い思考)
・ゴリラの見落とし。明らかに異質なものでも注意しなければ見落とす。そして、見落としたこと自体に大体は気がついていない。
・システム2はシステム1で対応できないときに、システム1からの要望で活躍し最終決定する。
・システム2の大切な役割はシステム1を監視すること。

第二章:注意と努力 衝動的で直感的なシステム1
・システム2に備わっている能力はタスク設定ができること。それによって、知らないことを達成できる。

第三章:怠け者のコントローラー
・論理思考能力を備えたシステム2・認知的に忙しい状態(システム2が活用されている状態)では利己的な判断をしやすく、挑発的になり、社会的な状況について表面的な判断をしやすくなる。
・強い意志やセルフコントロールをし続ける(システム2を使い続ける)のは疲れる。長く使うとコントロールしたくなくなるか、うまくいかなくなる。
・考えたくないのに無理に考える、感情的な映画をみて反応を抑える、相反する一連の選択を行う、他人に強い印象を与えようとする、身近な人の失礼な振る舞いに寛容に応じる、などの場合、システム2をフル活用するため、システム2が疲弊する。
・システム2を必要とするコンピューターゲームをすることで実行制御能力が高まるだけではなく、非言語知能テストの成績も向上した。
・システム1は衝動的で直感的、システム2は論理思考能力を備えていて注意深い。

第四章:連想マシン 私たちを誘導するプライム(先行刺激)
・先行刺激によって、観念が埋め込まれ、その印象が後の行動にまで影響を及ぼす。(イデオモーター効果)
・イデオモーター効果のような連想ネットワークは双方向に関係することが多い。楽しいと笑顔になるが、それと同様に笑顔になると楽しくなる。
・ある実験では、お金という観念が個人主義のプライム(つまり、人と関わりを持ちたくないという先行刺激)になる。他人と関わったり、依存したり、要求を受け入れることを拒む。
・自覚的な経験はシステム2で形成されているが、プライミング現象がおきるのはシステム1の中であり、その現象を意識することが難しい。

第五章:認知容易性 慣れ親しんだものが好き
・記憶も錯覚を起こす。ただ見ただけ、聞いただけの内容であっても、見覚え、聞き覚えといった感覚には、強力な「過去性」があり、以前から実際に知っているように鮮明に映し出すように感じさせる。
・この錯覚は、大部分があっていれば、詳細が異なっていても正しいと思い込んでしまう要因となる。ある文章の情報源を思い出せず、手持ちの情報とも関連付けられないとき、認知しやすさ(過去にどれだけ知っているか)を手がかりにする。
・このように、人はだれもがシステム1の影響を大きく受けているが、その影響がどこからきているか理解している人が少ない。
・認知が容易だとか負担だといった感覚には様々な原因があるが、識別するのは難しい。認知の錯覚を理解したい、と強い意思があるときに、ようやく一部の識別が可能となる。
・無作為の刺激の反復に対して人々が好意を抱く効果に「単純接触効果」と呼ぶ。言いやすい名前が好まれるのもこれに近い。この効果は意味が理解できなくてもよい。
・気分は人の直感性に大きく影響を与え、楽しい気分は直感を冴え渡らせ、悲しい気分は直感性の信頼を著しく落とす。この現象は生物学的な感知能力とつながっていて、機嫌が良いときは物事がうまくいっていて、警戒心をといてもよいからシステム2の管理が緩み、システム1がメインで動くことができる。認知容易性は幸せな気分の原因でもあれば結果でもある。

第六章:基準、驚き、因果関係 システム1の素晴らしさと限界
・後から何かが起きたとしても、そのときに前の事象を思い出して、勝手に関連付けてしまう。
・人間は生まれたときから因果関係の印象を受けやすくできていて、論理に裏付けられているわけではなく、システム1が勝手に印象づけている。

第七章:結論に飛びつくマシン 自分が見たものがすべて
・たとえ無意味に見える言明であっても、システム1の影響で最初は信じようとする。その後、信じられるかどうか、必要であればシステム2が判断する。つまり、システム2が使い切られ、疲れているときはなんでも信じてしまいやすい、ということ。
・前述の連想記憶は、こういったシステム1の信じやすさを助長する。自分の信念を肯定する内容を意図的に探すことを確証方略とよび、この考えは「仮説は反証により検証せよ」という科学哲学者の考えとは反する。この考えは一部を知っただけで全てを好意的(あるいは悪意的)に受け止めるハロー効果に通じる。この効果もシステム1の影響。
・人物描写をするときも、ハロー効果の影響は大きい。文の最初に書いた内容が、大きな印象を与える。
・これらのハロー効果を抑えるには、一つ一つの情報源を常に相互に独立した状態(お互いにバイアスがかからないようにした状態)で判断することが大切。
・限られた手元の情報に基づいて、結論に飛びつく傾向は自分の見た物がすべてだと決めてかかり、みえないものは存在しないとして探そうともしなくなる。だから、ストーリーのできで大切なのは情報の完全性ではなく整合性。手元に情報が少ないときの方が筋書き通りに「勝手に」思い込めてしまう。

第八章:判断はこう下される サムの頭のよさを身長に換算したら?
・システム1は典型的、あるいは平均的なことをセットでもっていて、あるカテゴリーを代表させる。だから、平均は上手く考えられるが、カテゴリーの規模や合計は無視しがち。(だから比較するときは平均だけで考え、規模を考慮しにくい。)
第九章:より簡単な質問に答える ターゲット質問とヒューリスティック質問
・バイアスは近くシステムに深く根付いているため、自分にはどうすることもできない。何かを推測し、置き換えることで判断する場合は、推測によるバイアスが必ずかかってしまう。
・人は直接的な関係がない内容であっても、問われた内容が時間的に近ければ、その回答の内容を勝手に加味して答えに影響を受けてしまう。回答者の感情に訴えかけて気分を変える効果の問いは、同じようにその後の問いに影響を与える。(例えば、デートの回数と幸せかどうか、の問い。)これは、感情的な要素が絡んでくると、システム2はシステム1の感情を否定するより、擁護に回り、システム1がもっともらしいことを探しにいく保証人になってしまう。つまり、積極的なつじつま合わせ屋のシステム1が、無抵抗のシステム2に結論を押しつけている、という形になる。
ヒューリスティック:錯覚・置き換え

第十章:少数の法則
・統計に関する直感を疑え標本サイズが大きい方が正しいことは理解している。でも、標本サイズが大きいほど、異常値が増える可能性を認知している人は少ない。(というか、言われなければ意識しない。)
・人は小さい標本から得られたデータに対して過度に信頼しがち。標本サイズの確からしさを確認した上で、得られた結論が正しいか判断しなければ、データに基づく判断も一般的な錯覚と何も変わらない。錯覚の結果、自分の取り巻く世界を単純で、一貫性のあるものとして捉えてしまうリスクがある。得られた結果が、偶然の影響を受けている可能性を考慮したほうがよい。

第十一章:アンカー 数字による暗示
・システム1の影響を受け、人は事前に見た数字を、それがどれだけ外れているか、当てのない数字かわかっていても、その数字に影響を受け、数字を決定してしまう。この効果をアンカリング効果(保留効果)と言う。一方、このアンカリング効果の影響を抑える方法としては、相手が受け入れそうな最低値はいくらくらい考えるとか、交渉決裂となった場合に相手がかぶる損失を計算することで効果を抑えることができる。

第十二章:利用可能性ヒューリスティック 手近な例には要注意
・利用可能ヒューリスティックにおいては、他の判断ヒューリスティックと同様に訪ねられた質問を別の答えやすい質問に置き換える。記憶に近い内容のカテゴリーはその要素として利用されやすい。これを利用可能性ヒューリスティックと呼ぶ。例えば、チームで仕事をする場合、自分の方が他のメンバーよりがんばっており、他のメンバーの貢献度は自分より小さいと考えがちになる。それは、チームの誰もがそう感じている。
・例えば、利用可能性ヒューリスティックが働く例として、「自己主張の思い出しやすさ」があげられる。多くの数を思い出そうとすると、必然的に思い出しにくくなるが、その印象が自分は自己主張が弱いという思い込みを生み出す。自己評価は具体的に思い出す簡単さに左右され、感情面では思い出せる数よりも因子として大きく評価される。

第十三章:利用可能性、感情、リスク 専門家と一般市民の意見が対立したとき
・人は報道される内容によって大きく判断を歪める。そもそも、報道されているニュースには珍しさや、感情に訴えやすい(視聴率をとりやすい)というバイアスがかかっている。
・メリットを強調する説明を受けると、リスク評価を低く見積もる。このことが示しているのは、感情ヒューリスティックは白黒はっきりと色をつけ、好きなものはよいものだと単純かしてしまう。
・本来は不要なほどバイアスがかかった状態によって政策に影響を与える現象を「利用可能性カスケード」と呼ぶ。些細な出来事をメディアが報道し、大規模な政府介入に発展する。

第十四章:トムWの専攻 「代表性」と「基準率」
・人は多くの情報を与えられると、その情報をシステム1が働き、連想マシンによって偶像化・抽象化し、類似性を見いだして答えを探し出す。本来であれば、問題の全体像から、各選択肢の基準率を加味するべきであるが、それを無視する。確率(可能性)を見積もるのは難しいが、類似性を判断するのはたやすいため、類似性を元に判断してしまう。このことを代表性ヒューリスティックと呼ぶ。そして、このときシステム1が設けた固有情報の信頼性を落とすことも大きな問題。これらの、情報の信頼性に疑わしさを感じたときにすべきことは、自己監視と自己制御に大きな努力を払った上で確率の見積もりを基準率に近づけていくことである。この具体的な方法としてベイズ推定を常に行う癖をつけると良い。その際は基準率をアンカーにする。そして、証拠の診断結果をつねに疑うことが大切。

第十五章:リンダ 「もっともらしさ」による錯誤
・具体的に何かを考えるほど、もっともらしさが増え、その結果確率を紛らわす。人は何か連想させた上で回答を選択させると、確率を無視して連想した内容に一致性のある内容を選ぶ。二つの事象が重なって起きることと単一の事象を直接比較した上で、重なって起きることが多いと思ってしまう。このことを連合錯誤という。錯誤とは、明らかに妥当とわかっている論理ルールの適用を怠ったときに使用する言葉。
・この現象はシステム1が主導している。最も代表的に見える結果と、人物描写が結びつくと、文句なしにつじつまのあったストーリーをシステム1は勝手に作り上げてしまう。そしてその結果、注意を払っていないと一貫性、最もらしさ、起こりやすさが混同され、一貫性やもっともらしさが優先的に判断される。もちろん、システム2が総動員され考えれば当然わかることであるが、そうでない限りシステム2は怠けている。つまり、直感は論理を打ち負かす。

第十六章:原因と統計 驚くべき事実と驚くべき事例
・基準率には2種類があって、一つは統計的基準率、もう一つは因果的基準率。統計的基準率は比較的無視されやすく、因果的基準率はそのケース特有の情報として扱われ、他の固有情報と簡単に結びつき「もっともらしさ」を付与する。人の脳は簡単に理解しやすい因果関係の要素を重要視し、統計的確率論を軽視しやすい。
・被験者は全体から個を推定することは不得意だが、個から全体を推定することは得意。これは、全体から個を推定するにはシステム1の因果関係で議論ができないから。一方、個から全体は因果関係で理由がつきやすいため、想像しやすい。

第十七章:平均への回帰 褒めても叱っても結果は同じ
・叱れば成績が向上し、褒めれば成績が落ちる、という現象は、「平均への回帰」がそう促しているだけ。たまたま成績が悪かったときは平均への回帰で何もしなくても良くなるし、たまたま成績がよかったときは、何もしなくても悪くなる。でも、人はそこに勝手に因果関係を見つけたつもりになり、結論づける。
・「非常に頭の良い女性は自分より頭の悪い男性と結婚する」という内容と「夫と妻の知能指数の間には完全な相関関係は見られない」ということは同じ事を意味している。しかし、前者には因果関係を持ちだし理由を説明しようとする。このように、意識していないとシステム1が強く稼働し、人は統計よりも因果関係を見つけたがるバイアスが常に強くかかっている。回帰は研究を邪魔する厄介者であり、システム1によって根拠のない因果関係を見つけ出させる。(単なる相関関係を因果関係と思い込ませてしまう。)

第十八章:直感的予測の修正
・バイアスを取り除くにはシステム1は常々強気な予測を正しいと判断しがちであることを認識する必要がある。ストーリーの筋が通るほど、あっていると勝手に思い込む。

第十九章:わかったつもり 後知恵とハロー効果
・世界は必ず筋道が通っているという信念は自分の無知を棚に上げ、素晴らしい能力を持っているという誤解から成り立っている。
・直感や予感も、正しかったとわかってから思い起こされる。実際のことが起きてから、あたかもそれを先に考えていたかのごとく、後知恵をいれ、認知的な錯覚を生む。つまり、プロセスに対する判断にたいし、結果が影響を与えてしまう。この結果、標準的な業務手続きに従っていればよい、という容易な判断をしがちになる。逆に、一握りの成功者は大胆な行動と、成功したというハロー効果で「勇気あるリーダー」ともてはやされる。この例からわかるように、リーダーの個性や経営手法が業績に及ぼす影響は常に誇張されている。

第二十章:妥当性の錯覚 自信は当てにならない
・何らかの判断に対して主観的な自信を抱いているだけでは、その判断が正しい可能性を論理的に示したとは言えない。自信は感覚であり、自信があるのは情報に整合性があって情報処理が認知的に容易であるからに過ぎない。必要なのは不確実性を認め、重大に受け止めること。自信を表明するのは、頭の中でつじつまがあうストーリーができた、というだけで、そのストーリーが正しいかはわからない。
・世界は予測不能なのだから、予測エラーはさけられない。そして、主観的な自信はいくらあっても予測精度を保証するものではないし、自信がない方がまだ当てになる。

第二十一章
・人は大いにして主観で判断してしまう。この現象に対してその人の判断を数式で代用できる場合は、一度数式に置き換えてみることを検討してみるとよい。(重回帰分析の考え方。)

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