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GIGSの表紙が声優さんだったので、ドルヲタがバンドリを履修してみた話


実はあまりアニメを見ない。エヴァ放送時に14歳だったし、子供の頃はガンダムが好きだったけど、今までにちゃんと見たのってカウボーイ・ビバップとバトルアスリーテス大運動会とマクロスシリーズぐらい。あと、TwitterのTLで話題になってて少女歌劇レヴュースタァライトは珍しく全部見たし、あいにゃが出てるので邪神ちゃんドロップキックを見たら、元HKTのまりりもいた。出てることをすっかり忘れてた、ごめん。

アニメ本編は見ないけど、Youtubeで流れてくる声優さんのライブやMVとかラジオまとめとかは月1程度ではチェックしてる。あと、かやのみ見てる。日本の音楽事情を紐解く時にアニメ、声優界隈の状況を把握していないと、正しく認識が出来ない。ヲタクはお金を持っている、というだけではなくて、トレンドの音楽性を含めて。

基本的にアイドルとプロレスが好きだから、アイドル×ライブという意味で、ラブライブやアイマスのライブは一通りチェックしてる。マクロスはなんだかんだ見てる(48のヲタかつ仲谷明香ヲタなので、0048はマスト)ので、Δ声優が大挙してるデレマスは入りやすかった。あみなちやんもいるし。

ラブライブのスクールアイドルという設定は、アイドルという文脈から見ても面白くて、軽音部みたいにアイドル部があってもいいよねと思うし、現実にアイドルダンス部みたいなのは既にある。

楽曲から見ても、ああいう幅のある曲が揃っていて、ファンはアニメのキャラと声優さんのキャラの両方を好きになっていって、本編のストーリーに対する思い入れもあって、アイドルよりも強固だなと思っていた。

 

【何故バンドリだったのか】

多分に漏れず、バンドリもTLにファンが多いことは知っていた。愛美が主人公なのも、へごちんがドラム叩いてるのも、あやさがキーボードに埋まってるのも知っているし、元スパガのあみたがユニットのボーカルやってるのとか、限界百合声優あやねるがキャラがそのまま出てきたみたいなパフォーマンスするのも聞き及んでいた。

そして実は、ここ一週間くらい予兆があった。それはYoutubeを見てた時にD4DJのユニット映像が流れてきて、何気なく再生したら、元AKBの平島なっちゃんがいたのに驚いたり、スタァライトに出てたはるちゃんとひーちゃん(元さくら学院)があみたと同じユニットだったからだ。

さて、ここまでで察しのいい人は気付いているはずだが、ここまでに話したコンテンツには共通点がある。そう、ブシロードである。

プロレスファンなので新日本プロレスを通してブシロード木谷社長の経営戦略はしこたま見てきた。その前後のラブライブやスタァライト、D4DJという声優×ライブというエンターテイメント事業のビジネスの作り方、顧客創出の思考というのも見てきた。そこで気付いた、バンドリ知らないな、自分。

そんなことを思っていた時に、本屋でバンド関連の雑誌の表紙を何気なく見たら、GIGSの表紙にバンドリ声優が並んでた。椎名へきるが音楽雑誌の表紙やって叩かれてた時代とは変わったな。Youtubeでライブ映像は見てたので、ヘッドレスのストランドバーグ弾きながらツーステかましてる変態いたなとは思っていたが、まさかESP出身のプロ上がりとは思ってもいなかった。

慌てて帰ってきて、まずは音源とライブだ!と周りに声をかけたのである。

 

【日本の音楽市場におけるロックとアニメ】

日本は世界的に見ても、ロックが未だに元気な国と言われている。欧米ではチャートを見ると半分がヒップホップだし、バンドといってもダンスロックがブームだ。ようやく日本にもその流れがやってきてるけど、まだまだ若手のミクスチャースタイルは元気だし、ピコリーモは日本的だ。

若手のそういうスタイルが元気な理由の1/3はアニメとの地続きはあると思う。既存のロックファン+アニメファンを取り込むことで顧客の幅が広がる。音楽自体を聴かない若者が増える中で、客層が多様なのは強みになる。

あと、日本におけるロックというもの自体、アニメ音楽の商業性やスタジオワークに強く持ち込まれ、取り込まれているというのも事実だ。この国でテクニカルなギターサウンドをちゃんと聴くなら、つぶさにアニメ作品を追う方が手っ取り早い。なので、海外の感度高いロックファンは意外とアニメや特撮のOP、EDを見てる。

ロック自体をアニメの主軸にした作品も少なくない中で、声優がバンドもやるというのはけいおん!や天使の3P!を経て少しずつ増えてきたという印象がある。ラップをやったり、アイドルやったり声優も大変な仕事である。

一方で、様々な局面で、女性だから、アニメだからという理由で下に見られるのを見る。このご時世に幕張メッセを埋めるバンドはそんなに多くはない、と実際にライブ映像を見て思ったのだ。

 

【バンドリとは一体なにか】

基本的な構造としては、女子高生バンドものであり、主な6バンドの中に声優さんがバンドもやる「Poppin'Party」と「Roselia」、後に作品に出演することとなる「RAISE A SUILEN」、声優さんが歌唱だけする「Afterglow」、「Pastel*Palettes」、「ハロー、ハッピーワールド!」に分かれる。

全てのバンドでサウンドのテイストが違い、およそ4年半のプロジェクトで既にCDが60枚近く出ている。当然、それだけのオリジナル曲が用意されているというわけだ。

先述したように、日本のロックはアニメに持ち込まれて長く、商業音楽としてプロが仕上げた非常に良い音が多い。バンドリの多作さ、各バンドの音楽性の違いというのもとにかく品質が良い。音源も安定していて非常に聴きやすい。

加えて、ライブを見てみると、バンドの楽器が初めてという子も重ねる毎に上手くなっているのは当然なのだが、そもそもエンターテイメントとして成立しないようなレベルではない。さらにパフォーマンスも大箱だろうときちっとお客さんに届けている。

これをバンドなのに自分達で曲書いてないとか、結局他で稼いだ金でプロモーションをしているに過ぎないとかいうのは、あまりにも浅はかだし、まずTOKIOに失礼ではないか。

そもそも日本の音楽というのを考えた時に、後のシンガーソングライターというのは半々程度の割合で、作曲家として知られる平尾昌晃を始め、60年代に入ると自作曲でのヒットというのがどんどんと増えてくる。そんな時代でも、作家の書いた曲を歌い手が歌うというのは歌謡曲の形だった。

フォークブーム、バンドブームなどを経て、職業作家の作る音楽というのは途絶えたかのように見えたが、TKブームによりプロデューサー主体の音楽制作環境というのが一般化していく。同時に職業作家の仕事は、アイドル、アニメなどを主軸に生き長らえることとなる。自分で書かない曲に音楽性がないという発言は、日本の音楽史を受け止めていない証拠である。

アニメ本編の作品を通して、キャラクターへの理解が声優さんのパフォーマンスにも影響しているし、なにより声優さんというのは表現することのプロで、求められる水準だとかどうすべきかということをよく考えているなと思うのだ。

 

【ドルヲタとアニヲタの食い合わせの悪さ】

市場規模といい、ヲタク産業的にまとめられることが多いものの、ドルヲタとアニヲタは交わらないことも多い。ただそれも少し分かる。

こうやって見ると、アニメや声優というのは新人でも少なからず勉強をして入ってきている人間である。その新人ですら下手だ棒だと言われる世界で、何を学んできたか分からないアイドルが声優になりたいですというのは、なかなか受け入れがたいだろう。

それでも少しずつ増えてきたのは、本人達の努力であったり、大手事務所の子はそもそもお芝居のレッスンを受けていたり、大箱でのパフォーマンスへの度胸だったり、武器を持っている子はちゃんと受け入れてもらえている気がする。だが、これを裏返すと、アイドル業界は何を武器に戦っているのだろう。

必ずしも、業界としてアニメの方が上位であるとは言わないが、制作された音源、ライブパフォーマンス、資本の動き、全ての品質がアイドル業界に比べると良く出来ている。

いや、アニメーターにお金が回っていない問題というのがあるから、地下アイドルの搾取問題と構造上の問題点が存在するのは事実ではあるのだけど、あれはまたアニメ作品作る数多過ぎ問題というのもあるので置いておく。

衣装を着せたらアイドルとか曲があればアイドルではなくて、プロのアイドルという概念が出てこないと産業構造が歪んだままで、楽曲やパフォーマンスを文化と呼ぶには至らないのではないかと思ったのだ。

結局、今のアイドルの収益モデルは音楽が売れることで拡大するものではない。販促ツールのようなものだ。これではバニラバーニラ高収入と回るトラックと大差はない。ちゃんとトレーニングをして、パフォーマンスとグッズにお金を払ってもらって収益が上がるところまでいくべきではないか。

 

延々と見てて、RASのヤバいやつことつむつむがD4DJの推しユニットにもいることに気付いた。これが沼か。


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