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4歳からダンスしている世代がアイドルになるのに、ヲタが追いついてない件

切実な問題である。かつて女の子の習い事といえば、ピアノかバレエ、あとはアクティブな子なら運動教室やスポーツといったところだった。それが90年代に差し掛かり音楽業界的にはTKブームが来て、沖縄アクターズスクールという洗礼が待ち構えていた………というのが、一般的な日本国内のダンスにおける文脈であるかと思う。

さらに言えば、世界的に見て近代的なダンスジャンルというのは、ポップスとの接続は大きく影響している。直近で言えば、この曲はいい例だろう。

Josh&Bamuiの2週間で10キロ痩せるダンスシリーズで採用されたBillie EilishのBAD GUYだ。

元曲も既にYoutubeの再生が4.7億回、全米シングルチャート7位、全英2位、オーストラリアなどでは1位を獲得するなどチャートバスターとなっているが、日本のマスに影響は与えない。

日本という国がアイドルという捻れを生んだ結果だと思っている。

 

【アイドルという概念】

その国にはその国の文化がある、アイドルもまたその1つだ。歌謡曲という文化があって、70年代を皮切りに若い女の子が歌う=アイドル歌謡と呼ばれる潮流が生まれることとなる。

ダンスという面で言えば、スクールメイツの存在がある。アイドル歌謡が生まれるのと時を重ねるようにして広まったのだが、彼女達は渡辺プロダクションが設立した東京音楽学院の選抜メンバーなのだ。テニスルックにボンボンを持ってはじけるように踊る姿が印象的だが、ここからキャンディーズなど多くのタレントを生んできた。

ソロアイドルがメインだった時代に、スクールメイツは少しだけ親近感があって、隣の学区で話題になるような身近さも1つの魅力だったわけだが、それは現在のグループアイドルの源流とも言えるかもしれない。

同時に、アイドルの処女性、稚拙さみたいなものが固定されていく現象も発生する。日本ではおニャン子、モーニング娘。、AKB48を経て、他のダンスジャンルとは全く異なった価値を持ったアイドルという存在を作り上げてしまったのである。

 

【地続きにならない理由】

昨今、多くのアイドルの中で幼少期、特に4歳ぐらいからダンスを習ってて、キャリア10年越えてますというような子も少なくない。アクターズスクール広島はいい例だが、スクール出身者が後に世界レベルで活躍するケースも出てきている。そういう実力のある子達の凄さを賞賛しているが、果たしてヲタクは本当にダンスを理解出来ているのだろうか。

アイドルとダンス文化の隔たり、地続きにならない理由として、"女性観"や"セックス観"の違い、というのは大きいのではないかと思う。

ヒップホップやジャズ、バレエ、サルサなどもそうだが、海外が発祥となっているダンスの女性的な動き、魅力というものはセクシャルさ、女性らしさ、求愛などを表現したものといえる。本来、それは本質であり、人間の持つ本能なのだが、日本で女性に求められる価値観とはかけ離れてるように思うのである。

未だ男尊女卑が根強い国であり、"強い女性"、"かしこい女性"、"成熟した女性"という存在を受け入れられない未成熟な社会である。(その割には、Pornhubの検索結果に熟女が並ぶのだけども)これを言い換えて、日本には”つたないものを愛でる文化”があると口にするのは、肯定が過ぎる。

また、セックスに対しても、女性がそういう話題に対してアピールをしたり、自分を見せるということに対しての拒否感であったり、歪んだ肯定が蔓延している状態にある。男女の関係性が非常に不平等なのだ。

だから、従順で、清らかで、処女性の高いアイドルを先に摂取してしまうと、ダンス文化に対しての抵抗感へと繋がっているように感じるのである。

 

【アイドルダンスのプロという存在】

個人的に、アイドルダンスというものはK-POPも含めて、この東アジアにおいてダンスの1つのジャンルとして確立されつつあると思っている。

というのも、実際問題、他のジャンルのダンスが踊れるかといってアイドルダンスがこなせるかというとそうではないからだ。かといって、笑ってれば全部許されるかというとそうでもない。表現としての愛らしさ、少女性というのを求められる、ここが難しい。

さらに、もう1つ難解な点が、ダンスのジャンルというのは、大まかにBGMにする音楽のジャンルも決まっている。リズムパターンだったり、全体の構成という枠組みが存在する。しかし、アイドルというジャンルで考えた時に、その幅の広さが余りにも途方も無いのも事実だ。

例えば、一般的なダンスジャンルの場合、ステップであったり、腕の動きというジャンルを規定する基礎のようなものが10個程度存在することで、このダンスは○○だよねと分類される。アイドルダンスはここがまだ明確化されていないように感じるのだ。

実際、アイドルダンスを教えますというダンススクールは全国各地に出てきている。アイドルからK-POPまでと書いているのだが、こういうところで教えている人達はどういう基準で教えているのだろうか。

だから、アイドルダンスのプロのプレイヤー、というのをまだ見た事が無い。よく言われるダンスが上手い子、は他のダンスを経験していて曲の中でそれをアダプトしているのであって、アイドルダンスというジャンルが上手い子では本来ない。

また、これは他のダンスのプロもそうだが、才能の差は如何ともしがたい。顔がかわいいとか体が華奢というレベルではなく、その人の魅力、惹き付けるもの、タレント性というレベルで才能の差は出る。その事実は理解しておかなければいけないのではないだろうか。

 

【いつだっておじさんは10代女子の感覚についていけない】

"ガールクラッシュ"という言葉を知っているだろうか。韓国から発生した言葉で、同性が憧れるような魅力的な女性を指す。強さやかっこよさを武器にした女性というのが、今、10代女子には流行っている。

分かりやすいところで、BLACKPINKは正しくガールクラッシュのシンボルなのだが、これを見て、日本人の男性の多くは(うん、分からん)となるだろう。

よく思い出してほしいのだが、いつの時代もおじさんは10代女子の感覚は分からないのだ。ギャルもそうだし、流行のスイーツだってそう。なんでそれが流行っているのか分からないが、流行ってるからみんな乗っかって、馬鹿みたいに消費してるんだろうと思っている。

ただガールクラッシュに関しては、少し話が違う。女性の中の女性観というのがこれによって大きく変化する可能性があるのだ。日本の男尊女卑は時として女性が感じるべき違和感すらも麻痺させてきた。しかし、今の10代、特に女性はこれまでの性差を踏み越えようというのが見える。

加えて、ダンスの必修化もあり、小さい頃からダンス文化に慣れさせようとする流れはこの数年で一気に加速している。どんどん基礎的な技術を持ち合わせた、女性観の異なる女の子達が現れる事となる。

 

【真っ赤なリップで騒ぐのはみっともない】

これを期に、是非、ダンスの知識をアップデートしてほしい。ちゃんと技術が理解出来てれば、よりその子の表現力や目指しているものを評価することも出来る。その子の良いなと思うものを肯定出来るようになるはずだ。

その上で、少しだけ自分の中の女性観を振り返ってみてほしい。確かにアイドルというのは可愛い。アイドルにしかない魅力というのもある。しかし、ダンスを通して、自分の中の女性観もアップデート出来ると、その複雑さを知る事となる。アイドルというのは、凄く難しいものなのだ。

ついでだが、実は現代的なダンスのジャンルでは、多くの日本人が世界レベルの大会に参加し、チャンピオンになったり、アーティストとコラボしているということが知られていない。興味を持ってもらえると、非常に嬉しいのである。

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