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一人でも多くの命を救う救命救急医療DX、空飛ぶクルマ実用化を目指す宮崎県延岡市の想い(地域DX推進ミートアップ #09 レポート)

こんにちは。オープンコラボレーションハブ「LODGE」の中川です。LODGEが注力中である各自治体のDXを支援する取り組み、「自治体DX」をテーマに、皆さまに共有できるコンテンツ作りや発信をしています。私は主に「地域DX推進ミートアップ」シリーズを企画・運営(オンラインイベント司会)しています。

本シリーズ9回目となる今回は、宮崎県延岡市さんとのご縁から企画させていただきました。宮崎県延岡市の読谷山市長より「『空飛ぶクルマ』で市民の命を救う延岡市のプロジェクト」について、慶應大学 SDM研究所顧問 中野先生から「空飛ぶクルマの医療への活用、延岡市での実装に向けて」を詳しくお話いただきました。

本イベントレポートのポイント

1. 宮崎県延岡市が導入スタートした救命救急医療DX、4つのシステムとは?

2.
片道15分以内の搬送で救える命がある! 「救急空白地」にフライトドクターの存在、実証実験環境が揃っている延岡市

※ 本イベントレポートは抜粋版です。本編はぜひアーカイブ動画をご覧ください!

動画アーカイブはこちら!

宮崎県延岡市が導入スタートした救命救急医療DX、4つのシステムとは?

宮崎県延岡市 市長:読谷山 洋司 さんから、延岡市の救命救急医療現場における課題と、その課題の解決に向けた取り組みについてお話しいただきました。人口構成や産業構造が「日本の縮図」ともいわれている延岡市では、新技術やアカデミックな分野での実証事業の場としても魅力ある都市です。また、デジタル田園都市交付金事業も活発に行っており、今回の救命救急医療のシステム構築もその案件の1つです。

救命救急医療現場に空飛ぶクルマを活用する前に、延岡市では今年3月に以下の4つのシステムをリリースしました。

・個人の健康・診断データを入力し管理するアプリ
・救急搬送時のトリアージ(治療優先順位)を最適化するシステム
・救急搬送時の医療情報を病院と共有するシステム
・救急搬送の最適な運行管理を行うシステム

延岡市 デジタル田園都市国家構想推進交付金(デジタル実装タイプTYPE2)交付対象事業の実施に係る意見募集の結果について:https://www.city.nobeoka.miyazaki.jp/uploaded/life/19175_46710_misc.pdf

「救急搬送の最適な運行管理を行うシステム」は救命救急の1分1秒をあらそう現場において搬送時間の短縮などを図るため、救急モビリティ(救急車・ドクターカー、ドクターヘリ)の選定・運行管理・搬送経路の設定を支援するシステムです。これらを総合して延岡市では「”救急” as a Service:QaaS」と呼んでいます。宮崎大学や慶應義塾大学SDM研究所などと連携し、また、宮崎大学医学部付属病院、宮崎県立延岡病院、延岡市医師会などの協力を得ながら、1年間でシステム構築まで行いました。今後は「空飛ぶクルマ」の商用運行が始まる2025年以降、出来るだけ早い段階で延岡市で活用できるよう事業を推進していくとのことです。

15分以内の治療開始を目標とするドクターヘリ運用の範囲外(空白地帯)にある延岡市の救命救急医療体制のDX化は急務
デジタル田園都市国家構想交付金によって2022年度中に構築したQaaSシステム

「デジタル化で地理的格差を解消し、一人でも多くの命を救いたい」その思いが詰まったQaaSシステム。視聴者からも「読谷山市長の延岡市民に対する温かい眼差しが大変印象に残りました」との感想もあるぐらい、市長自らに地域課題とDXソリューションの全容を熱く語っていただいたことで、この事業に懸ける熱い思いを感じることができました。

空飛ぶクルマ運用を含むQaaSシステム本格実用までの5か年間計画

片道15分以内の搬送で救える命がある! 空白地帯課題と、フライトドクターがいる実証実験環境が揃っている延岡市

続いて、慶應大学 SDM研究所 顧問:中野 冠 さんより「空飛ぶクルマラボ」「NEXTAA(『空飛ぶクルマ』による医師搬 送システム検討コンソーシアム)」の紹介と合わせて、空飛ぶクルマ本体の特長やヘリコプターとの違いについて解説いただきました。

次に、延岡市における救急搬送の課題と「空飛ぶクルマ」活用が適している環境であることについて解説いただきました。読谷山市長のお話にもありましたが、延岡市は全国的にも有名な「ドクターヘリ15分ルールの空白地帯」。県立延岡病院に空飛ぶクルマを配置することができればこの15分ルール内になること、またこの病院には既にフライトドクターがいらっしゃるため、先行導入がスムーズにできる環境とのことです。「なぜ延岡が実証実験に適しているのか?」その答えは、現在起きている課題と、課題解決するための運用サポート体制が既にあるという環境だからなのですね。

「空飛ぶクルマ」導入拠点のキーになるのは宮崎県立延岡病院

空飛ぶクルマ導入における課題と、今後延岡市で実証実験中に行う運航シミュレーションのポイントについて、下記を解説いただきました。

  • 県立延岡病院に15分で到達できない現場へ空飛ぶクルマの導入を検討し、ドクターヘリ、ドクターカーとの役割分担(QaaSシステムによって生み出される効果)

  • 空飛ぶクルマ導入時の医療効果の評価

  • 救命救急だけでなく転院や予防医療(訪問医療)も含めた効果の産出

  • 運航コストの低減

最後に「空飛ぶクルマ」運用における住民の理解についてお話いただきました。救命救急医療は命がかかっていることなので、住民の反対はあまり出ないのではないか。それよりも「熱意を持った医療関係者に(空飛ぶクルマの導入を)受け入れられることが重要」であり、住民には「少しでも人命を救いたいと救命救急医療に関わっている医療関係者への感謝」を忘れないことが大事だとおっしゃっていました。コロナが収束しつつある日常で、改めて医療関係者の皆さまには感謝を忘れてはならないと感じたお話でした。

最後に中野先生の発表・質疑を通して、飛行機、ドローン、ヘリコプター、空飛ぶクルマの違いについて解説いただいた内容を下記にまとめておきます。

<飛行方式による違い>
■IFR(計器飛行方式)・・・管制官と会話による通信にて運航管理
・飛行機

■VFR(有視界飛行方式)・・・パイロットによる目視飛行
・ヘリコプター

■DFR(デジタル飛行方式)・・・遠隔操縦、自律飛行
・空飛ぶクルマ

<空飛ぶクルマとドローンの違い>
■航空機(※日本国内に限る)
・飛行機、ヘリコプター、空飛ぶクルマ

■小型無人機
・ドローン

※空飛ぶクルマは、国内で2025年に機体認証されるのを待つ状況。
※空飛ぶクルマは、将来的に「無操縦者化」の可能性もある。

参考:首相官邸HP https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kogatamujinki/kanminkyougi_dai8/s1-2.pdf

イベントの後半は「よくある質問」(下記3つを中心に)や会場・視聴者の皆さまからの質問も受け付け、登壇されたお二人からコメントをいただきました。詳しくは動画を視聴ください。(00:46:16 〜) 

今回のイベントでは、延岡市で導入スタートされた「“救急”as a Service【QaaS】事業」について、読谷山市長から詳しくお話をお聞きしました。また「空飛ぶクルマ」活用に向けたハード面の運用課題や実証実験に向けて、中野先生からお話いただきました。
「延岡市から救命救急医療のDXを推進していくんだ」という熱い想いを伺うことができました。ご登壇いただいたみなさま、ありがとうございました。

お問合せ、LODGEへのコンタクト


■ 宮崎県 延岡市 企画部スマートシティ推進室
電話:0982-22-7074
Fax:0982-22-7090
Mail:smart@city.nobeoka.miyazaki.jp

■ 慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科
Mail(中野冠 宛):nakano@sdm.keio.ac.jp

また本イベントを主催したLODGEは、地方自治体のDXを支援するオンラインイベントの開催や、人材マッチングなどをおこなっております。イベント共催のご相談や取り上げてほしいテーマ、DX人材についてのお問合せなど、お気軽にご連絡ください。

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