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「やめる、減らす、変える」をひとつひとつ粘り強く。自治体【書かない窓口】導入の舞台裏

こんにちは。オープンコラボレーショハブ「LODGE」です。

自治体DX界隈が今、「書かない窓口」というワードで賑わっているのをご存じでしょうか。

Yahoo! JAPANでの検索結果は1,510,000件。多いですね!

「申請に必要なものが分かりやすい、長時間待たない、手書きしない」を実現する、住民目線のDXが今各地で進んでいます。

「書かない窓口」化は、単なる手書きのデジタル化だけではなく、自治体側の業務フロー変更、改善とセットで実現しています。導入の現場ではどのような工夫、課題があったのでしょうか。神戸市と横須賀市のご担当者、DXソリューションを提供する株式会社アスコエパートナーズを招きお話を伺いました。

本イベントレポートは抜粋版です。
本編はぜひアーカイブ動画をご覧ください!

アーカイブ動画

登壇者

上左より)黒田さん、森さん、荒尾さん
下左より)鳥山さん、徳應

森 浩三 氏
神戸市 医療・新産業本部 医療産業都市部長。前 神戸市企画調整局デジタル戦略部部長

鳥山 愛 氏
横須賀市 民生局地域支援部 窓口サービス課 住民記録係。2018年に入庁。主に住民異動届を受付する窓口を担当

荒尾  順子 氏
株式会社アスコエパートナーズ 営業部。行政制度DB構築とサイトクリエィション全般を担当

黒田 裕人 氏
株式会社アスコエパートナーズ 営業部。全国の自治体向けに行政DXサービスのセールス、窓口改革のコンサルティングを担当

徳應 和典
モデレーター/LODGE責任者

神戸市と横須賀市の共通点は?

神戸市ではコロナ以前から、今できることから少しずつ始める方針でDXを進めていました。神戸市で導入したアスコエパートナーズ社の「学童申し込みサービス」をさらに分かりやすく楽にと進化させたのが、横須賀市で導入中のサービス「手続きナビ」「申請サポートプラス」です。


「セカンドベストを探し続け、今できることを粘り強く続けていこう」(神戸市・森さん)

神戸市は「市民が来庁せずに出来る手続きをとにかく増やすこと」を柱の一つに掲げ、「やめる・減らす・変える」の発想で、働き方改革・業務改革に取り組んでいます。

利用申込書を取りに行く、手書きで記入し目視でチェック、職員がシステムに都度手入力……など、民間業者、市の職員、保護者が非常に多くの工数をかけていた学童保育の入所手続きは、手書きを撤廃し、スマホから申請できるようになりました。

一方で、「やめる、減らす、変える」ができない一部の工程が残りました。

森さん:
「DXとはデジタルの力で全てのステークホルダーに新しい価値をもたらさなければいけないのですが、そこに至っていません。行政としては進んでいる仕組みであっても、世間一般の水準、つまり普段使っているサービスと比べることが重要です」

トランスフォーメーションのないデジタルは意味がない

神戸市ではその後、汎用の電子申請システムを導入。今現在160手続き、4万人以上が利用する仕組みが誕生しています。

森さん:
「どうすればすべてのステークホルダーが快適な状況になるのか。理想と現実とのギャップこそが課題です。そして、なぜギャップが起きているのかを知るために、WHY?WHY?WHY?を重ねて、課題を深掘りします。そうして初めて課題の原因が分かるので、この原因を取り除きます。

ポイントはセカンドベストを探し続けること。1つ失敗して心折れるのではなく、今できること、後々できることはきっとあるので、粘り強く続けるということが大事ではないかと思います。

『デジタルトランスフォーメーション』DXのアクセントは、トランスフォメーションの部分にあると思っています。トランスフォーメーションのないデジタルは意味がない。変革することは大変なことですが、時代の変化に合わせて変わり続ける、継続していくことが大事だと考えています」

アスコエパートナーズ 荒尾さん:
「森さんとは、普通ならこうしますよね、民間ならここまでしますよね、という感覚で、気軽にお話できました。出来る・出来ないにこだわらず自由に発想しても良いという状態が、その時できる最善の策につながったと感じています」

質問に答えるだけで申請書が完成 横須賀市の「書かない窓口」とは?(横須賀市・鳥山さん)

次に横須賀市役所の取り組みについて、鳥山さんにお話を伺いました。

最大待ち時間を100分→38分に短縮

横須賀市の住民異動窓口では、繁忙期には最大100分待ちになる深刻な課題を抱えており、令和2年6月にワーキンググループが発足しました。課題を深堀し、「窓口の回転率の低さ」「該当する申請書の分かりづらさ」「案内役の職員の不足」に行き当たりました。

理想の窓口を、「待ち時間が少ない」「自分に必要な書類が分かりやすい」「窓口の場所が分かりやすい」「名前や住所を何度も書かなくてよい」と定義し、業務フローの変更、人員配置の変更、導線改善、窓口周辺レイアウトの修正、システム導入などを行いました。結果、最大時には100分にも及んでいた窓口の待ち時間は最大38分にまで短縮することができました。

導入システムについて、詳しくお話を伺います。

24時間アクセス可能で自宅準備もOK。質問に答えるだけのナビ

手続きナビから「引っ越し」を選択した画面


鳥山さん:
「質問に答えるだけで自分に必要な手続きが一覧で分かるので非常に分かりやすく、手続きに必要な持ち物や場所も表示されます。運転免許、電気ガスの手続きなど、市役所管轄ではない必要手続きの案内も表示される点も便利と好評です。システムは24時間自宅からもアクセスできるので、事前に準備しておくことが可能になり、市役所に来てからの時間の大幅な短縮にもつながりました」

アスコエパートナーズ 黒田さん:
ベテランの職員さんと会話しているような形式を理想にしています。同時に、窓口対応のマニュアルがなく属人化されてしまう課題もこのシステムでカバーすることを目指しています」

「やめる、減らす、変える」で大きく改善

続く「申請サポートプラス」では、一気通貫して申請書を作成することができます。手書き申請をやめ、記入すべき箇所を減らし、入力方法やフォーマットを変えてシンプルかつ分かりやすい申請ツールが完成しました。

「申請サポートプラス」画面。質問に答えて入力することで(右面)、申請書(左面)が自動で出来上がります

鳥山さん:
「名前や住所を一か所入力すると複数の申請書に反映されるため、何度も入力する手間を省くことができます。手書きでありがちな、画数が多い漢字を繰り返し書く、小さな欄に長いマンション名を書く、などのストレスもなく非常に快適です。市民の皆さんにもこれは早いですね、と好評でした」

アスコエパートナーズ 黒田さん:
「導入一日目に立ち会わせていただきましたが、住民の方がスムーズに手続きナビ、申請サポートプラスを使ってくださって、職員の方も安心していました。弊社は、どうしたらストレスなく間違いなく申請ができるか、住民目線に特化したフロントサービスを中心にやっていますが、その思想が横須賀市さまとマッチングしたのではないかと思います」

横須賀市の取り組みは、2022年の夏のDigi田甲子園で全国4位に入賞しました。こちらもぜひご覧ください。


予算確保は? 現場の空気の作り方は?

このあと、試行錯誤段階での予算確保についての寄せられた質問に、森さんから回答いただきました。予算確保のコツ、業者の選び方などについて詳しくアドバイスをいただきました。

パネルトークでは上記のテーマをもとに、パートナーとなる業者の選び方、理想とのギャップを埋めるための地道な継続と試行錯誤の繰り返しの重要性についてお話を伺いました。

パネルトークの様子は、アーカイブ動画をぜひご覧ください。

最後に、森さんと鳥山さんから同じ課題に取り組む自治体職員の皆様宛にメッセージをいただきました。

森さん:
「過去を否定することは苦しい作業ですが、変わらないと『ゆでガエル』のような状態になってしまいます。変わること自体が心地よくなりますので、最初の一歩を勇気を出して知恵を出し励ましあって、頑張りましょう」

鳥山さん:
「デジタルという言葉を聞くと、ちょっと自分には無理だと思うこともあるかもしれません。私も以前はスマホを触るレベルでしたが、DXに取り組んで、プラス体験を増やしていきたい、もっと良くしていきたいという気持ちが生まれました。こういう風にしていきたいという目標があれば、それに向かって何をしたらよいかが考えやすくなります。一緒にがんばりましょう」

動画アーカイブ


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次回のイベントのテーマは「道路メンテナンスの業務フローのDX事例」

12/15(木)17:00より、山口県周南市の道路課のご担当者とあっとクリエーション株式会社の黒木さまをお招きし、道路メンテナンスにかかわる一連の業務のDX事例についてお話いただきます。

視聴はYouTube Liveで無料ですので、ぜひご参加ください。

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