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伏見瞬の買って着た服批評 その4:BALENCIAGAのスニーカー

 環境と靴の話をする。
 コロナ陽性で自宅療養期間に入ってから、『Whatever The Weather』の今年出た同名アルバムばかり聴いている。


 『Whatever The Weather』はLorraine Jamesというイギリスのプロデューサーの変名プロジェクト。基本的にはインストのエレクトロニック・ミュージックで、曲名はすべて「25℃」「0℃」「17℃」という具合に温度で表されている。
 その音はひたすらに「水分」を想像させる。ひんやりとした音調のシンセも、決して雄弁にはならない冷静なビートも、水の粒子としてスピーカーから肌に降りてくる。「水分」といっても、それは炎天下のいやらしい湿気ではない(湿度の高い日本の夏が私はほんとに苦手だ)。体をほどよい冷たさで包み込む、霧のような水分だ。おしつけがましさがなく、同時に、音に嘘を許さない感じがする。本当に、体に心地よい音にするために、妥協を許していない、凜とした感触がある。窓を開けてWhatever The Weatherを流していると、さりげなく優雅な気分が訪れる。この潤い豊かな気分に優るものがないから、結局同じ音楽ばかりを繰り返すことになる。

 環境を体に合わせることは、世界で最も重要なことだと思うようになった。何を食べるのかもそうだし書くときの姿勢や椅子の選び方もそうだが、今のこの体にとっての正解の環境ってものがある。
 環境さえ合えば、日々は自分にとっての日々になるし、仕事や義務の遂行も捗る。うまくいっていないことがあれば、とにかくガムシャラに張り切ったりしないで、真っ先に環境を変えてみるべきだ。Whatever The Weatherは、自宅療養期間の私にとって最良の「環境」となっている。
 しかしながら、選び取った「環境」が、「悪い環境」だった場合もある。今回はそんな「悪い環境」の話をする。BALENCIAGAのスニーカーの話だ。

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