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スタートアップ株式会社 開発ご担当者様に聞く「税金スッキリくん」【突撃!隣のプロンプト!】

生成AIサービスのプロダクトオーナー、エバンジェリストなどトップランナーの皆さんへのインタビュー特集「突撃!隣のプロンプト!」へようこそ。今回は「スタートアップ株式会社」の、税金について気軽に相談できるAIチャット「税金スッキリくん」について、開発ご担当者様からお話を伺いました。
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起業家や個人事業主へ、事業化を支援する様々なサービスを提供するスタートアップグループ

——読者の方に向けて、御社のご紹介をお願いします。

はじめまして、「スタートアップ株式会社」のプロダクト開発担当です。

当社が所属するスタートアップグループは、税務サービスを中心に、起業家や個人事業主の皆様に対して、事業化を支援する様々なサービスを提供しています。

「スタートアップ税理士法人」公式サイト:https://tax-startup.com/

スタートアップグループは、税理士法人、社労士法人、司法書士法人、そして株式会社で構成されており、それぞれが税務、労務、登記、保険の代理店業務など、特定のサービスを担当しています。

「はじめる勇気の、いちばん近くに。」をブランドスローガンに、起業家が新しくチャレンジをする傍にスタートアップグループがいることによって、最高の価値を提供することを目指し、サービス向上に取り組んでいます。

高いバリューを生み出せるパートナーとして働ける可能性を感じたChatGPT

——ChatGPTのファーストインプレッションを教えてください。

2022年12月にGPT-3.5に触れた時、その機能に大きな印象を受けました。コーディングに使ってみたところ、AIが持つ潜在的な可能性を感じる一方で、精度にはまだ満足できませんでした。

しかし、その時点でサービスに組み入れるのは難しいとしても、将来的には高いバリューを生み出せるパートナーとして協働できる可能性を感じました。

チャットボット機能と仕訳の確からしさの自動判別機能で起業のハードルを下げる「税金スッキリくん」

——「税金スッキリくん」について、詳しく聞かせてください。

税金スッキリくんは、主に2つの機能を提供しています。

一つ目は、予備知識や事前準備がなくても、PCやスマートフォンひとつで会計、税務、起業に関する情報を収集できる「チャットボット機能」です。

これまで専門知識や時間が必要で、税理士への相談を敬遠していた人や躊躇していた人たちでも、気軽に会計、税務、起業に関する情報を収集できるようにし、起業のハードルを解消することを目的としています。

「税金スッキリくん」公式サイト:https://lp.tax-startup.com/chatbot

もう一つの機能は「仕訳の確からしさの確認機能」です。freee会計やマネーフォワードといった会計ソフトウェアとAPI連携して、税金仕訳情報の正誤を自動で判定し、一般的な間違いを指摘します。

例えば、タクシー代として50万円という非現実的な金額が入力された場合、これを即座に検出し、ユーザーに注意を促すことが可能です。

技術面では、税金スッキリくんはOpenAIの大規模言語モデル「GPT-4」に加え、AnthropicのClaude 3というモデルを利用しています。

なお、ChatGPTは日本の税務に関する知識が限定的なため、より専門的で精度の高い税務アドバイスを提供する必要があります。

例えば、「スーツを経費として申告できるか」という質問に対して、ChatGPTでは「申告可能」と回答されがちですが、実際の税務処理では認められるケースは少ないです。

このような差異を解消するために、私たちは自社で蓄積した税務のノウハウをAIに組み込むRAG(Retrieval-Augmented Generation)技術を駆使して、実際の税務情報に即した、より正確な回答を生成できるようにしています。

【判定事項と具体例】

※上記の判定事項や具体例は今後、精度向上のために修正・変更・追加・削除される可能性があります。

2023年3月にリリースされたAPIを活用し、約1ヶ月でプロトタイプをリリース

——「税金スッキリくん」誕生までの経緯を教えてください。

潜在的な可能性を感じる一方で、精度にはまだ満足できなかった生成AIについて認識を改めた転換点は、2023年3月にリリースされたGPT-4と、APIの公開です。

GPT-4は、GPT-3.5と比べて大幅に性能が向上していました。また、APIが登場したことで、アプリケーションやシステムにChatGPTを連携させて、ChatGPTの機能を含んだWebサービスの提供ができるようになりました。

これを機に、当社では「税金スッキリくん」のプロトタイプを約1ヶ月で制作し、社内の同意を得て、正式なWebサービスとして開発を進める計画をスタートしました。

税金スッキリくんで税務申告の負担を削減することは、事業に挑戦するハードルを大きく下げる

——「税金スッキリくん」において、特に重視されているポイントは何ですか?

重視しているポイントは2つあります。1つ目は、税務業界の方々にツールを活用していただいて、さらに良いサービスを提供できるツールにすることです。

2つ目は、税金スッキリくんでスタートアップや小規模事業者の皆様の、税務申告の負担を削減することです。

資金に限りがあるスタートアップや小規模事業者にとって、自力で取り組む税務処理は大きな負担です。これをAIが支援することで、事業者は本業に集中し、創造的な活動に時間を割くことができます。

つまり、税金スッキリくんで税務申告の負担を削減することは、事業に挑戦するハードルを大きく下げることにつながります。

私たちのミッションは、より多くの人々が起業家として成功できるように必要なサポートを提供することです。

税金スッキリくんは、単に税務処理を助けるツールではなく、企業活動の本質を支え、事業者が直面する多くの挑戦を乗り越えるための強力な味方です。

税金スッキリくん活用シーン

メンバーのフィードバックを考える際の基礎として使うなど、マネジメント層が生成AIを効果的に活用

——「税金スッキリくん」以外に、生成AIを業務で活用されていますか?どのように活用されていますか?

特にマネジメント層の活用が目立ちます。たとえば、メンバーのフィードバックを考える際の基礎として使ったり、自分が考えたフィードバックをメンバーに伝わりやすいように書き直したりしています。

私はブレインストーミングの対話相手として使っています。プロンプトに水平思考を促す一文を追加することで、多角的な視点からの解答を引き出し、問題解決に役立てています。

社内コミュニケーションツールのChatworkに生成AIを導入しており、スタッフはChatworkから、さまざまな社内の情報を瞬時に引き出すことが可能です。

事実ではない情報を生成してしまう問題(ハルシネーション)は避けられない性質のもの

——生成AI活用における課題や難しさを感じるところがあれば、教えてください。

生成AIにまつわる課題について考えると、特にAIが事実でない情報を生成してしまう問題(ハルシネーション)は避けられない性質のものです。

これは生成AIの構造上起こり得る現象で、完全にゼロにすることは技術的に難しいです。

税金スッキリくんでは、生成AIが生成した回答の信頼性を別のAPIで評価し、その評価が一定の基準を満たさない場合、ユーザーに質問を返すシステムを導入しています。

これにより、低確度の回答がユーザーに提供されるリスクを減少させていますが、それでも完璧ではありません。

生成AIの進化とともに、より精度の高い、信頼できる情報生成が可能になることを期待しています。生成AIの精度向上は、ユーザーにとって信頼性の高い情報源となるため、私たちは常に最新の技術動向に注目し、改善に努めています。

生成AIを、月額3,000円で利用できるのは、プライベートジェットを同額で借りられるのと同じくらいの価値がある

——この記事を読んでいる方に生成AIをお勧めしていただけますか?

「生成AIを、月額3,000円で利用できるのは、プライベートジェットを同額で借りられるのと同じくらいの価値がある」という比喩があります。この比喩は、ビジネスの文脈でChatGPTを使用する価値を非常によく表しています。

頻繁に移動する人にとって、コストが高額であっても、プライベートジェットの利便性と価値は計り知れません。

我々は頻繁にテキストを作成し、一定の条件から業務プロセスを設計し、他人のテキストを読み込んでいます。3,000円でプライベートジェットのような利便性と価値の高いサービスを使えるなら、それを利用しない手はありません。

税金スッキリくんに税理士試験や社労士試験を受験・合格させたい

——「税金スッキリくん」ならびに御社事業の将来展望について、聞かせてください。

直近の計画として、私たちは税金スッキリくんに税理士試験や社労士試験を受験させ、合格させることを目指して取り組んでいます。

さまざまなモデルを試した結果、現状ではGPT-4よりもClaude 3の方が精度が高いことが判明しました。この発見を受けて、元々GPT-3.5とGPT-4を使用していた仕様を変更し、Claude 3を追加しました。

さらに、ユーザーがチャットのUI上で「確定申告したい」と伝えた際に、必要な情報をリストアップし、その情報を提供することで、UI上で確定申告が完結できるようなサービスを開発しています。来年の申告時期に向けて、2025年1月のリリースを目指して開発を進めています。

お話を聞いた方

(聞き手:ロコアシ事業部長 あさい

ロコアシ:AI活用人材にデスクワークを委託!

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