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#02 旅雑誌はどこに行くかが問題だ篇

そのほかの問題のほうが大きいけど、まあ事実として、毎号どこへ行くかには頭を悩ませている。『LOCKET』が標榜しているのは独立系旅雑誌。そりゃあどこかを旅しなければいけないね。

でも、どこを旅するにしてもお金がかかる。ひとりで運営しているのに。商業誌ですら海外取材は減っているのに。印刷費や原稿料に加えて渡航費も膨れ上がる媒体だから、こうしてnoteをはじめて、知ってもらえる機会を増やさなければいけないのだ。

おそらく旅雑誌は構成から二分できる。特定の国や地域そのものを掘り下げるか、あるいは、複数の国や地域からテーマを掘り下げるか。より一般的なのは前者かもしれないね。読者にとって内容が明快だし、渡航回数=予算を圧縮できる。

でも、『LOCKET』創刊号を準備していた22歳の内田青年は後者を選択しちゃった。もっとたくさんの国に行きたい年頃だったし。重層的な世界を視点によって串刺しするような旅雑誌にしたかったし。大学をサボってはバックナンバーを集めて貪り読んでいた雑誌の影響はいわずもがな。『NEUTRAL』とか『SPECTATOR』の初期とかね。

結果、創刊号はブータン、デンマーク、小値賀島を旅した。第2号は北アルプス、屋久島、アメリカ、北欧。第3号は南インド、オランダ、奄美大島、奈良、アイスランド、ベトナム。第4号はチュニジア、ニュージーランド、ロシア、アメリカ。第5号はトルコ、ドイツ、知床、西表島。第6号はイラン、トルコ、ノルウェー、韓国、台湾、カザフスタン。

行き先を考えるうえで、いまはふたつのことを決めている。まずは疫禍の2021年10月という時期に再訪した第5号以来、毎号必ずトルコを旅すること。そして、意思をもって決めるだけでなく、時には偶然に身を委ねて流れていくこと。まるで旅そのものみたいにね。編集者ひとりでつくっているから、そうでもしないと、思考のクセから抜け出せない気がするんだ。

台北では日本公開に先駆けて「悪は存在しない」を観た。いや衝撃だよね……?

次号の第7号でいえば、台湾とフィリピンがそう。昨年刊行した本誌デザイナー・Yunosukeの作品集『FAR COAST』第2版の展示が台北で決まり、『LOCKET』の取材旅も兼ねることにした。期限切れ間近のANAマイルで行きたかったけど、羽田・台北便は枠が満席。そこでマニラを経由することにし、両国で小さな企画も立てた。台湾はともかく、フィリピンは未訪問だった国。展示とマイルの枠という偶然が重ならなければ、きっと行くことは一生なかったかもしれい。

台湾は1年ぶり5回目。過去には花蓮でパスポートをなくして見つけられなかったり、国内第2峰で富士山よりも高い雪山(という名の山)を縦走したり、雑誌『PAPERSKY』の取材で2週間をすごしたり。今回は、そうした経験があっても完全に無縁だった切り口が見つけられたように思う。おなじみの国だからこそ、一般的には知られていない一面を描き出したい。

マニラは安全というマカティ地区を出てから楽しくなった。

初めてのフィリピンは、結局自分にとっては、ハワイよりこういう土地のほうが居心地がいいんだなと思わされた。噂で聞いていたとおり治安が劇的によくなり、ナチュラルワインやタコスなどフードシーンも盛り上がっている。第4号から食(コーラ)、自然(クマ)、アウトドア(スキー)と特集がつづき、次号はカルチャーにまつわるものにしたいと思っている。だから、こうして若者が多くて勢いのある国で取材ができたことは本当によかった。偶然の産物とはいえね。

あ、読み飛ばされたかもしれないけど、毎号トルコを旅したいと思っているのは本気だよ。これを書いている現在も、イスタンブールに戻ろうとジョージアの首都トビリシの空港にいるところ。第7号のトルコ取材ももう終盤の20日目かな。次回はそのことを書こうと思う。

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