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#03 トルコ取材21日目を記録する篇

4月から5月にかけて3週間強、第7号の取材でトルコを旅した。終盤に3泊だけジョージアへ寄り道したが、メインはあくまでトルコ。第6号の取材で旅した2022年12月以来、訪れるのは4回目だ。

本当は前回の記事を4月中に公開し、実際の渡航中にトルコ取材の途中経過を書こうと思っていた。でも、せっかくの渡航中は前回のように空港くらいでしか書く気にならず、とうに帰国してしまっている。

そこでジョージアの首都トビリシからトルコのイスタンブールに飛んだ翌日、取材旅の21日目をどうすごしたか書いてみようかな。イスタンブールは人口およそ1,600万人を抱える国内最大都市(首都ではない)。個人的に同意するかどうかは別だけど、ヨーロッパとアジア、東西文明の境界線といわれる街。ここも4回目の滞在で、学生時代の50日間トルコ一周の旅では10日間をすごした。それを踏まえて、どんなふうに独立系旅雑誌の取材旅をしているか、少しでも想像してもらえたらと思う。

この記事の写真はすべて第6号の旅で撮影した。

5:30
起床。日中は出歩きたいし、夜は疲れているから、取材旅では普段より早く起きて仕事の時間へ充てるようにしている。やむをえず4時、あるいは3時に起きて仕事せざるをえなかった日もあった。イスタンブールに定宿はなく、今回は「Taxim Hostel」に宿泊。一等地であるイスティクラル通り至近ながら個室で1泊2,600円程度。あいにくの曇天なので外出はあきらめ、仕事をしつつ明るくなるのを待つ。

8:00
外出。値段に相応しい激セマ部屋なのでカフェにでも行こうと思い立った。イスティクラル通りもまだひと通りはまばら。若者たちの通学らしき姿が目立った。

8:30
「Turkish-German Bookstore & Cafe」に入る。欧米人から人気が高いドイツ系のベーカリーカフェ。440円程度のカプチーノを注文して、日記書きに注力した。『LOCKET』は年に1回出るか出ないかという刊行頻度なので、やっと誌面をつくるという時期には取材旅の記憶が薄まってしまいがち。だから、日記がめちゃくちゃ大事なんだ。当日や前日の描写・感情・アイデアを毎日1時間以上かけて記録するようにしている。

10:00
日記書きが現在に追いついたのでカフェを出る。正午からの撮影に備えて、イスティクラル通りを散策。繁華街なのに小さな書店がたくさんあって楽しい。好きな絵本『すてきな三にんぐみ』のトルコ語版を見つけて買おうか迷う……けど、前日にジョージアで絨毯を購入したばかりだったので我慢。撮影目的地を外から下見し、雰囲気がよさそうでひと安心。

11:00
「SEKA」というパレスチナ料理店でブランチ。ファラエルとジュースで670円程度。トルコ料理は世界三大料理と謳われるくらいで、当然おいしいのだけど、ぶっちゃけ飽きる。ロカンタと呼ばれる安食堂が旅人には心強いのだけど、ぶっちゃけ脂(油?)がしんどい。ジョージアで食べたファラフェルがめちゃくちゃおいしくて、野菜も摂りたいからということで、このころはファラフェルを探し歩いていた。

イスティクラル通りでは2022年に爆弾テロが発生し、これはその1ヶ月後に撮影した爆心地付近。

12:00
宿で三脚をピックアップし、撮影目的地へ。でも、うーん……ちょっと違う。いや、だいぶ残念。今回の特集のキモになる場所と考えていたんだけどな。動揺を落ち着かせるべく、通りがかった小さなチャイ店に入る。老翁たちの溜まり場でチャイは70円程度。さっきの場所は、特集関連ではイスタンブールでNo.1だったのに……ここで次点に考えていた場所を何ヶ月ぶりかに思い出し、そっちへ向かってみることにする。本当だったら昼には撮影を完了させ、あとは飲み歩くだけだと思っていたんだけどな。

13:10
カバタシュ港で船に乗り、カドゥキョイ港へとボスポラス海峡を渡る。イスタンブールのヨーロッパサイドから、アジアサイドへ……ぶっちゃけそんなに変わらないけどね。カバタシュ港は年内に新フェリーターミナルが完成するらしい。

14:00
No.2だった撮影目的地に行き、手はずを整える。ここがダメだったらどうしよう、今回の特集記事が成立しないかもしれない……でも、カドゥキョイを歩いていたら、大丈夫そうな気がしてくる。このあたりのモダ地区は富裕層や外国人居住者の多い地区。過去に英語メディアで取り上げられた記事を読み、次にイスタンブールへ来たら泊まろうと思っていたのに、うっかり忘れていた。欧米圏での評価が高く、そのわりにトルコ人で混み合っていた「Brekkie Breakfast Club」で休憩。カプチーノとクロワッサンで1,200円程度と割高だけど、めちゃくちゃおいしい。第8号の取材旅でこそモダ地区を拠点にしようと改めて決意する。

15:30
撮影開始。うまく撮れたかわからないけど、場所としてはめちゃくちゃいい。ストーリー的にもめちゃくちゃいい。未知のトルコと出合えた気がする。すべてのブローニーフイルムを使い終わったから、実質的に今回の取材旅はここでおしまい。

イスタンブールのヨーロッパサイド。左奥にガラタ塔がそびえる。

19:00
カドゥキョイ港からカバタシュ港へ戻り、ブルワリー兼バーの「Craft Beer Lab」に入る。4日前に黒海沿岸のリゼという町で別れていた写真家の土田 凌と合流し、打ち上げ。じつは今回の渡航は、昨年出した『FAR COAST』につづくアートブック第2弾として、彼の写真集をつくるプロジェクトを兼ねていた。というかこっちがメイン。基本的にはふたりで旅していたけど、東部のワン郊外で手応えのある撮影ができたので、ぼくが勝手にジョージアへ足を延ばしていた。次号よりも先にこの写真集を出すので、めちゃくちゃご期待を乞う。

22:00
満員のバスの車内で写真家と別れ、イスティクラル通りを散策しつつ宿に戻る。明日の夕方には出国だ。日記を書きたいけど、やっぱり激セマ部屋に気分が上がらず、部屋へ入るなりベッドで横になった。21日目おしまい。

ところで、こんなふうにトルコを振り返っておきながら、じつは明日からインドに行く。7年ぶり4回目のインドはちょっぴり、いや、わりと緊張するな……トルコはぼくにとって本当にノンストレスでノンプレッシャーだったから。次回はインドでのことを書こうと思う。

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