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ローカルエリートからひもとく、魅力的なコンテンツとは アフロマンス×糀屋総一朗対談1

ローカルツーリズム株式会社代表・糀屋総一朗とさまざまな業界で活躍されている方の対談記事。今回は、泡にまみれて踊る「泡パ」や、車で楽しむ音楽フェス「ドライブインフェス」など数々の人気イベントを仕掛ける体験クリエイターのアフロマンスさんをお迎えしました。全国各地を飛び回るアフロマンスさんが考える、魅力的な体験の本質とは。3回連続掲載の初回は、地域で活躍する「ローカルエリート」の姿を考えます。

アフロマンス(本名 中間理一郎)
アイディアと実現力で、新しい体験をつくる体験クリエイター / クリエイティブディレクター 。Afro&Co.CEO。泡パ、サクラチルバー、喰種レストランなど、体験型イベントを数多く手がける。コロナ禍においても「#楽しいが必要だ」のメッセージを掲げ、累計200万人以上が参加するオンライン音楽フェス「BLOCK.FES」の立ち上げや、車で楽しむ音楽イベント「ドライブインフェス」など、世の中に熱量を生み出す企画を次々と実現している。


糀屋:先日、アフロくんとお話しする機会があって。もっといろいろお話しできたら面白いなと思って、今回の対談が実現しました。

アフロマンス:取材とか気にせず、雑談的にお話ししていいですか?

糀屋:もちろんです。よろしくお願いします。

アフロマンス:糀屋さんが言う「ローカルエリート」って、すごく面白い言葉ですよね。僕はね、最近、ローカルエリートに出会うことが増えたと感じます。

数年前、「Afro&Supporters」という、アフロのイベントを手伝いたい人が集まるコミュニティがあったんだけど、半分くらい東京以外の地方から応募が来るんです。でも、僕らがやっているイベントは東京が多いから、遠くに住んでいる人は物理的に手伝うことが難しい。結局なんだかフワッとした関係性になっていたんです。

ところが、コロナ禍でオンライン化が進み、場所に縛られないやり方も増えてきた。さまざまな場所にいる人と一緒にプロジェクトができるようになり、結果、地域を引っ張っていくような、魅力的な人材にたくさん出会いました。ローカルエリートって実はたくさんいて、今の時代になって関わりやすくなったのかな。

アフロマンスさんが考える「ローカルエリート」


糀屋:アフロくんの周りにいるローカルエリートって、例えばどんな人ですか?

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アフロマンス:たとえば、大分県の豊後大野市にいる江副くんがそうだと思います。「ロッジきよかわ」という宿泊施設をやっているんですが、元は何もないキャンプ場だったそう。手入れもされてなくて、利用料も安く、収益性も乏しい。

そこで、コテージや場内を整備して、ハード面を充実させたんです。そして、次に仕掛けたのがアウトドアサウナ。川辺にテントサウナを作って、水風呂は天然の川に飛び込む。大自然の中のロケーションが本当に素敵な場所なので、外気浴とか最高ですよ。

大分は「おんせん県」とうたっているのに、豊後大野市には温泉がないんです。それならサウナに振り切ってやろう! という発想で、地元のサウナ好きが集まって盛り上がった。今ではすっかり人気の施設で、集客も順調なようです。豊後大野市には古くから、岩壁で薬草を炊き上げて入る石風呂の文化があったそうで。そんな歴史的背景も相まってか、今では「サウナのまち」として行政も街おこしをしています。

糀屋:ローカルエリートは、いろいろな場所に点在しているわけですね。

感覚的に「なんかいい」ってとても大事

アフロマンス:もう一人、面白いなって思ってる人がいて。彼もローカルエリートかもしれない。後輩の間宮くんという子が、大阪で棍棒をつくってるんですよ。

糀屋:…棍棒? あの、殴るやつですか?

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アフロマンス:はい、それです。何をしているかというと、山に籠もってひたすら棍棒を作っている。インスタグラムもありますよ。ほら、greatkonbouってアカウントです。

糀屋:本当に棍棒だ。木製なんですか?

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アフロマンス:そう、木を加工して作るんです。結構いろいろな形があって、一つ一つに作品名も付いている。最近は、「棍棒飛ばし」という競技も開発したようです。棍棒で、棍棒を殴って、棍棒でキャッチするという。

糀屋:何が彼を棍棒に向かわせているんでしょうね。

アフロマンス:うーん。彼は大阪にある「THE BOLY OSAKA」というホテルのオーナーなんです。ホテルのロゴがすごく独創的で、パワーポイントで間違えて縦に縮めちゃった星みたいな。パッとみると、デザインできない人がミスったのかな?って(笑)。でも、もちろん狙って作ってて、行ってみるとおしゃれで素敵なホテルなんですよね。

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ホテルってある程度、フォーマットがあるじゃないですか。どんなホテルにも当たり前に予約・宿泊といったオペレーションがあって、ある程度の相場感が決まっていて。ホテルという事業をやる以上は、コンスタントに集客できないと成り立たない。

彼の中に強烈な創作意欲はあるけれど、ホテルのフォーマットでは受け止めきれず、持て余してしまう。その点、棍棒はビジネスのためにやっているわけじゃない。世の中のフォーマットに縛られず、彼の中の何かが爆発したが、棍棒なのではと。

大棍棒宣言」という、彼らのステートメントがありましてね。それを読むと、意外と深いことを考えているようです。これ、3000文字くらいあるんですけど(笑)。要は「棍棒って何に使うの?」って質問がクソだ、みたいな話ですね。

書き出しから「バコン、バーン、バキッ、ポオオオン」で始まるのとか最高ですよね。何に対しても意味を求めすぎている、今の時代に対するアンチテーゼ的な側面も感じます。これはね、僕はローカルエリートかと思うんですが、どうでしょうか?

糀屋:その通りですね。ローカルエリートは、「今までの延長線上にないことをする人」でもあると思っています。ローカリティを活かして、そこで新しいことを生み出せる人物。

僕の持論なのですが、地域が今までの価値観で衰退しているのなら、外からの新しい血を入れなくてはならない。だから、こういったアーティストに自由に遊んで活動してもらう、そんな懐を地域は持つべきなんじゃないでしょうか。

アフロマンス:棍棒を作っている彼も普段は大阪に住んでいて、作るときは奈良の山奥まで行くんですよ。この創作活動は、まさに、地域の懐がないと成り立たないですね。

僕が棍棒をSNSでシェアしたら、周りの感度高い人たちがザワザワしてましたね。「棍棒ってやばくない!?」とか「棍棒を掘った人って今までいなかったよね……」とか。

糀屋:なんかいいですよね、棍棒って。

アフロマンス:そうなんですよ。「なんかいい」ってけっこう大事ですよね。

糀屋:わかります。感覚的なものですよね。

アフロマンス:ちなみに今度、2月にそのホテルで「大棍棒展」をやるんですよ(編集注:2022年2月11日〜20日開催。対談は2021年12月時点)。そのためだけに大阪に遊びに行こうと思っています。こういうのって、ビジネスとしての成功はもちろんだけど、人が繋がっていく感じも魅力。だから、感覚的なアプローチも大事だと思います。

糀屋:物事には、ノイズとか、ふと「なんだこれ?」みたいなのがあるから面白い。わかりやすさだけじゃつまらないですよね。そんなことを最近考えていたので、いまのお話を聞いてグッときました。

(構成・西川真友)

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