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新しいものを作るために300種類のシャンプーを試し、100社に問い合わせた DJ DRAGON×糀屋総一朗対談1

ローカルツーリズム株式会社糀屋総一朗と、さまざまな分野で活躍されている方の対談、今回はクラブDJ、ラジオDJ、クリエイティブディレクター、ミュージシャンなどさまざまな分野で活躍されているDJ DRAGONさんです。今年に入ってエシカルブランド「EVEREST(エベレスト)」の商品開発にも関わっています。対談の初回は開発に関わることになった経緯と、開発秘話についてです。

「思い入れ」のためにとことん行動した

――ドラゴンさんは今までDJやクリエイターとして活躍されてきて、いまヘアケアの開発もされているということで、とても多彩な活動をされていますね。

DJ DRAGON(以下、ドラゴン):今回のコスメの企画については、IT企業から元々あったコスメブランドを引き継ぐ相談を受けたのが始まりです。

糀屋:もともとコスメ分野に知見はあったんですか?

ドラゴン:いや、好きは好きですけど、仕事としてはやったことはありませんでした。だから「シャンプーって何の成分でできてるの?」というところから調べ始めて。結局何の製剤を使っているのかとか、化学の勉強のような感じもありましたけど、研究調査を半年ぐらいやっていました。

自分なりにもいろいろ調べた結果、すでにある製品をそのまま引き継いで僕が担当するのはちょっと違うと思いました。僕がやるのであれば「ブランドを1から作り直すということだったらやりますよ」と言ったんです。

自分が思い入れを持てるものを。こだわりを持って突き詰めた

糀屋:引き継ぐというより、立ち上げのような感じになったんですね。

ドラゴン:そうなります。それでやる以上はしっかり結果を出さなきゃいけないし、何より自分が納得していいものを作らないと思い入れもできないなと思ったので、300種類ぐらいシャンプーを試しました。朝晩髪を洗って、妻やスタッフにも協力してもらって意見交換をしながら考えていきました。その中でここ最近注目されている、豚の血液から作られた「ヘマチン」という成分と、太古の地層から取れる「フルボ酸」という成分を入れたいなというところに行き着いてきました。それでOEMの会社さん、100社ぐらいにひたすら電話して、話を聞いてくれるところを探していきました。

糀屋:シャンプーを300種類試すのもすごいですが……100社にもご自分で電話を?

ドラゴン:僕とアシスタントの女性でひたすら(笑)。それで「こういうものを作りたい」といってちゃんと向き合ってくれるところって、結局10社ぐらいしかなかったんですよね。その中で1社、すごく興味を持ってくださったところがあって、僕のわけわかんない話につきあってくれて面白がってくれて、向こうから教わることもありながら半年ぐらいかけて中身を開発していきました。

それと同時並行で、パッケージのことも考えていて。当たり前なんですが、ヘアケアってプラボトルが基本なんです。僕もはじめはプラボトルありきで考えていました。でも時代的にサスティナブルとかSDGsという言葉が生まれてきて、米やサトウキビから作るボトルみたいなものもあるんですよ。だけどヘアケア剤は光での劣化・酸化を防ぐためにボトルに色がついているので、結局リサイクルは困難だし海に流れたらプラごみになってしまう。いろいろな容器を見たけどピンときませんでした。

――サスティナブルというと、詰め替えも思いつきますが、そういう発想には至らなかったんですか?

ドラゴン:あれはですね、皆さん詰め替える時にボトルをそのまま使うじゃないですか。本来は熱湯消毒しないとなのですが、皆さんすすぐ程度で入れ替えると思います。そうすると結局風呂場の雑菌が長年のつけだれみたいに、どんどん溜まっていくんですよ。それを髪に塗りたくってたら、髪や皮膚に問題が起こるのは当然で。でも現状の詰め替え製品ってそれ前提でやってるから、けっこう防腐剤とかが強めに入ってるんです。

糀屋:そうか、考えたことなかった……けっこうヤバいですね、風呂場の雑菌。

見たこともないもので感動したい

ドラゴン:そうなんですよ。それで、なぜか自分の中でアルミチューブがめちゃくちゃ気になってきちゃったんです。そういえばアルミチューブを使ったハンドクリームとかは少しあるけど、シャンプーってほとんど世の中にないなと。それで今度はアルミチューブを作れるか、というのを調べて、大きい会社5社ぐらいに相談しました。

容器、中身、すべてに意味がある

「こういうことやりたいんだ」って話したら「何言ってんだこの人」みたいな反応もされましたけど、向き合ってくれる人もいて、作れることになりました。アルミチューブって押すと形が戻らないので、中に空気や水が入っていくことがないので、雑菌が繁殖しにくいんです。さらにアルミならリサイクルできる。大手とかは工程もかかりすぎるから絶対にやらないでしょうけど、だからこそ作ってみたかったんですよね。それでチューブ製造のめどがついたら、今度はチューブに中身を充塡する工場を探して。

糀屋:え、チューブを作るのと中身を入れるのは別?

ドラゴン:別なんです(笑)。今度は充塡するとなったら、従来のシャンプーでは水っぽすぎてどんどん液垂れしてきてしまう。それで成分を凝縮してジェル化するのにまた実験をして、繰り返して……とひたすらやって、やっとここまで来てるという感じですね。

同じ容器で柑橘系の香りのハンドクリームもある

糀屋:いや、本当にすごいです。いま僕は地域循環経済を実現したくて、地域の名産や価値があるけど動いていないものに対して投資をしていこうと考えています。でもどこの地方も似たようなものばかりができているなと感じていて。ドラゴンさんみたいに100社に連絡したり、トライアンドエラーを繰り返すみたいなガッツある人が少ないなっていうのは感じていて。こういうお話が読者の刺激になればいいな、という思いもあるんですよ。

ドラゴン:僕もやっぱり「やったことない、見たことないもので感動したい」っていう思いがありましたね。それでアルミチューブでヘアケアを作ってみて、もちろん外側だけじゃなくて中身も素晴らしくよくできたし、結果的に男性女性関係なくジェンダーレスでも使えるものになったなとも思ってます。

糀屋:この、製品が入ってるパッケージもかっこいいですよね。

ドラゴン:僕はいろんなアートポスターとかが好きで。ポスターってこういう紙の筒に入ってたりしますよね。このチューブが絵の具みたいなイメージもあると思うので、アートなイメージもあって、それでこれに入れて、そのままプレゼントにも使えるなとも思ってます。

糀屋:おしゃれだなあ。これそのままセレクトショップの棚に置きたい感じありますよ。これ、持ち運ぶとしても邪魔にならないのもいいですよね。

このままプレゼントにもできるおしゃれ感

ドラゴン:そうそう。旅先でもこだわったものを使いたいっていう気持ちが自分でもあったので、この「EVEREST」を作る時に「持ち運び」ってこともめちゃくちゃ意識しましたね。最近だとサウナーの人たちとかも、バッグにポンと入れて持って行ってもらえたらいいなと思います。

糀屋:あー、たしかにサウナーにも受けそう。おしゃれだし。これならジップロックに入れずに、そのままバッグに入れて持っていけますしね。

ドラゴン:そうなんですよ。僕はとにかくかっこいいもの、テンションが上がるものを近くに置きたいと思ってて、プラボトルがとにかく嫌いだったんです。デザインなんてみんな一緒で、テンション上がらなくて。そこをどうにかしたい! ってゴリゴリやってるとやっぱり自分のテンションが上がっていくのがわかるんですよね(笑)。

(聞き手・高橋ひでつう 執筆・撮影 藤井みさ)

続きは明日公開です。

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