見出し画像

「観天望気」で天気を予報して、白馬の絶景ハンティングに行こう!

山を駆ける競技「スカイランニング」「トレイルランニング」の選手であり、「白馬人力車」の事業責任者でもある上正原真人(かみしょうはら・まさと)さんの連載「トレイルランナー、白馬を人力車で駆ける。」。白馬での仕事の様子、競技での海外遠征の様子などを月イチで綴ります。今回は、最近上正原さんが勉強しているという「天気予報」についてです。

白馬の季節は秋から冬へ

夏山シーズンも終わり、雪をかぶり始めた白馬の山々。今は三段紅葉が最高のコントラストを見せている。三段紅葉とは山頂付近の冠雪(白)、中腹の紅葉した木々(赤)、麓のまだ紅葉していない木々(緑)の3つが織りなす3色の景色だ。

10月中旬から一気に気温が下がったことで、一瞬で山の上部が白に染まった。この時期は山の顔色が日々変わるので毎日朝が楽しみだ。白馬大橋には全国からカメラっ子が集まり、絶景を収めようとしている。ふらっと散歩しながらこんな景色が見れるのは白馬に住んでいるいちばんの特権かな。

ふらっとこんな絶景が見られるのは白馬在住ならでは

まずはインスタで見たい景色や行きたい場所をリサーチ。目的地が決まったら次は旅の準備。荷物は? 服装は? 天気は? そう! 天気が大事!! テレビで天気予報を見るのは簡単だけど、白馬の天気はそれだけでは足りないかもしれない。山に囲まれた地形でこの地域独特の天気が存在する

そこでもっとタイムリーに、かつピンポイントで天気を予測するために今回は観天望気という天気予測の術をご紹介する。といっても自分も最近勉強し始めたところなので、そのつもりで読んで欲しい(笑)。

昔の人の知恵「観天望気」

観天望気とは、昔の人が行なっていた天気予報の仕方だ。現在はアメダスやレーダーのような機器を使用して、細かくデータを集めてそれをコンピューターが計算することでかなり正確な天気を予報することができる。一方で昔の人は、五感から得た情報を使っていた。雲の形や風向きを見たり、動物や昆虫の行動を観察したりして天気を予報したのだ。

このようなものが例としてあげられる。「魚がよく釣れたら翌日は雨になる」「夕焼けは晴れ」「カマキリが高い所に巣を作るとその年は大雪になる」「ツバメが低く飛ぶと雨」。一見全く根拠のない迷信のようだが、実は理にかなっていることが多いのだ。

例えばツバメが低く飛ぶのは、餌となる昆虫が地面付近を飛んでいるからである。雨が降る前の大気は水蒸気を多く含んでいて、昆虫の羽に湿気がたまり重くなることで、地面付近に集まるのだ。

先人の知恵はすごいもので、現在のAIによる天気予報に負けない精度を持つように思う。

観天望気の優れている点は、その地域ごとに特有の観測方法をもっていることだ。全国ニュースの気象予報では細かい地域の天気までは捉えきれていないことも多い。「長野は曇りのち晴れでしょう」というフレーズを信じて白馬に来てみると、がっつり雨なんてことも。長野は南北に200kmも伸びているのだから、一様に天気が同じであるわけがない。

その上、山の天気はその地形の特徴からコロコロ変わるもので平地の天気と全くと言っていいほど異なる。そこで観天望気を用いてピンポイントでその場所の今後の天気を予想してみるのである。

月明かりの下で読書

雲の種類から見る天気

観天望気の基本中の基本、それは雲の観察。雲の種類は無数にあるが、主に高度によって3つに分類される。上空5000m〜13000mにできる上層雲、2000m〜7000mにできる中層雲、地上付近〜2000mにできる下層雲である。また「層」「積」「巻」「乱」「高」の5つの漢字により、どのような特徴をもつ雲かがわかる。

例えば馴染み深く、なおかつ要注意なのが積乱雲。夏の夕方によく見られるモクモクと上空に立ち上がる雲だ。雷雨、突風、雹などをもたらす危険な雲で、発生条件は大気が非常に不安定な状態であること。大気が不安定というのは、上空の冷たい空気と地上の暖かい空気の気温差が大きい状態のことを指す。

山の天気は変わりやすいので、雲の動きに注意

地上付近の湿度の高い暖かい空気は垂直方向に上昇し、その後上空で急激に冷やされることで雹や大雨を降らせる。また上空から降る大粒の氷と上昇気流によって巻き上げられた小粒の氷がぶつかることで、雲の中に静電気が生じる。それが地上に近づくと放電して雷となるのだ。積乱雲は発達するスピードも非常に早いので、見つけたら早めに避難することをオススメする。

白馬を覆う白い布団、雲海

雲の海と書いて雲海。晴れた秋の朝や岩岳や八方池から下を見るとフカフカの布団のような雲が白馬を覆っている。そしてかなた向こうから太陽が顔を出してくる。朝活の極みと言っていいだろう。早起きして登った人にしか味わえない特別な景色、その遭遇率を高めるために雲海の出現条件を覚えておこう。

1、前日に雨が降ったりして大気中の水分が豊富にあること。
2、晴れていて放射冷却が起こっていること。
3、雲を流してしまう風がないこと。
4、前日の日中と当日の朝の気温差が大きいこと。

この条件が揃いそうな日には、頑張って早起きして登ってみたら最高の景色が拝めるかも。

眼下に広がる雲海に感動

カメムシ大発生で大雪予報!?

世界でも有数のパウダースノーを誇る白馬。これほど大雪が降るのはただ単に寒いだけではない。地形が大きく関係しているのだ。ポイントはシベリア寒気団と対馬海流。秋から冬にかけてシベリア大陸に居座るとても冷たい高気圧の塊をシベリア寒気団という。俗にいう冬将軍である。また日本海には比較的暖かい対馬海流が流れている。この暖かい海から発生した水分が偏西風に乗って北アルプスを超えるとき、上空の寒気によって急激に冷やされて大雪をもたらすのである。雪を降らせた後の空気は乾燥しているため北アルプスを越えると雲がなくなり快晴になることが多い。

そろそろスキースノボシーズンも始まるということでみなさん気になっているのは今年の積雪量。積雪はズバリ……多いでしょう!!(あくまでど素人の予報ですw)

大雪と予想する一番の理由はカメムシの大量発生。雪国では「カメムシが大量発生すると大雪になる」という言い伝えがある。カメムシは昆虫の中では珍しい越冬する性質を持っており、より生存率を高めるために秋のうちに暖かい場所を探して山や森から出てくるのである。

カマキリが大雪を予知して木の高いところに巣を作るのと同じように、カメムシにも積雪量や気温を予知できる能力が備わっているのであろう。そのため大雪を察知すると山から町に出てきて民家や店舗など人のいる暖かいところに大集結するのである。そして今年は明らかにカメムシが多い。毎日数匹のカメムシがどこからか家の中に侵入してきて、ライトの周りを飛び回っている。また先日、一晩外に干し忘れていた洗濯物を取り込んだときはなんと7匹ものカメムシがついていた。かみしょーハウスはしばらくカメムシの避難小屋として賑わいそうだ。

以上、天気についての色々でした。みなさんも天気を予報して、白馬の絶景をハントしてみては。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?