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人を巻き込むには突き詰めて「おかしい人」にまでなること DJ DRAGON×糀屋総一朗対談2

ローカルツーリズム株式会社糀屋総一朗と、さまざまな分野で活躍されている方の対談、今回はクラブDJ、ラジオDJ、クリエイティブディレクター、ミュージシャンなどさまざまな分野で活躍されているDJ DRAGONさんです。今年に入ってエシカルブランド「EVEREST(エベレスト)」の商品開発にも関わっています。対談の2回目は何かに取り組むときのドラゴンさん流の考え方についてです。

自分自身がどう思うかが重要

糀屋:僕らがやっていることって、地方で何かしたいけど踏み出せない人の背中を押してあげることなんですけど、ドラゴンさんは地元への熱い思いを語ったり、ローカルのシーンも盛り上げつつ、ヘアケア開発みたいな新しいこともやるっていう……そういう刺激の原動力とか、どうすればそんなにクリエイティブになれるんですか、ということをお聞きしたくて。

ドラゴンさんのパワーに刺激を受けまくりです

DJ DRAGON(以下、ドラゴン):僕は茨城出身なんですけど、若い頃は東京が一番で、東京に来ないと何も始まらないし何も起きないし、東京からじゃないと発信できないって思ってたんですよ。でもある程度ネットが浸透してくると、別に場所はもうどこでもいいなと思うようになりました。場所じゃなくて、自分自身がどう思うかとか、何に対してどう思うかの方が重要だなって。

シャンプーの件も「自分の中でどう答えるか」ととことん向き合って取り組んでいたら、めちゃくちゃ時間はかかりましたけどアイディアが降りてきたなと思います。アルミチューブのアイディアが降りてきた時は「これか!」って思いましたね(笑)。

糀屋:そのアウトプットにたどり着くまでに、情報を得るコツって何かありますか?

ドラゴンカッコ悪い言い方をすると、ミーハーなんですよ。ものすごくミーハーなんです。子供の頃から新しいものが出ると飛びついてましたし。いつも「HotDogPress」とか「Mono Magazine」とかを読んでて、常に「かわいいな」「欲しいな」って物欲がありましたし。でも今は物欲がさほどなくなってきたというか、「買う側」から「作る側」に回ってきて、「なんでこういうものがないんだろうな」っていうことの追求に思考が変わってきてますね。一般的な日用品とかでも、意外とバシッとハマるものってないんだなと感じたりしてます。

人を説得するために必要なのはエビデンス

糀屋:なるほど。今回みたいに誰もやったことないことに取り組んだりする時って、たぶん周りから「やめた方がいい」と言われることもあると思うんですが、どうやって制止を振り切るというか、自分を信じるようにしてるんですか。

ドラゴン:もちろん自分でも疑心暗鬼になることはあります。やっぱり最終的には紙に落とすんですよね。今回は親会社がいて、すでに製品として別のものもあったので、それを押し退けて新しいプロダクトに変えていくためには、わかりやすい説得材料、エビデンスが必要だったんです。説得する材料を揃えるために、例えば世間の脱プラの流れとかを知って、それをしっかり相手に伝えていかないとダメなんだなと感じてます。「僕はこう思う」だけじゃ無理。でもその説得材料を集める過程で自分も世の中のことを改めて知れるので、すごく勉強になってますね。

糀屋:今までの旧態依然とした価値ではなく、新しいことをする、前衛的なことに取り組むとなった時って、突拍子もなく突然何かが生まれるというわけじゃないと思うんです。伝統や文化が積み重なっていった先に生まれるというか……今までのものと「切断」されているわけではなく、「接続」した結果として生まれるんじゃないかな、というのが最近考えていることなんです。

蓄積された時間の上に今がある

今日お話をうかがって、やはり新しいものの裏には蓄積された美意識や価値観のようなものが絶対にあると思いました。僕たちはそういうところを掘り下げていくべきだし、会社としてそういった新しいものを作ろうとしている人たちに投資したり、手助けしていきたいと改めて思いました。ドラゴンさんのお話が今僕個人が考えていることと非常にフィットしていて、なんというか「集大成」みたいにも感じられました。

ドラゴン:ありがとうございます。光栄ですね。

「狂気」が道を開く

――「EVEREST」ブランドは現在、シャンプー、コンディショナー、ハンドクリームという商品ラインナップですが、これをきっかけにアパレルなどでも展開されたりなどは考えているんでしょうか?

ドラゴン:そうですね。今はまず体を洗う石鹸を作りたくて。とりあえず今日本中の石鹸を調べてて、沖縄の石鹸いいな……なんて思ったりしてます。

糀屋:すごい、また日本中の(笑)。めちゃくちゃこだわって突き詰めてますね。

ドラゴン:まあちょっとね、ほんとハマり始めるとそればっかりになっちゃうんで。他がおろそかになっちゃうんですけど(笑)。でもやっぱりとことんいくと、みんなが話を聞いてくれるようになるんですよ。言い方は悪いですけど、ちょっとおかしい人になった方がいいんです。「この人ちょっとおかしいな」って思われるぐらい狂っていかないと、やっぱり人を変えることができないんですよね。

「こいつ、おかしい」ぐらい突き詰める

これって音楽もそうなんですけど、「あーもうこの人、全然わけわかんない!!」みたいなの、あるじゃないですか(笑)。例えば僕が一番好きな忌野清志郎さんとか。彼が出てきた時は、万人に受ける声でもルックスでもなかった。今でこそ時代を超えたから「忌野清志郎」というアイデンティティが確立されてますけど、僕が中学生の頃なんて「化粧した赤いパンツ履いたピンクの靴下履いたおっさん」ですよ(笑)。「なんだこれ!?」って(笑)。僕は本当に清志郎さんからすごい刺激をいただいたんですけど、そういうことだと思うんですよ。

だからやっぱり人を説得するとか、何かを人に伝えるっていうのは、その世界の住人になって入り込んでいかないといけない。それが万人に受けるなんてことはなくて、100人いたらそのうちの10人が「いいね」「最高!」って言ってくれたらいい、って気持ちで取り組んでますね。

(聞き手・高橋ひでつう 執筆・撮影 藤井みさ)

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