SDGs×地方創生 ゼロイチなチャレンジの途中経過
実現したいこと
若者たちが社会に対して主体的に声を伝える(あげる)ことができ、それを社会が対等に扱う。それが実現されている社会。
これを小・中学生の学校教育と地方行政をSDGsでつなぐことで、仕組みとして作る。子供たちは、高校生、大学生と成長する過程で主体的に社会に関われることに気付きながら学ぶ。
noteを書く理由
このnoteでは、この取り組みを、2020年1月から開始して、形にするまでの記録として不定期に残しています。結果として、ゼロイチで社会に新しい仕組みを作る上での誰かの参考になることにつながればとも考えています。
再開
先日、毎日新聞からこの取り組みについて、取材を受けました。しばらく、記事が書けていなかったので、これを機に再会しようと思います。
前回の記事までで書いてきたこと
前回の記事までで、SDGsと地方創生、そして高校の地域学と絡めた新しい仕組み作りのことをゼロイチとして始めることを書いてきました。
まず、SDGsのカードゲームプログラム「X」のこと。
これは、金沢工業大学が作成したSDGsの本質をイノベーションという観点から学び、実践力をつけることができるとても汎用性が高いプログラムです。これを2020年1月(コロナ禍が始まるギリギリ)に金沢工業大学で学ばさせていただき、すぐに岡山での展開に取り組みました。その時のことは前の記事で書いているのでよければ見てみてください。
岡山での展開(オリジナルカードとプログラムの作成)
金沢工業大学でカードゲームXを教えていただいた後、2020年2月〜8月にかけて岡山版の作成を行いました。私は、環境教育事業を仕事として行っており、その中で岡山県行政と連携した業務を行なっています。環境教育は様々なテーマとそれに応じたプログラムがありますが、SDGsに関してはその重要性にも関わらず当時はまだまだ教育プログラムとしては少なく、環境教育との連携もされていませんでした。そこで、環境教育に必須な考え方と展開としてSDGsのことを伝えるプログラムをこのカードゲーム「X」を用いて作成することにしました。作成は、ちょうど会社に来ていたインターンの学生に手伝ってもらい、金沢工業大学が作成されていた内容を、岡山県の課題で新たに作り直すという形をとりました。オリジナルのカードは汎用性は高かったものの、その分、地域のことを学ぶ要素はどうしても少なく、また小学生が取り組むにも少々難しいところがありました。そこで、地域版の小学4年生から取り組めるものにアレンジを行なったという形です。大学生には、県のHPで公開されている報告書などの書類を元に17の目標に応じて課題を整理してもらい、それを元にカードの内容に転換をして作成しました。
ちなみに、第1版は2020年8月に完成したのですが、実は、それではまだ取り上げている課題が本当に芯を食っているか不十分だったので、一旦、仮で完成させて様々な方の意見もいただきながら、その1年後に更新をしています。更新は、県議の方の後押しもあり、今度は実際に県庁の各課に大学生がヒアリングする形で内容の精査と更新を行ないました(県の担当課が本当に困っている内容を反映させたというわけです)。
ゼロイチという面では、このようなアウトプットの信頼性、レベル感は重要ですがすぐに求めると動き出しが中々できません。私の場合は、”仮で作成、実践例を作る”→”出来るだけ他者の意見も聞きながら、同時にメディア等でも取り上げてもらい、意義を別の声で理解してもらえるようにする”→”それを元に協力者を見つけ、内容が仕組みとして定着できるように高めていく”という流れをとりました。大抵、トライアンドエラーの繰り返しです。少なくとも近道があるとしたら、それは”すぐ始めること”だと考えています。
出前授業や講演という形で小中学校、高校、企業等でプログラム実施
2020年8月からは、作成したSDGsプログラムを用いて、小中学校や高校、企業等で依頼に応じた出前授業を本格的に開始しました。依頼は、先に書いた岡山県の環境学習プログラムと連携して小中学校に案内を行なったこともあり、初年度で40件近い出張授業や講演を行うことになり、口コミやリピートで翌年度は更に増える状況にもなりました。
ちなみに、持続性は大変重要なので、その傍らで講師の養成を同時に進めました。ゼロイチの観点から言っても、誰かがいるからできるプログラムでは社会の仕組みにはならないことと、理解者、賛同者が増えることの意味は非常に大きいと言えます。
具体的には、環境学習の指導者の方や地域の先生でオピニオンリーダー的な方、そして大学生などの若者にも声掛けをしてプログラムを伝える機会を何度も開催をしたのですが、結果的に、今(2022年2月時点)では、約15名の方が講師として県内で活躍されています。そして、地域でのオリジナルな展開に繋がっているところもあり嬉しい形だなと思っています。
本当に実現したいこと
とはいえ、本当に実現したいことは、その先にあります。
冒頭に書いた
”若者たちが社会に対して主体的に声を伝える(あげる)ことができ、それを社会が年齢を理由にせずに対等に扱う。それが実現されている社会。これを小・中学生の学校教育と地方行政をSDGsでつなぐことで、仕組みとして作ること。その結果として子供たちが、高校生、大学生と成長する過程で主体的に社会に関われることに気付きながら学ぶ、そして社会を良くする仕組みが回るようになっていく”
ゼロイチとは、社会に新しいイチを作ることだけではないと思います。イチが育ち続けていくような仕組みが同時にあることが大切ではないでしょうか。そして、それが変革として新しい価値や課題解決、社会を少しでも良くすることにつながる必要があります。
2020年は主にそのベース作りでしたが、2021年は、いよいよ、上記の仕組みにチャレンジするため地方自治体との連携を模索し、実践を行なった1年になります。
『瀬戸内市との連携協定締結』
バーでの偶然の出会い
2021年になってすぐの頃(確か2月くらいだったと思います)、偶然行きつけのバーで知り合いと会います。知り合いは、別の人と来ていたのですが、ちょうどその頃、自治体と連携した仕組みの構想が頭にあって、どの自治体にアプローチをしようかと考えていたときでした。私は、その知り合いと話しながら、話の流れでその構想のことを話します。すると、知り合いと一緒に来ていた方が瀬戸内市の関係者で、それだったら瀬戸内市が良いかもしれない、と薦められます。実は、そのときまで瀬戸内市は頭になかったのですが、確かにこれまでの市の活動や考え方、大きさを考えてもぴったりといえます。そして、何よりピンと来たのは、ちょうどSDGsと地方創生に関する動き出しをしようとされていて、その担当者が思いのある方だということでした。
再会
ピンと来た私は、翌日すぐに知り合いから担当者を紹介してもらいます。
そして、すぐに連絡をとるのですが、実は、この時に紹介してもらった市の担当の方、10年くらい前に自分が開催していた勉強会に参加してくれていた方でした。しかも、お互いによく覚えているし、向こうもその後の私のNPOの活動は知っていてくださっていて私個人への信頼もあります。何だか、運命を感じた瞬間でもありました。(電話で話しながら随分とテンションが上がっていたと思います)
結果論ですが、ゼロイチが生まれる要素には、人との繋がりや出会いはとても重要なファクターだと思います。そして、それを掴むための日々の行動や積み重ねも大切だとも思います。
打ち合わせと連携協定
さて、瀬戸内市さんへの提案ですが、電話でアポを取り、すぐに打ち合わせに行きます。簡単な概要図を作成し、具体的に何を目指し、何をするのか、そのためにどのような関係者が必要かを話しながら、同時に一緒にビジョンを明確にしながら共有していきます。ここも運がよかったというか、市の担当者の方は、先を見て内容を一緒に考えられ、理解を深めていかれる方だったので、もうその場でお互いに何をするべきかが見えて来ます。
お互いに組織に属している人間だけど、個として主体的に考え、組織と繋げ、未来の価値創造に思いを馳せられる。こういう人との打ち合わせは本当に早く、そして濃密です。(このゼロイチが形になるとしたら、この出会いの運は必要不可欠だったと言えるかもしれません。ちなみに、余談ですが、打ち合わせ後に市長と偶然廊下で出会い、NPOの活動を通じてお会いしていたので簡単な会話をしながら、打ち合わせで来ていたこと、これからの展開のお願いも一緒にしたという一幕もありました。)
打ち合わせの結果、お互いに組織の事業として進めることに決まりましたので、すぐに組織同士の連携協定締結を進めていきました。(これが2021年3月のことです)
2021年7月19日 連携協定の締結
着々と準備を進め、その年の7月19日に私の属する公益財団法人岡山県環境保全事業団と瀬戸内市は、SDGs推進に関する以下の事項について連携協定を締結しました。
(1)教育や人材育成に関すること
(2)地方創生SDGsの推進に関すること
(3)SDGsの普及・啓発に関すること
(4)その他、持続可能な地域社会の実現に関すること
地元新聞にも取り上げてもらい、いよいよ理想に向けて具体的なチャレンジが始まりました。
地元高校(岡山県立邑久高等学校)との連携
上記の瀬戸内市の担当者の方との最初の打ち合わせは、2021年3月22日でした。そこで、連携協定のこと、今後の連携先のことを確認したのですが、翌月の4月9日には、もう関係者を巻き込んだ打ち合わせをしていました。
参加者は、私の上司と市の上の方、そして教育委員会の方(市小中学校も関わるため)と地元高校の地域学を担当する教員の方(高校生を主体とするため)、これらの方が一同に会し、事業のビジョン、ミッション、お互いの役割、スケジュールなどを打ち合わせし確認しました。チャレンジのキックオフの場だったと思います。
チャレンジの全体像
瀬戸内市さんとのチャレンジはコロナ禍の中ではありましたが、具体的に形になって今を迎えています。それらの具体的なことは、次の記事で書いていこうと思います。
ちなみに、チャレンジの簡単な全体像は、次のような内容です。
・瀬戸内市の課題や魅力をベースにしたオリジナルのSDGsカードを作成
・作成するのは、地元の高校生が地域探求学の授業として取り組む
・私はその作成のサポートを行うと共に、作成したカードを用いて小中学校で行うSDGs授業のプログラムを作成する
・高校生は、聞き書きという地域学のプログラムを活用して市役所の方にヒアリングを行い、課題や魅力を理解する。それをカードに置き換えていく。デザインも内容も高校生が考える(私は最低限のサポート)
・市は総合計画をベースにしながら各課の担当者がヒアリングに協力する
・市教育委員会は、作成されたカードを用いた出前授業の募集を市内の小中学校に行う
・高校生は授業プログラムを習得し、応募のあった小中学校で出前授業を行う
・小・中学生は授業プログラムの中で、市の課題や魅力を真剣に考え、その解決アイデアをイノベーションの視点で創出する。
・出されたアイデアは、市に応募できる仕組みを作り、良いアイデアは市の施策に反映されていく
・これらを通年で行い、翌年もカードのブラッシュアップと出前授業を高校生が地域学の一環で授業として行い、小・中学生は参加者側から実践側になる過程で地域への理解と主体的な関わり意識を深めていく
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