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等身大の幸せを噛みしめながら、ありのままに生きる、大子町での暮らし

0. LOCALBOOSTERとは

LOCALBOOSTER」は地域でチャレンジしたいひとを応援し、つなげるサイトです。

このサイトを、また、この記事を見ている人の中には移住希望者も多いと思いますが、移住先に期待するものは何でしょう。表立った活動をしているUターン・Iターン者として生きること?はたまた、非日常な体験?
ここ、大子町で叶えられることは、いたって普通の「日常」を過ごすこと。
目を覚まし、仕事に行っては、その仕事もそこそこに、地元で採れたものを仲間と食べ、笑い合う。派手ではないけれど、忙しくも愛しい日常をここ大子で長らく積み重ねているのが、今回ご紹介する中野一徳さんです。

優しい人々と自然に囲まれた、等身大のキャリアと生活を送る、中野さんのストーリーをご覧ください。

今回は、LOCALBOOSTERのインタビュアーとして協力してくださった合同会社イナヅマ代表の新妻幹生さんとCoelacanth代表の佐藤の二人でお話を伺いました。

1.「釣り竿放して外に出ろ!」 
地元の釣り好き少年が東京で社会人に。

インタビューを実施したのは大子町にある中野さんのご自宅。
「準備できてるよ~」というメッセージが入ったものの、そもそも準備ってなんだ……、と思いながら取材班が向かうと……。

お祭りの露店でしか見たことがないような規模感

鮎の塩焼き、お肉、お酒……。豪華な料理の数々。まるで親戚の家に遊びに来たような、既に暖かい空気に包まれる中、インタビューはスタートしました。

ー 中野さん自身もUターン勢ということですが、一度大子町を離れて、帰ってくるまでのお話を聞かせてください。

なにも意志を持って離れようとしたんじゃないよ。なんならずっと公務員を目指していたしね。生まれも育ちも大子町だった私は、父の影響を受けてドップリ鮎釣りにハマる、ごくごく普通の(?)田舎の少年だった。
実家から久慈川が本当に近くてね、家の2階から釣り糸を垂らせば釣れるんじゃないか、って言われていたくらい。
中学校時代、高校進学の進路選択の時も先生に『釣竿放せ! 外に出ろ!』なんて言われたけど、やっぱり無理だった。

ー 中野少年がそこまで地元にこだわっていた理由って、何かあるんですか?

これまたありふれた理由なんだけど、私にとってプライオリティの高かった要素って「生活の安定」で、それを求められるのが公務員だと思っていたからかな。
大学生になった自分の子どもを見ていると余計に思うけど、今の子どもたちは色々な可能性にあふれてキラキラしてるもんね。

ー 確かに高校生くらいだと、そんなに生活圏の外の範囲まで見て・考える機会ってないですよね。

うん。でもまあ、結局落ちちゃったんです。
そこで入社したのが東京のIT関係の会社でした。
安定志向は変わらなかったから、当時、進路指導室にきていた 求人の中で最も給料が高かったところを選んだんです。

インタビューの合間合間に、美味しいものを勧められる。

2.リベンジの機会は年1回の地元の飲み会!大子町役場の職員になるまで。

ー そうだったんですね。そんな中野さんが大子に戻り、町役場に入庁されたキッカケはなんだったのででしょうか?

年に1回くらいはこっち(大子)の仲間と飲むために帰省していたんだけど、実はそのタイミングで役場を受験してた(笑)。だからって別に試験勉強なんてのは全然してなくて。でも、ある年たまたま試験に受かったんだよねえ。

ー ええっ! 当時は「公務員至上主義」的な時代だったので倍率も高かったんじゃないですか? 運、持ってますね~。

3.「いなかぐらし」を応援したい!企画観光課で出会った十人十色の人々を通して広がった視野。

ー そんなこんなで念願の大子町役場に入庁した中野さん、特に印象に残っている部署はありますか?

それはやっぱり企画課(現:まちづくり課)かな~。もう35年くらい前の話になるけどね。その当時、「いなかぐらし」とか「二地域居住」とかってワードが少しずつ流行してきた頃だった。そして、そういう最先端なものに興味のある人が増えてきた時代だったな。例えば、バラが大好きでバラ園を開いてしまった方……とかね。他にも、書道家、陶芸家とか、言ってしまえば職人気質な人が多かったです。

ー おお……(笑)。
そのような移住希望者たちとコミュニケーションをとられていた思い出っていうのは、確かに印象深いですよね。

そうそう。
そんな独自の価値観で生きてきた人たちをコーディネートする大変さはもちろんあったんだけど、一方で、そういう人たちと接していると学びも多かったし、何より、自分を持って生活している人たちは皆キラキラして見えた。

4.本当に大切にしたいものは何?心のまま、ストレスフリーな生活スタイルへ。

ー パッと見た感覚でものを言って恐縮ですが、今の中野さんは、その移住希望者さんたちのように、自分らしく・何にもとらわれず、のびのびと生きているように感じられますよ。

そうだね。
今までの経験全てが今の自分を形成してくれているんだと思うんだ。
例えば、東京の苦しくって・楽しくって・危なくって……な生活からは、「チャレンジすることを恐れない精神」を身につけられた。
たまたま戻ってこられて実現している今の地元暮らしからは、月並みだけど「仲間がいること」と「時間があること」が自分にとって大切なんだって再認識させられる。
そして、さっき話したように、色々な人に接して知見が広がったことで、仕事もかなりクリエイティブな思考をもって取り組めるようになった。それまで会社って、中でも特に公務員って、「雇われる」ものだと思ってたし、もともとはTHE・A型の慎重な性格だったんだけど、自分次第でやってやれないことはないんだって気づかされてからは、公私ともに充実していますね。

仕事もそこそこに切り上げて、大好きな仲間と、地元で採れたものを食べたり飲んだりして語らう時間が何より大切と語る中野さん。

5.厳しい環境と豊かな自然の中で生まれた「すぐれもの」を届けたい。

ー そんな「クリエイティブ精神」を持って現在取り組まれている、大子町特産品流通公社(グランだいご)での仕事の内容について教えてください。

大子で生まれた優れた特産品をより多くの方に知っていただき、販売・コラボレーションを推進するために当公社は設立されました。
生産者のみなさんとのコミュニケーションを深め、よりよい商品を創り出すお手伝いもしています。
大子のいいもの欲しいよ!とすでに思っている人にはもちろん、私たち目線で「こんな人に届いたらいいな」と思う層にも届くように、日々さまざまな仕掛けをしています。
生産者さんと消費者だけじゃなく、生産者さんどうしをつないで化学反応を起こしていくのも楽しいですよ。

6.これからも、シンプルに生きる。 - ただ、目の前の人を幸せしたい -

ー ここまでたくさんのお話を聞かせていただきありがとうございました。最後に中野さんに、公私それぞれの今後の展望(野望。笑)をお聞かせいただければと思います。

そうだね~。
役場での目標で言ったら「なんでもやる課」をつくりたい。究極のワンストップサービスの提供だね。今は若くてスキルのある人もたくさん入ってくれるようになった。でも、オールマイティーじゃないんだよね。「生産性」とか「効率性」を大事にするようになってからは、「シンプルに目の前の人を幸せにするには?」って、ちょっと泥臭く、おせっかいに物事を考える文化が薄れてきちゃった気がするんだよね。

ー 言い方を選ばず言えば、「言われたことはできるけど…」って感じですね。

うんうん。
これまでにある程度の部門は経験してきたからこそさ、今の自分だったら、とにかく目の前のお困りごとを一緒くたに引き受けて、幸せにできるんじゃないかって思うんだ。
もちろん自分ひとりでは解決できないお困りごともたくさんあると思うけど、その時には頼れる仲間がいるからね。

それでね、プライベートでは、もっとたくさん休みをもらって家族と旅行したり色々なところを巡りたい。夢は日本一周! 趣味でやっているアユ釣りも全国大会があるんだよ。もう一回出場してみたいな。まだまだ知らないことだらけだから、各地に足を運んで、人と出会って、知見を広げたいな。
例えばアユ文化一つとっても西日本と東日本では相当違うんだよ。この辺だとアユの塩焼きは1匹、400円ぐらいなのに、西のほうはアユ釣りが盛んなもんだから1匹、1,400円もするんだ。びっくりして値段表写メを撮ってきたよ。
同じ日本でもこれだけ文化が違うなんて、知れば知るほど人生って楽しく、面白くなると思うんだよね。

【インタビューを終えて】
そう語る中野さんは、明らかにごきげんな様子。今の自分の暮らしに心から満足しているからこそ、周りの人にも「幸せのおすそ分け」をする余裕と慈愛にあふれているのだと感じました。

「いっぱい焼いたから食べて!」
インタビュー中、ごく自然に生まれるご近所さんとのやり取り。
今ではそう多く見かけなくなったあたたかい交流を目の当たりにしました。一長一短かもしれないけど、いい意味で家と家の距離が近く、境界線があいまいだからこそ、全員が自分の敷地内だと思って気軽に声を掛けられるのかもしれません。

中野さんの生活ぶりや周囲の人と接するようすを眺めていると、昨今の日本で自然を満喫するキャンプが人気になっているのは、その先にあるこういう「人とのつながりがもたらすあたたかさ」を求めているんだろうなと、ふと感じました。

中野さんのように「丁寧に、自分らしく暮らす」という言葉には、生きることそれ自体を大切にしている、やさしいイメージがあります。
しかし、そのような生活をすべて全て実践するのは難しい。どうしても隣の芝生は青く見えるし、実生活とのギャップに苦しむ方も多いのでは。
それでも、人生やっぱり短いようで長いので、「理想の暮らし」を追い求めることは必要な作業だと思います。そのためには、まず「理想を描くこと」がスタートとなります。

ここまでの言葉にピンとくるものがあった方。自身が大切にしたいモノやコトに囲まれながら、心のままに生きる中野さんの生きざまに触れてみることで、ご自身の人生を見つめ直してみるのはいかがでしょうか。

ぜひ、大子のきもちのよい清流で、鮎釣りをしながら、思いを巡らせてみてください。

中野さんの鮎釣り体験はこちらから
▶︎ https://oarai-coelacanth.com/dive_local/dive-daigo-2

中野一徳さん プロフィール
私は、久慈川のほとりで産まれ、久慈川のほとりで育ち、子守歌は久慈川のせせらぎだった。大人になって、ようやく、鮎と話せるようになってきたかな?
茨城県大子町は自然いっぱいのゆとり空間です。是非、一日、のんびりと久慈川の鮎釣りに挑戦してみませんか。

取材・編集:新妻 幹生
写真:佐藤 穂奈美・竹中 郁人

LOCALBOOSTERでは、茨城への移住相談、起業相談、空き家活用相談も行っています。ご希望の方は、下記サイトよりお気軽にご連絡ください。


筆者プロフィール
新妻 幹生(にいつま もとみ)
合同会社イナヅマ 代表社員。1993年11月、茨城県北茨城市生まれ。リクルートグループ会社で企画営業・経営企画の経験を経て、教育機関の広報活動に興味を持ったことから2021年にUターン。伝わるように伝える「伝え方」教育と、発信力不足の個人や事業者を助け、地域の発信力向上・地域活性化に寄与するための活動を行う。それら活動の一環で、共同代表との早稲田隆司との縁があり、2023年3月に合同会社イナヅマを設立。

運営会社:株式会社Coelacanth


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