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夫の三歩後ろを歩いていた由佳理さんが、伝統工芸、桐の新ブランドを立ち上げるまでのストーリー
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夫の三歩後ろを歩いていた由佳理さんが、伝統工芸、桐の新ブランドを立ち上げるまでのストーリー

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この記事では「桐工芸」という分野で新ブランドを立ち上げた高安桐工芸の由佳理さんの現在に至るまでの等身大のストーリーをお届けします。

由佳理さんは70年続く桐屋の三代目に嫁いだことをきっかけに、20代で広島から茨城に単身移住。その後、伝統工芸士の認定を受けた職人の技術と、自身のアイデアで新しい桐の日用品のプロダクト開発も手がけています。2021年3月オープン予定の新店舗「LESS is MORE」の全面プロデュースもされています。

今回は、LOCALBOOSTER石岡コーディネーターの高橋真希さんと代表の佐藤の二人でお話を伺いました。

1. 20代、北海道で森林生態の勉強へ

インタビューを実施したのは石岡市にある高安桐工芸さんの新ブランド「LESS is MORE」の新店舗。石岡駅から車で10分ほどの分かりやすい場所にあります。
車を降りると目に入るのは、木の温もりがつたわるかわいらしいお店。なんと、ここは由佳理さん自身がハーフビルドで作ったお店だそうです。

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店内に一歩入ると微かに木のいい香り。まな板、コースター、はたまた米櫃までさまざまな桐の商品が並んでいます。

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早速、由佳理さんに新店舗について伺ってみました。

− この店舗をご自身でハーフビルドしたというのは、すごく大変ではなかったですか?

「すごーく大変でした。大変すぎて、もう2回はやらないです」

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笑いながら話す由佳理さん。
とはいえ、ハーフビルドもしてしまうし、桐工芸のプロダクト開発もしているということは昔からものづくりがすきだったのでしょうか。

「たしかに、昔から変な子だったかも。秘密基地つくったり、たたみのへりとか捨ててあったら、燃やしたらどうなるんだろうとか思ったり。今思えばそれも活かされているのかもしれませんね笑」

− その頃からものづくりに携わりたいと?

「全然! なんとなく20代の頃、森林生態みたいな本を読んで、北海道の自然を勉強したい! と北海道の学校へ。丹頂鶴の調査の手伝いなんかをしてました」

「ゼミで道内を巡ったり、仲間と楽しく遊んだり。そんな中で今の夫に出会ったんです。
卒業後、いったん故郷の広島に戻るんですが、若い時って真っ直ぐだからすぐに結婚して、縁も所縁もない茨城に単身移住。
けれど、結婚当初は私の体調もあまりよくなくて、そんな中で子どもも生まれて、本当に大変で、今思うと無理ばっかりしていたなあと思います。
今より経験も少ないからあの頃はいつも必死で『こうしないといけない!』みたいな呪縛のようなものがありましたね」

2. 想いがあるからぶつかる。大切だから悩む。新ブランド立ち上げを決意するまで

− そのような状況で新ブランドを立ち上げるというのはすごいことですよね。何がきっかけだったんでしょう?

「実は、何が、というはっきりしたきっかけがあるわけじゃないんです。実は私、夫の三歩後ろを歩くような主婦だったんです。
旦那さんについていけば家も建ててもらって、楽しく暮らせると思ってた。
でも、何年経っても生活があまり良くならない。嫁いだ先は伝統的な桐屋さんだった訳ですが、今では嫁入り道具に桐箪笥は持っていかないし、陶芸品だってすごくたくさん売れるわけじゃない。だから、売り上げもそんなに伸びないんです。
そんな状況で旦那からはごめんね。ごめんねといわれる。このままじゃあ、死ぬ前にも絶対ごめんねと言われると思ったんですよね。けれど、離れるとかではなくて二人で一緒にいたい。
だから、『よし! まずは旦那以上に稼いでやろう!』って思ったんです。自分の環境を変えたい! と思ったのが本当のはじまりでした。」

− そこからは順調に進んでいったんですか?

「いえ、困難の連続でした。やっぱり私が新ブランドの準備を始めたときに、義理の父は複雑な心境だったみたいです。だって、自分たちは家業として伝統的な桐工芸一本でやっていこうと、想いを持って取り組んでいた訳ですから」

「夫も自分の妻と自分の家族との間で、彼自身もとても辛い時期だったと思います」

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− たしかに、桐工芸に誇りを持っているお父さん。そして、高安桐工芸を盛り上げたい、家族ともっと一緒にいたいと頑張る由佳理さん、そして、大切な人同士だから割り切れない旦那さん。みんな想いがあって、大切な人同士だからこそとても苦しかったんですね。

「そうなんです。だから、すごく苦しかったんだけど、みんないやなことをしたいわけではないし、やっぱり心の奥底で『いつか分かってもらえる』という気持ちがあったからこそ頑張れたのだと思います」

「自分を殺して合わせすぎても、自分が死んじゃう。誰かに合わせれば、一見平和になる。みんなにとってよりよい在り方を本当に真剣に考えていた時期でした」

3. 自分がぐっときたものを届けたい。全部、自分で切り開いたブランド展開

家族で大変な時期を乗り越えつつ、由佳理さんのプロダクト開発は続いていきました。

「LESS is MOREって、少ないものがより豊かにという意味でつけたんです。いいものを、ずっと使ってもらえるように。最初に開発したプロダクトはまな板でした。
ある時、桐を手に取ったらなんて軽いんだろう、と感動して。やっぱり、自分がぐっときたものを届けたいじゃないですか。そうじゃないと説得力がないですし」

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「桐ってすごくいいんです。削り直してまた使えるし。まな板は最終的に、ランチョンマットにまでできるんです。人によっては『そこまで』という反応もあるんですけど、単純にいいものは長く使いたいじゃないですか」

由佳理さんはときに「自分が家族を支えるんだ!」というような凄まじいエネルギーがある一方で自分のすきなものに対する愛情の深さというのが、桐に関しての言葉の端々に感じられます。実行力とやわらかさ、そして愛情深さ。その絶妙なバランス。

「まな板も最初は自分で売り込みをしたんですよね。プロダクトの開発も、ディレクションも、全部自分でやりました。販路もひとつひとつ切り拓いた。飛び込み営業もしたし。本当にあの頃は無我夢中でした」

4. いくら見ても飽きなかった、桐の美しさ

− 最初に、桐の魅力に気がついたきっかけはなんだったんでしょう?

「結婚したときに、彼がつくったものを見て『本当にきれいだなあ』と思ったんです。いくら見ても、飽きなかった。彼がつくるものを、何回見てもきれいだなと感じました。もしかしたら、桐じゃなくてもよかったのかもしれない。でも、たまたま、桐を綺麗だと思えた」

「人生ってたまたまそこにいて、そこに感動したこと、それに心が動かされたこと。そういうことってあるじゃないですか。だから、その環境で巡り会えたことを大事にしたいんですよね」

「だから、明確に桐をすきになった『これ』というきっかけってないんです。すきなものって、理屈でこうだからっていうのはあまりない。
私は化学的なものよりも、どちらかというと木の方がすきで、生活の中にたまたま桐があって、それに感動したから。そして、そのいいものを長くリメイクして使えるのだから使いたい。感情でしかないんです。
それはもちろん、桐の素晴らしい特性はたくさんあります。でも、根底はそういう感情なんです」

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− では、由佳理さんの人生のターニングポイントをあげるとすれば、やはり旦那さんとの出会いでしょうか。

「そうですね。旦那さんとの出会い。そして、彼の作る桐に感動したことです」

5. 移住して感じた戸惑い、そして、新ブランドがもたらした変化

由佳理さんの出身は広島。やはり、広島と茨城の地域性の違いを感じ、最初は苦労が多かったそう。
そんな中で家族と伝統工芸と真剣に向き合いながら、新しいプロダクト開発を進め、今ではお父さんも旦那さんもお客様から「すごくいい商品でした! ありがとう!」と言われると、すごく笑顔になってくれるそうです。

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6. ひとつひとつを余すところなく。ひとりひとりを大事に。

「実は私、ひとと話すのが大好きなんです。
でも、プロダクトをつくる作業は黙ってやるし、基本は孤独。お客様とのやりとりも商品の説明が多いので、なかなか深いつながりにはなりにくい状況でした」

− でも、以前由佳理さんが企画したイベントにはたくさんの作家さんが出展していましたよね?

「そうですね。元々ひととつながりたい気持ちはとてもあるので、自分の好きな方に思い切って声をかけたり、自分だけではなく父や旦那のつながりがあったから出てくれたひともいました」

由佳理さんと数年来の付き合いの石岡コーディネーターの高橋さん。高橋さんから見た由佳理さんはどんな人なのでしょうか。

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「由佳理さんは、ひとりの人との付き合いをすごく大事にするんですよね。
ひとつのつながりをとても大事にするからそれが次につながる。関係性を大切にしてくれるひとってイメージがあります」

「たしかに、たくさんの人ととにかくつながる、みたいなことは苦手かもしれないですね。それはLESS is MOREにもつながるのかもしれません。ひとも、ものも、余すところなく、そして大切に」

「高安さんと他社さんのコラボみたいなこともありますよね」

「そうですね、自分が熱量を持っていると、不思議と同じように熱量をもったひとと出会えて、いい企画をつくれたりすることがあります」

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たしかに、お話を伺っていると熱の連鎖。
私(佐藤)が由佳理さんと出会えたきっかけも、コーディネーターの高橋さんでした。由佳理さんの想いが高橋さんに伝わって、それがさらに出会いを連れてきて。
花火のような一瞬の華やかさではなく、じわじわ、じわじわと、温泉の熱のように、由佳理さんの熱は、小さな変化を絶え間なく作っていると感じます。

由佳理さんのたいせつなひととの関係性を真剣に考える気持ち、そして、自分が感動したものを届けたいというシンプルな想い。
移住して大変なことがたくさんあっても、由佳理さんの原動力は自分の周りに対するたくさんの愛情深いきもちが原動力だから、LESS is MOREの商品はいいものでありながら、日常にすっと溶け込み、使い手の手に馴染むような自然な柔らかさがあるのかもしれません。

そんな由佳理さんのプロダクトづくりの一端に触れながら、ぜひ石岡で桐のリース作り体験をしてみるのはいかがでしょうか。

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由佳理さんの桐のリース作り体験はこちらから

取材・編集:佐藤 穂奈美
写真:安藤“アン”誠起、高橋 真希

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