【マイナカード】デメリット徹底解説
こんにちは。地方自立ラボ(@LocaLabo)です。
私たちの住んでいる国は、国家としてとらえることも大切なのですが、本来は私たちの住んでいる「この町」「この地域」の集まりである、ということがもっと大事だということです。私たちが幸せに暮らすらために、国が住みよい場所になるためには、住民として住んでいる「地方」こそが住みよく豊かな町であってほしい、そんな願いを込めて書いています。
本日は、この度国会で審議されることになった「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案」、いわゆるマイナンバー法改正案について考えてみたいと思います。
(本稿で対象とするものは2023年第211通常国会で提出されたものです)
【マイナンバー法について】
文字通り「マイナンバー」の基となる法律です。マイナンバーカードは2016年より交付が始まりました。しかし、政府の思惑にかなわずあまり浸透せず、4年後の2020年時点の発行枚数はたったの2千万枚。しかし、マイナポイント事業などのバラマキ政策によって、2021年末には約5千万枚、2022年末には8千万枚と急速に交付枚数が増大しました。すでに国民の2/3の手に渡ったことになります。そして2023年には最後の追い込みとばかり、アニメとのコラボレーションでどこまで増えるか、注目する政府の視線は相当熱くなっていることでしょう。
マイナンバー制度設計の基本は「行政手続きにおいて、公平な給付と負担の実現を図り、真に社会保障を必要とする方に積極的に手を差し伸べるとともに役所の業務改革が進むことによって、住民サービスの向上が期待されている」という点にあります。
(『マイナンバーハンドブック 平成31年』 個人情報保護委員会制作)
その後2021年のデジタル庁発足を受け、所管官庁が総務省からデジタル庁へと移管されました。野党により「国民総背番号制」と揶揄された結果、導入が相当遅れた感のある個人番号制度はデジタル庁の設置により、飛躍的に進められていくことになります。日本の電子行政は海外と比べて20年遅いとも言われています。この点で、マイナンバー制度が普及・発展していくことは国民にとって利益の多いものであってほしいですが、実態はどうなのでしょうか。
そもそもカードは必要か?
SPY×FAMILYとデジタル庁のコラボレーションサイトを見てみましょう。
メリットは3つあるとしています。
1. 公金受取口座の登録
2. 健康保険証として使える
3. オンラインを利用した各種申請、届出
当ブログ管理人もマイナンバーカードは普段利用していますが、コンビニで住民票が取れたり、確定申告がネットでできたりするのは大変便利だと思っています。しかし実際の手続きの流れで考えてみると、果たしてカードが必要なのかが疑問です。
銀行振り込みをスマホを使って行うことを考えてみましょう。本人確認を必要とするときに、ICチップを読み取る操作が必要でしょうか?通常はオンライン振り込みをする際には銀行ごとに仕組みは違いますが、定められた番号とパスワード、または2段階認証などの番号、記号を使えば本人確認が正しくされたこととして、振込みが実行できますよね。
それと同じで、マイナンバーを使用して個人を認証する際にはマイナポータルアプリと「個人番号」と「暗証番号」さえあれば事足りるような気がします。つまりICチップを読み取るために「カード」が必要なのはスマホを使った個人確認をする際にICチップがないとできないようにしてあるからだとしか思えません。
さらにICチップ内の証明書データ更新は5年に一度、写真の更新は10年に一度必要になります。有効期限通知書がJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)から封書で届きます。その後有効期限内に役所の窓口で更新手続きしないといけません。カードの更新手続きは無料ですが(紛失の場合は自己負担)それは継続的に巨額の税金が使われることを意味します。
実際、共通番号制度を導入している各国でも、カード式の国は少ないようです。デンマークでは、カード式は手続きの煩雑さや費用の面から断念したそうですが、共通番号とは異なる別のIDを使用しセキュリティを担保した上で、カードなしで行政サービスを提供しています。韓国ではカードはあるものの紛失が多く多額の費用がかかってしまったことを受け、カードがなくても良い仕組みが整っているようです。イギリスでも一度は番号カードの導入が決まったものの、プライバシーや費用の問題から10年に法律が廃止されているとのこと。
マイナンバー制度を運用するにあたり、日本政府がカード制を採用したからカードがないとダメな仕組みになっているだけと言えます。アニメキャラを使い「マイナンバーカードの魅力を伝えよ」などと宣伝していますが、他国のシンプルな制度を見れば、日本のマイナンバーカードは不要な機能がたくさんついた高級家電のようなものであることがわかります。
マイナンバー法の改正について
この度国会で審議されることになった改正案についてみてみましょう。
これらを見ていただいて分かるように、マイナンバーをさまざまなシーンで利用できるようにすることでカードにいろんな機能を追加する、ということがメインとなっています。先に紹介した『マイナンバーガイドブック』では社会保障と行政事務の簡素化がメインであったはずなのですが、より広範囲な手続きで利用できるということになります。今回の改正法案に関しては実に20種類ほどの関連法の一部を改正することになっています。
まず、理容師、美容師、小型船舶、建築士などの国家資格関連事務、自動車登録事務、外国人の行政手続きでのマイナンバーの利用を可能にすること。また海外在住者のマイナンバーカードの交付等はこれまで一旦帰国してする必要があったのを、在外公館で交付可能にすること。図書館での貸し出しなどの、暗証番号入力なしでも利用できる用途の拡大。従来の健康保険証を廃止してマイナンバーカードと健康保険証を一体化させること。既存の年金受取りや児童手当の受け取り口座を、手続きせずにマイナンバー口座として登録可能にする。など、利用拡大の促進を目指していることがわかります。
上記内容を改正案の「理由」から見てみましょう。
『改正案理由』には具体的に触れられていないのですが、改正案要綱を確認すると、ひとつ便利な内容もありましたので、ご紹介します。
として、市役所などと郵便局をつないだネットワーク上において定められた方法で「本人確認の措置を行う場合における当該本人確認の措置に係る書面の受付及び個人番号カードの交付の申請をしたものが当該本人確認の措置を受けるために必要な連絡その他の事務」ができるようになりました。これは郵便局で本人確認ができるという意味で、居住地域の市役所や支所などが遠くても、近くに郵便局(とは言ってもおそらく特定の郵便局)があれば郵便局で受け取ることができるという意味だと思われます。マイナンバーカードの受け取り窓口を増やすということですね。しかしマイナポイントが2023年5月まで延長されたといっても交付率はすでに7割を超えており、郵便局で受け取れるまでには1年以上はかかりますから、時すでに遅しと言えるでしょう。
これら改正案は、今国会で同時に提出された『デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案』と関連しますが、従来の記録媒体による申請等のオンライン化に伴い、当然改正されるべき内容であると考えます。今後行政サービスは、紙はやめて全てオンライン化できるようお願いしたいです。
マイナンバーは危険なのか?
マイナンバー的なものは企業にもあります。法人マイナンバーと言われていますが、これは国税庁の法人番号公表サイトで公開されており、インターネットで検索するとすぐに調べられます。どんな用途で使っているのか、具体的には知らないのですが、以前所属していた企業で「GビズID」というサービスで利用したことを覚えています。GビズIDは、ひとつのアカウントで複数の行政サービスを利用できる認証システムで、補助金申請や輸出証明書など、申請できる行政サービスは多岐に渡り、GビズIDはかなり申請手続きが便利になった印象がありました。
しかし、個人のマイナンバーはどうでしょうか。制度開始当初からかなり秘匿性の高い情報として取り扱うようにされていましたよね。厳重に管理しなくてはならないとされて、企業内でもマイナンバーを金庫に保管しているところもあるでしょう。しかし個人番号だけが他人に知られたとしても危険性はないと河野大臣も自身のブログに書かれています。そういったことを含め、諸外国ではどのように利用されているのでしょうか。
マイナンバー制度がうまく機能している国としてスウェーデンの例をご紹介します。
スウェーデンは社会保障世界一と呼ばれています。氏名や住所といった基本的な個人情報の他にもクレジットカード情報や家族の所得・資産といった様々なことが管理されているにも関わらず、適切に機能している点は注目に値します。
スウェーデンの個人番号制は、Personal Identification Number:PINと呼ばれています。例えば、子供が生まれたタイミングで、病院は国税庁にそのことを知らせる義務があり、国税庁はその申告を受けて、PINを新生児に付与します。そうすると児童手当が親の申請がなくても自動的に支給されるというような具合です。
日本では申請しない限り、給付されないようなものでも、全てを番号で管理しているために自動的に行政がプッシュ型で行政サービスを提供することができるわけです。また税金に関しても、日本では確定申告は申告者が全ての書類を提出しなければならないですが、スウェーデンの場合は個人の収入に関するデータをすべて国が把握しているために、国が作成した確定申告の書類が届き、その書類を確認して、サインをするだけで確定申告が済んでしまいます。この方式をプレプリント方式と思います。
これは情報の透明性が高い社会だからこそ実現する制度といえるでしょう。
さらにエストニアという国のマイナンバー制度を紹介しましょう。こちらは日本と同じくカードを使用します。エストニアは資源が少なく、人口も少ない少子高齢化の危機を迎えた国でした。1990年代に国がICTでエストニアを強くしていくという戦略を立て、その時期から電子政府の構想がスタートしました。現在では官民両方合わせて3000に近いサービスがIDに紐付けて提供されています。
例えば日本だと運転中に所持することが必要な免許証も、エストニアではIDカードがあれば、そのカード番号をもとに警察がカードリーダーでデータベースに接続して、運転免許証の有無を確認することができます。
また病院で薬をもらった場合は、日本ではお薬手帳に薬の履歴を貼っていきますが、この情報もすべてIDカードに統合されています。
その他に、店舗で購入した商品に対するポイントなども、IDカードに統合されるため、それぞれの店舗ごとのポイントカードを持つ必要がありません。ネットバンキングの利用も可能ですし、同じヨーロッパ内ではパスポートの役割も果たします。
それだけ国が情報管理しているので、信用のあるカードということですね。
日本のマイナンバーカード制度はどうやら、エストニアを参考に作られていると感じます。
しかし、エストニアではIDは公開式。スウェーデンも番号自体は生年月日と性別、出生地、確認番号というだけの情報なので、番号自体には整理番号程度の意味しかないとのことです。つまり、マイナンバー自体はあるひとつのキーであり、それに別の情報を組み合わせることで各種サービスが完結できるという仕組みとなっているようです。
今回のマイナンバー法改正では、個人番号はさまざまなサービスと連携していくように変更されています。従って、個人番号の秘匿性は薄くなり、カードとICチップのアプリを使って各種サービスと連携するためのキーとなる番号として機能するということだと思われます。
それであれば、日本のマイナンバーも個人番号と暗証番号を本人が把握していれば良いのではないでしょうか?先に述べました、カードは必要か?の話の続きになりますが、これまで「マイナンバーカード予算に2兆円超」が費やされています。2014年3月、マイナンバー制度を支えるネットワークシステムの設計、開発業務はNTTコムを代表とする、NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所のコンソーシアムだけが入札されていました(約114億円)。番号を生成するシステムには約70億円がかかっています。このシステムだけではなく、マイナンバー制度には様々な情報システムの開発が必要になってきます。個人番号は各システムのキーとなる番号であるだけならば、ここまで巨額の費用をかける必要はあったのでしょうか?
それらの事業は各自治体と政府を結びつけるネットワーク上のシステムとなるため、国内大手の企業しか担当できないことはわかります。しかし、それぞれシステムを細分化し、各事業ごとに「~~機構」「~~協会」など、管理組織が設立されています。当然、マイナンバー以前に存在した住基ネットに関連する部門も改名、改称されマイナンバー関連の組織(日本公共団体システム機構)として生まれ変わっています。役員を見ると総務省と地方自治体の天下り先となっている事がわかります。
これらははっきり言えば、日本における老害組織をすべて温存したまま、新たなモノ、若いモノが入り込めない組織が「新たな日本」を作り上げていく仕組みにしか見えません。結果として、マイナンバーカード制度は旧来の社会システムを残したまま、カードを新しく作り、それに合わせて各種システムを改変していくという無駄の積み重ねとなっていくことでしょう。
政府はマイナンバーで効率化を図り予算を削減するどころか、逆に増やすことしか考えていません。古いものと新しいものを同時に残すと単純に考えて維持コストは倍になります。保険証をなくしてマイナンバーカードに変更する。マイナンバーを保険証登録にできない人には別途確認書を発行する。じゃあ、なぜ保険証をなくしたんですか?
怖いのは健康保険証や銀行口座との紐付け
とはいえ、健康保険証の機能をマイナンバーに持たせると、別の懸念が生じるように思います。それは国民の健康状態のデータベースが出来上がるということです。これまでは国民健康保険と各企業が加入している健康保険組合があり、それぞれの発行する番号で管理されていました。しかし全てマイナンバーで管理されると、個々の診療内容や薬の処方情報がマイナンバーを通した個人情報と結びつき、ビッグデータとして収集可能となります。その情報が何かしらのミスで漏洩する事があればどうでしょうか?個人の医療情報というのは大変深刻なもの。それだけに悪徳商法や犯罪などに使われる可能性も否定できません。
それは資産捕捉についても同じ事が言えます。今のところ、マイナンバーと口座との紐付けについては「公金受取口座登録制度」と「預貯金口座付番制度」の二つの制度があります。
「公金受取口座登録制度」は2022年1月から始まった制度で、マイナンバーに金融機関の口座番号を一つ登録しておけば、給付金等の受け取りがあった際に、申請書類に口座番号を記入しなくて良いので便利ですよ、というものです。
しかし口座を登録すると資産が把握されるのでは?という懸念が生じます。
こちらデジタル庁のFAQから。
このように、ご安心ください、と言わんばかりの返答ですが、「口座番号が国に登録されるが、残高等の情報は知られない」というのは公金受取口座登録制度においてはそうだというだけのことです。
もう一つの「預貯金口座付番制度」は、2018年1月から始まった、任意で金融機関にマイナンバーを届け出る制度です。複数の預金口座をマイナンバーと紐付けることによって、将来的には、相続時や災害時に一つの金融機関の窓口へ出向けば預金口座の所在を確認できるようになる、というものです。が、最もメリットがあるのは税務当局であると言えます。預金資産が複数の口座に分散されていても、預金総額を把握しやすくなるということです。
現在でも税務調査では税務署が個人の口座内容を見ることは可能ですが、その調査をさらに効率的に行う、つまり所得税、相続税の把握の精度を高めるという目的があります。これは、番号制度の導入目的の一つである「適正・公平な課税」に当てはまります。
ですが、こちらの届出に関しては現在は任意であるため、計画は遅々として進まないようです。というのも国民には、先ほどのFAQにもあったように「国に自分の資産を知られたくない」という根強い不信感があるせいです。
マイナンバーカードの利便性をうたう裏で、国家統制の道具に使われるのではないかという疑念は消えません。
また、先日こんなニュースがありました。
強盗できそうなターゲットを絞り込むために、自治体から流出した納税情報が使われていたということです。自治体にいくら個人情報を守る義務が規定されていても、職員のモラルに任されている余地がある以上、行政を完全に信用するのは難しいように思います。
これまでも住民税の納税情報が入ったUSBメモリの紛失や、行政手続きでフロッピーディスクを使用していた自治体のコロナ給付金の誤振込など、自治体の個人情報の管理の杜撰さが何度も指摘されてきました。デジタル庁はフロッピーディスクやCD-ROM等の記録媒体を行政手続きから撤廃する方針を掲げましたが、日本中の自治体が全てを速攻オンラインへ移行できるとも思えません。
このように行政の現場の個人情報管理体制がマトモではない以上、国も表立っては「全ての口座を紐付けろ!」とは言えないわけです。しかし今後の法改正次第では何かしらの理由をつけて全ての口座情報の提出が任意から強制へ変わる可能性は否定できません。こちらも医療情報と同じく、口座情報や資産情報、納税情報が全てデータとして一元化されたものが適切に扱われずに流出し、犯罪に使用された時の被害は甚大なものになるのではないでしょうか。
地方行政のパンク
日本政府は古い仕組みを一向に削除できないにも関わらず、新たな仕組みを古い仕組みに重ねてどんどん積み上げ、それをさらに1700個もの、規模も仕組みもてんでバラバラの地方自治体に一気に押し付けてくるわけです。これ以上行政の肥大化が続けば、少子高齢化で若者の流出の激しい地方のあちこちで悲鳴が上がり、無理が生じるのは既定路線です。マイナンバーのみならず、他にも次々と新しい法改正で規制を増やし続け、現場を疲弊させていますから、どう見てもキャパシティオーバーと言わざるをません。
そんなメタボ体質な政府の失敗のツケを払わせられるのは私たち国民です。たくさんの規制と無駄な仕組みを作り、増税体質を改めずに国民を疲弊させる政府には猛省を促したいと思います。
ということで、私たちはすべての増税、規制強化に反対します!
番外編:浜田参議院議員に質問してほしい!
減税と規制緩和に賛成で、国会でも政府に鋭い質問をしてくださる政治家女子48党の浜田議員に、ぜひとも国会で質問して欲しいな〜と思うことを番外編として掲載します。(^_^)
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