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【経済制裁は効果なし】北朝鮮輸出入禁止措置の延長の承認について

こんにちは。地方自立ラボ(@LocaLabo)です。

今回は、この度国会で承認を求められることになった「外国為替及び外国貿易法第十条第二項の規定に基づき、北朝鮮を仕向地とする貨物の輸出及び北朝鮮を原産地又は船積地域とする貨物の輸入につき承認義務を課する等の措置を講じたことについて承認を求めるの件」について調査しましたのでご紹介いたします。
(本稿で対象とするものは2023年第211通常国会で提出されたものです)

はじめに

時代はいきなり戦後の荒野から。。。極東国際軍事裁判(1946年5月3日開廷~1948年11月12日閉廷。東京裁判とも言う)の冒頭、オーストラリアから派遣されたウェッブ裁判長の宣言。「本法廷を構成する私達は共同して公平に感情を交えず法に照らして裁くことを確約した」(映画『東京裁判』小林正樹監督1983年)。どのような「法」があるのか。あったとしても、国民にも、世界にもその「法」の管轄権(当該裁判所がこの事件について裁判できる権限)は正当なものであると証明されなかったし、非公平性に対する疑義は誰も許されることはなかった裁判。そして、ヒロシマに原爆を落とした者の名を問うアメリカのブレイクニー弁護士の発言すら「通訳なし」として抹消されています。(東京裁判の映像はこちらで観ることができます)

東京裁判でも取り上げられていますが、日本が戦争に突入した分岐点として有名な松岡洋右外相の国際連盟脱退。しかし、その後松岡外相は「脱退などととんでもないことになった」というようなことを友人に語ったと伝えられています。国際舞台で大見得を切った結果がこれです。官僚上がり(外交官→満鉄副総裁)の日本人のサイテーな部分が良く表れていると感じます。

戦前の日本はアジアでの支配力を強める(特に満州での権益拡大)と、米国から日本の在米資産を凍結されました。これにより日本は基軸通貨ドルによる交易を封じられたため、金融市場と原油等の天然資源へのアクセスを絶たれ、日米開戦(太平洋戦争)に至りました。よく経済封鎖とか言われますよね。実はこういった事情も映画『東京裁判』では言及されています。特に倉山先生や江崎先生の本がお好きな方には、この映画は大変お勧めです^ ^

法に反対すること、それはアナーキズム(政治、社会的権力を否定して、個人の完全な自由と独立を望む考え方)ではありません。今回は北朝鮮を輸出先とする、または輸入元とする貿易に関して経済産業省の許可を得る必要がある、という施策(措置)について国会が承認を求められた件に関する調査です。しかし、果敢にも当ブログではこれにも「反対」を表明したいと思います。まずは「反対」そして、資料を用いて説明する。

官僚や政権与党の動きを止めるためにはまず簡単に「賛成」しないこと、これが重要だと思うからです。


北朝鮮を戦前の日本と同じ孤立国家であると考え制裁の有効性に疑念をもつことで「反対」

今回の「承認」という言葉について簡単に説明いたします。これはいわゆる「外為法」の48条において「我が国の平和及び安全の維持のため特に必要があるとき」に経済制裁を行うときに国会の承認が必要と規定されているため、本国会に上程したという意味です。詳しくは次の章で説明いたします。

さて、この措置を継続することになった理由のひとつ、北朝鮮の人工衛星の技術はどのくらい進んでいるのでしょうか? 本ブログではアメリカの主導する「アルテミス計画」に関する協定において反対意見といたしました。その中で中国の宇宙開発技術を恐れたアメリカが意を決して(しかし金は参加国が出し合う)月~金星への着陸を目標として舵を切ったことを紹介しました。すでに中国はアメリカや欧州が脅威に感じるほど宇宙開発技術が向上しているのでしょう。

一方北朝鮮においてはミサイルの発射頻度が増えています。報道を見る限りでは距離、方角といった単純な外形的な印象でも技術力は格段に向上していると思います。軍事技術からその後の国力の増大について考えるとするなら、日本より格段に劣っていることはないと思います。むしろ、日本を超えているかもしれません。日本より韓国、アメリカの方がより正確な情報を得ていると言われていますよね。この点、日本の外交は部が悪い。日本の官僚は先の松岡外相の頃よりも質の低い頭でっかちの「自認エリート」集団ですから、北朝鮮の事情など正確に知っているはずがありません。

1968年にザ・フォーク・クルセダーズが「イムジン河」という歌を発表しました。年末に三億円事件があった年です。年初より東大医学部のストに端を発した「東大解体」を叫ぶ全共闘と民青やセクト主義の強硬な学生運動が盛り上がりを見せた年でもあります。イムジン河は北朝鮮の中央から南に流れる川ですが、38度線を越えたあたりから韓国内に入っています。この歌はその10年ほど前に北朝鮮内で作られましたが、朝鮮半島の南北分断を悲しむ切ない歌詞と旋律の魅力で学生運動とともに若い世代の心を打ったフォークソングです。

38度線付近のイムジン河(地図)


北朝鮮は東西冷戦(米ソ対立)の影響を直接受けた国ですが、その孤立度合いは戦前の日本をも思わせます。日本も当時は優秀な軍事技術を持っており西欧列強の諸国から軍事力の増強に足かせを加えられていました。日本が持つ軍事技術の開発力は有効に活用されることなく敗戦を迎えてしまいましたが、そこで培われた技術や知恵は戦後の復興を後押ししたことに間違いありません。

ともあれ、現在続いている国連決議に基づいた経済制裁は実効性の検証なく繰り返し継続されています。制裁は経済戦争とも言え、直接武器を交える戦争は起こりにくくなりましたが、日本が引き金を引いたということは歴史の事実としてあります。ですから、経済制裁は戦争への原因ともなりますので、確実に制裁の実効性がある場合を除き行うべきではないと考えます。

そうであれば、北朝鮮に対して経済制裁を加えるべきなのか? いまさら「人工衛星」を飛ばしたからと言って軍事技術の脅威ととらえるべきか? またその制裁の有効性は? と真摯に振り返ることが重要ではないかと思います。したがって、本稿においても今回の経済産業省の措置については「反対」とさせていただきます。

北朝鮮輸出入禁止措置について

まず、外為法第一条、法律の目的を見てみましょう。

法律の目的
第一条 この法律は、外国為替、外国貿易その他の対外取引が自由に行われることを基本とし、対外取引に対し必要最小限の管理又は調整を行うことにより、対外取引の正常な発展並びに我が国又は国際社会の平和及び安全の維持を期し、もつて国際収支の均衡及び通貨の安定を図るとともに我が国経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

外国為替及び外国貿易法(外為法)

なぜ国会で承認が必要なのかは第十条に、次のように記載されています。

第十条 
我が国の平和及び安全の維持のため特に必要があるときは、閣議において、対応措置(この項の規定による閣議決定に基づき主務大臣により行われる(省略)第四十八条第三項及び第五十二条の規定による措置をいう。)を講ずべきことを決定することができる。
2 政府は、前項の閣議決定に基づき同項の対応措置を講じた場合には、当該対応措置を講じた日から二十日以内に国会に付議して、当該対応措置を講じたことについて国会の承認を求めなければならない。

この閣議のもとになる経済産業省の決定は令和5年4月7日に行われました。
前回の措置は令和3年4月14日から令和5年4月13日までの間実施が定められていましたので、今回はこの延長指示です。

経済産業省「外国為替及び外国貿易法に基づく北朝鮮輸出入禁止措置を延長しました」


輸出入規制の有効性を問う

現在の輸出(入)規制制度は「リスト規制」「キャッチオール規制」ということで規制物品と規制対象国が定められています。これらは当然法令でも定められていますが当然とても読みにくい文章と表なのです。もう少し新時代らしい情報源はないものかと探したら、「電子申請」をするページからも確認できました。ここでさすがのエリート官僚たちが考えた方法は、PDFファイルとExcelファイルです。すぐに変更できるからでしょうね、きっと 笑。
また、この規制があるために輸出企業を含め商社、メーカーは過大な事務作業にあえぐことになります。

●経済産業省「貨物、技術のマトリックス」

特に本稿では北朝鮮に対し、どのような物品の規制が存在するかということは省略いたします。JETROの資料を確認すると「2017年9月25日より、北朝鮮との間の貿易は全般的に禁止された」と書かれています。実はアメリカも対日経済制裁においてリスト制を用いた「許可制」としていました。日本の外為法の規制内容と形式はほとんど同じ体裁となっています。

●防衛省防衛研究所「経済封鎖から見た太平洋戦争開戦の経緯」高橋文雄(平成23年3月)33ページから
「表紙」http://www.nids.mod.go.jp/publication/senshi/pdf/201103/01.pdf
「本文」http://www.nids.mod.go.jp/publication/senshi/pdf/201103/05.pdf

さて、わが国の北朝鮮に対する「経済制裁」措置については、基本的にこの外為法を活用することにより行われていると考えます(この点について詳しい方がいらしたら是非ご教授ください)。すなわち、国防問題としての経済制裁であると法文化しています。しかし官僚や国会議員がそれを問題としてとらえる時、国家間での問題としてとらえがちではないでしょうか? 北朝鮮への経済制裁を行ったことで、北朝鮮の態度が変わりましたか? ここは官僚自身による検証が必要だと思います。結果検証を行わないまま継続を続けて輸出企業を疲弊させることは間違っています。
(※6月15日、北朝鮮の制裁とは関連ない表現を削除しました)

今回のテーマに対する提案となりますが、経済制裁の方法として最も有効なことは個人資産の凍結ではないかと考えます。つまり、北朝鮮問題で世界が困っているのは国家間の軋轢に対するものではなく、独裁者への対策ではないでしょうか。問題を起こしているのはある立場をもつ個人です。独裁者(独裁者はサイコパスが多い)が、盲目的に従う無意志の取り巻きに指示することによって生じている問題といっても過言ではないでしょう。その場合、その制裁は個人に対する制裁のほうが有効なのではないかと考えます。つまり簡単に言えば、個人資産の凍結を含む、独裁者の権利をいかにはく奪するかということになると思います。

個人に対して責任追及することにより、国家的な抵抗運動が起きにくくなることが考えられます。日本の場合は東京裁判において、事後に設定された「平和に対する罪」「人道に対する罪」を戦争指導者としての個人が負わされた形になりました。そのため国としては延命されました。しかし、それと引き換えに戦前から引き続いてきた官僚による統治機構は大きな変更がないまま継続し現在を迎えてしまいました。政権がGHQに一時移っただけでした。しかも長期間にわたり吉田首相が居座り続けて行政府の機能を継続させました。これは行政府の責任の意識に対するねじれを生じさせてしまいました。官僚が導いた部分もあるはずの敗戦を官僚が責任を取らないまま存続させてしまい、現在に影響を及ぼし続けているように見えます。日本はいつまでこのねじれを維持し続けるのでしょうか。

官僚は無責任に規制と増税の国家を目指している。官僚中心の国から脱却し、国民が主権を取り返すために叫ぼう。
税金下げろ、規制をなくせ!

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