北海道周遊パス旅(10) 暗闇の宗谷本線を札幌へ。
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20分近い遅延で、南稚内に到着。稚内市街地に近いだけに、乗客がごっそりと下車し、車内は閑散に。そして稚内市街地を高架で串刺しする様に走り、17:45に終点稚内に到着した。
稚内に来るのは、恐らく15年振りだが、その間に駅舎が刷新され、真新しくなっており、久しぶりに来た私を驚かせた。
せっかく稚内まで来たから、泊まって明日の宗谷岬の初日の出を見たい気がするが、残念ながらこれから特急で来た道を戻り札幌まで向かう。折り返しは17:44発の特急【宗谷】札幌行。乗ってきた【サロベツ1号】がそのまま折り返す。
【サロベツ1号】が20分以上遅れで稚内に着いたから、折り返し整備で発車も遅れる。何しろ稚内の【宗谷】発車時刻より遅く稚内に着いたから、遅れるのは確実。だが車内整備が済めば直ぐに発車するから、落ち着いて居られない。結局は駅の記念スタンプを捺印し、記念入場券だけを買い、飲み物や食べ物は買わずに、17:55頃に改札開始され、札幌行【宗谷】の先頭車自由席に乗車した。
このダイヤの乱れが影響なのか、18:03発普通名寄行が稚内~南稚内間を運休し、南稚内までタクシー代行になる旨が放送で案内された。私はその案内を聞き、ふと思った。
「南稚内までタクシー代行するぐらいなら、特急【宗谷】を18:03に発車させ、普通名寄行の乗客を南稚内まで【宗谷】に乗せたら良いのでは?。少なくともタクシー代が浮くのでは?。」
駅ナカにセイコーマートがあったにも関わらず何も買えずに【宗谷】自由席に乗り込み、18:02、定刻より18分遅れで稚内を発車した。札幌までの所要時間は5時間17分、あまりもの長丁場に気が遠くなる。次は何時この稚内に来るのだろうかと思いながら、【宗谷】車内から稚内市街地を眺めた。南稚内で自由席の乗車は無し。1両の自由席には、私含めて数人しかいない。
私はさっきの旭川で買っておいたサンドイッチを食べた。稚内で夕食買いそびれたが、旭川で万が一を考えてサンドイッチを買っておいて良かった。飲料水もカバンの中にストックあり、札幌まで持ちそうで安心した。
しかし、非常に退屈だ。特急【宗谷】は、ディーゼル特急では日本一の長距離列車、電車特急も含めたら、【サンライズ出雲】は夜行列車だから別格として、JR九州の博多~宮崎空港を結ぶ特急【にちりんシーガイア】に次ぐ長距離運転だ。夏場なら抜海の手前で利尻富士と日本海に沈む夕陽を楽しめただろうけど、今は冬場で稚内発車時点で真っ暗闇だ。新幹線【のぞみ】の東京~博多の平均所要時間より長い時間を真っ暗闇の車窓とは、見方を変えたら拷問に近いのでは?。こんな修行みたいなプランを組んだ自分を恨みたくなる。
豊富・幌延・天塩中川・音威子府・美深と停車するが、乗降はほとんど無し。私は乗ってる【宗谷】、乗客何人なのが気になり、エコノミー症候群対策も兼ねて編成往復してみた。
4号車自由席・14人
3号車指定席・7人
2号車指定席・10人
1号車指定席・2人
1号車グリーン席・1人
計34人。
大晦日の夜だから、こんなものか。後は旭川でどれだけ乗ってくるのだろうか。
席につき、ぼんやりと窓ガラスに映った自分の顔を眺めていると、突然急制動の感触が伝わってきた。それと同時に警笛が鳴り響いた。
「ああ、また線路内にエゾシカが侵入したか。」
そう思った直後・・・。
ドシン!!!
「あぁ、やってしまった。」
先頭車だけに、大きな衝撃音だけでなく、何か巨大なモノと接触、いや衝突した衝撃というか振動が伝わり、思わず脱線するのでは?と言う不安が過ぎった。
列車は真っ暗闇の中で急停止した。車窓に灯りは全く無く、森林に囲まれた中で足留めされたようだ。
「ただいま、鹿をはねました、只今の急ブレーキでお怪我された方は乗務員までお申し出下さい」
車内放送で、鹿との衝突が告げられた。さっき、【サロベツ4号】札幌行の鹿衝突で、乗車していた稚内行【サロベツ1号】が遅れ、その【サロベツ1号】が幌延で鹿衝突し、そして折り返し札幌行【宗谷】が鹿衝突。たった数時間で3回も鹿衝突の影響、しかも内2回は乗車列車で該当。宗谷本線は本当にエゾシカが増えたんだなと感じ、頭を抱えてしまう。ここで足留めされ、札幌には何時に着くのか読めなくなった。最悪日付、いや年を越すかも。
後ろから防寒着を着た車掌が2人通り過ぎた。4両編成かつガラガラなのに車掌が2人も乗務しているのは、やはり鹿対策なんだろうか。私は気になり車掌の後を追った。
デッキに出たら、扉が開いており、デッキに酷寒の空気が入ってきた。車外に出た車掌の会話を聞くと、床下に鹿が潜り込んだらしく、一旦列車をバックさせるという話が漏れ聞こえてきた。
車掌や運転士が車内に戻り、そして列車は10メートルほどバック。再び車掌と運転士が車外に飛び出した。
私は気になり、先頭の窓から覗いたら、乗務員3人がエゾシカ相手に立ちつくしていたが、そのエゾシカの図体のデカいこと!。奈良公園や広島の宮島でシカを見た事があるが、それらが華奢に思えるほど、図体のデカいエゾシカが居た。しかも眼を見開いて列車を見ているではないか。あれほど大きな衝撃だったのに、生きているとは!。
乗務員は、エゾシカにロープを掛けて引っ張り出した。線路上に居座れたら運転再開できない。ロープを掛けて引っ張っていたが、エゾシカはビクともしない。見た感じ体重は200kg以上はありそうだ。乗務員3人を合わせた体重より重たそうなエゾシカだ。
懸命にロープで引っ張ると、エゾシカは突然起き出しロープを振り払い、線路脇の林に消えていった。その見た目重たそうな身体に似合わない瞬足だった。さっき列車に体当たりし、相当なダメージを受けている筈なのに、あの機敏な動きを見て、人間はヒグマだけでなく、エゾシカにすら勝てないのではという想いが過ぎった。
20:47、特急【宗谷】運転再開。本来なら名寄の次の士別を発車する時刻だ。車内に戻ってきた車掌に現場の場所を尋ねた。例の如くスマホ圏外で現在位置を拾えなかったのだ。さっきの現場は智恵文~日進の間だと言う。ほとんど名寄の手前だ。もうひとつ、エゾシカの状態を尋ねたら、頭から血を流してはいたが、ピンピンしていたと言い、私はエゾシカの生命力の強さに、再び舌を巻いた。車掌さん、寒い屋外での鹿対応、本当にお疲れ様でした。
数分で名寄に到着。ここから先は高速運転出来る区間だけに、遅れは回復出来ると踏んだら、一向に発車しない。乗車車両のドアに乗務員が集まりだしたから行ってみたらドアが開いており、乗務員がドアレールにこびり付き凍った雪を蹴って落としていた。
多分、さっきのエゾシカ対応で、乗務員はこのドアで車外に飛び出したが、エゾシカ対応の間ドアが開けっ放しだった。その間にドアの隙間から開閉機構部に雪が入り込み氷結したのだろう。JR北海道が製造した特急車両は、【カムイ】用789系1000番台以外は乗務員室ドアが無く、乗務員は先頭の客用ドアから出入りする。
しばらくし、駅係員が融雪剤が入っているであろうタンクを持ってきて、ドアレールに噴射し、ようやくドアが閉まった。稚内発車遅延、鹿衝突遅延、そしてドア故障遅延で、遅れがだんだん拡大していく。
車掌が車内を回ってきた。このままの遅れだと、滝川で接続の根室本線最終の富良野行、札幌で接続の千歳線千歳以遠最終の苫小牧行に間に合わないから、乗り継ぐ乗客の確認だった。私は今日の最終目的地は終点の札幌だから、いくら遅れても大丈夫だが、乗り継ぐ乗客は大変だなぁという気持ちと、果たして乗り継ぐ乗客はいるのかな?という気持ちを持った。
名寄から高速運転となり、30分近い遅れで旭川到着。ここで自由席に10人近い乗車がある。しかし、ガラガラなのに私の前の席に若い女性が座ったが、旭川を出てしばらくして、大声でスマホでテレビ電話し始めた。車内に日々渡る中国語の訳が分からない会話で、かなり耳障りで気分害する。後ろから席を蹴飛ばしてやりたい気分になった時に車掌が車内巡回し、件の女性に注意、女性は電話を切る。中国では車内通話は当たり前かもしれないが、ここは日本だ、中国の常識を持ち込まないで欲しい。
滝川・岩見沢に停車し、札幌市街地に入り、札幌到着放送が流れた。本来なら苫小牧行最終の接続があるのだが、【宗谷】が大幅遅延の上、千歳以遠へ向かう乗客が居なかったらしく、接続列車は定刻運転の千歳行だった。
23:32、35分遅れで札幌到着。稚内を18分遅れで発車し、途中で鹿衝突にドア故障のアクシデントに遭遇しながら、ようやく札幌に到着。列車も大変だったが、乗客の私も大変だった。
さて、今夜の宿だが、明日は札幌6時台の列車に乗る。ホテルに泊まりたいが、なんとなく勿体無い気になり、札幌駅近くのネットカフェにチェックインした。仮眠が出来て、スマホやデジカメ等の電子機器を充電出来たら良いから、ネットカフェで十分だ。
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