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お礼を言うこと言われること

私には、ネットで出会って8年ほどの友人たちがいます。

一人は健常で、一人は私と同じように脳性麻痺を抱えて車椅子に乗っている友人。(私は多少歩けるので独歩)

それぞれ住んでいる県も違えど、とある繋がりから交流を持つようになり、気がついたら8年経っていたんです。

しかし、そんな私達三人がリアルタイムで顔合わせをしたのは、ついここ数年のお話。

そりゃそうだ。
一人は長時間歩くのが苦手で、一人は車椅子な上にみんな他県だもの。

お金だってかかるし、移動は大変なので、必然的にハードルが高いものだと思っていたんですよね。

という中なぜ私達は集まれるようになったのかというと、三人のうちの一人が健常で、移動に関する壁やその他諸々、その子に甘える形で集まるようになったんです。

そして今回のノートは、そんな私達の旅の途中で感じた「お礼」についてのお話。


ちなみに、皆さんはお礼を伝えたり伝えられたりという機会は多いですか?

私はこういう体で生きてるのもあって、外に出た途端に「ありがとうございます」や「すみません」のオンパレードです。

普段は全然外に出してもらえないので言いませんが、こんなふうに友人たちと外に出ると特にそれを感じるんです。

なぜなら、友人たちと出かける日は、電車を使ったり、タクシーに乗ったり、公共交通機関をたくさん使うから。

例えば、タクシーの運転手さんに「ありがとうございます、助かりました」とお伝えしたり、電車であれば友人が駅員さんにスロープをつけていただくので、私も一緒に「ありがとうございます」とお伝えしたりするのです。

それに加えて、この数日は友人宅に泊まらせていただき、いろんな施設やお店にお邪魔して、その先々でいろんな人に助けられたので、その都度また「ありがとうございます」と一言。

ほら、お礼って、伝えるのも伝えられるのも心地が良いものじゃないですか。伝えて減るものではないですし。

だからどんどん伝えていこう精神の我々

数々お礼をしてきた中で、中にはもちろん「うんともすんとも言わない人」はいました。
それどころか、友人の車椅子を見て、あからさまに嫌そうな顔をしていたり、私が道で捕まり立ちをしていると、舌打ちをされたりなんてこともあったんです。(正直怖かった)

が、大半の方は「いえいえ、どうぞ」だったり、
「はい!こちらこそー」と笑顔でお応えくださったりするので、こちらとしても「優しい世界…」としみじみしていました。


私の親戚でよく聞くお話として
「障害を持っている人の中でも「やってもらって当たり前だと思っていて、お礼を言わない人がいる」という話題があるんです。

なんといいますか、持ちつ持たれつという言葉がありますが、持ちつ持たれつというのはここにも通じるかもなぁなんて思ったりしました。

あくまで私の意見ですが、障害の有無にかかわらず、人に迷惑をかけかけられて、助け助けられの関係って変わらないと思うんですよねぇ…。
まぁもちろん、私達の場合は障害がある分、人より助けが必要ではあるんですけど。

サポートしていただけるのは言わずもがなとてもありがたいわけですが、その上で「助かりました、ありがとうございます!」と言って「大丈夫ですよ、お気をつけて」だとか、「いえいえこちらこそありがとうございました」なんて返していただけると、

ちゃんと言ってよかったなぁという気になるし、それに笑顔を加えて優しく返していただけることで、何かをお願いするハードルから心を解してくれてとても嬉しいと常々感じていました。

そんな今回の旅の中で、私が今回特に「なんて優しい…」となったお話がありまして。


それが何かといいますと、
友人とお邪魔したとある施設(某夢の国ではないです)で、車椅子で入場できず、とても短い距離(例えて目と鼻の先程度)を歩くのが精一杯友人が乗るにはアトラクションまでの距離が長く、乗るまでの道のりに難関がたくさん…なんていう局面があったんです。(語彙力なさすぎない?)

「ここからは歩いていただかなきゃいけなくて…」だったり、「乗り物自体も動いた状態から乗車いただくので…」というお言葉に、私達も流石に厳しいかもしれないと会議の末、「どうする?諦める?」とウンウン唸っていたんです。

すると、ご案内してくれていたお姉さんが
「最後尾であれば後ろのお客様がいないのでゆっくりご乗車頂いて大丈夫なんですが」と提案を下さり「じゃあ頑張ってみよう!」と、お姉さんに背中を押していただく形で列に並び、最後尾になるまで人のいない場所で座って待っていたんです。

そしてそこに取り付けられた柵がまるで檻のように見えて、私がつい「もはや囚人じゃんwww」なんて話を友人にしていたら、お姉さんが「確かにプリズン味がありますね!」とノッてきてくれて大爆笑。

その後も「それではそろそろ行きましょうか。あっ、お姉さん脱獄なさったんですね!!」なんてノリ続けてくださいまして私達は大爆笑。
前に並んでいた方々も笑ってくれていて、失笑だったら申し訳ないですが、笑っていただけていることがありがたかった…ほんとに…非常に…。

おかげさまで、並んでいる時点ですでに私達はとても楽しかったというのに、お姉さんはその上にたくさん、最大限のサポートとご提案してくださいまして、私達は安全に、とても楽しくアトラクションを体験することができました。

めったにできない経験とも言えよう対応に、ほんとにありがとうございました!と全員で重ね重ねお礼伝えたところ、「お金だって頂いているのに乗れないなんて悲しいじゃないですか!」と言ってくださり、私達はさらに誠心誠意お礼を伝えました。

するとお姉さんは「徳を積めた気分です!」なんて言って、こちらが萎縮しないようなお言葉で返してくださった上、「楽しんでくださいねー、行ってらっしゃい!」と素敵な笑顔で送り出してくださって…。

もうほんとにとにかく感謝感激…
という感じでした。あのときのお姉様、大変お世話になりました。
たくさん幸せになってほしい…。(一同同意見)


否、助けてくださるのはキャストさんのみにとどまらず、近くにいた一般のお客さんも、たくさん私達をサポートしてくださいました。

何気にとても助かったこととしましては、車椅子の友人の代わりにゴミを捨てようとトレーをゴミ箱前まで運び、片手は体幹を支え、片手にはトレーという両手ふさがり状態の私を見たとある子連れの男性が、「大丈夫ですか?」と、私が捨て終わるまでゴミ箱の蓋を開け続けてくださいました。

捨て方がいまいちわからずワタワタしていた私に、嫌な顔一つせずに「いいですよゆっくりで!」とまで言ってくださったどこかのお父様、本当にありがとうございました。

飲食店なんかでも、友人と二人同時にお店のお手洗いへ行き、出てくるタイミングが私のほうが遅かったためにドアを支えてあげられなかったことがあったんですが、待合席にいたご家族のお母様が「支えてるので大丈夫ですよー」とすでに友人をサポートくださっていました。

「すみませんありがとうございました!持ちます!」とドアを受け継ぐと、そのお母様は「困ったこれがあれば助けるので声かけてくださいね」と補足してくださっていました…。

きっとそのお母様のお子様はそんな方のお背中を見て育つので、きっと優しく育つんだろうねなんて話ををしてました。

車椅子で過ごしている友人いわく、駅でスロープを取り付けていただく際に嫌な顔をされることは珍しくないんだそう。

無骨な態度で接客なさる運転手さんなんかも中にはいたりする中で、今回の旅の中で私達と関わってくださった方々は、とても親切に、笑顔でサポートし続けてくださる方ばかりで本当に運が良かったなぁと思います。

普段外に出ることができない私と車椅子の友人を、もう一人の友人のお母様が「狭い世界で生きるな!広い世界に触れな!」と言って、お家にお泊りさせていただいて、お食事等、既にすごくお世話になっているというのに、たくさん貴重な体験までさせていただいて、そこでもまたもや「ありがとうございます…すみません…」を繰り返しておりました。

家からなかなか出させてもらえない私は、十数年生きてきた中の多くの時間を、鳥かごに閉じ込められた小鳥のように家でひっそり過ごしてきました。

小学校に上がって初めて、マンション内までならオーケーだとか、高学年になってもせいぜい歩いていける範囲しかだめなので、多くのことはできず、友人に「退屈させてごめんね」と言うことは多々あったし、両親の離婚に際して引っ越した現在はもっと行動範囲が狭まってしまって、家の中で鬱々とすることも多いんです。

だから、必然的に「地獄だ」なんて叫びたくなってしまうような時間も結構あります。

それが唯一破られる瞬間が、今回のような友人二人と会うとき。

健常の人からしたら、もしかしたら当たり前とも言えるであろう「友人だけでアミューズメント施設に行く」なんてイベントは、私には縁がないものだと思っていました。

現地に行くことはできても、流石に施設は無理なんじゃないか…という気持ちも払拭できないまま訪れましたが、食べ物を食べたければ「全然運びますのでお申し付けくださいねー!」とサポートしてくださるキャスト様方がいて、アトラクションでもサポートいただけて。

自分たちにとって大きな壁だと思っていた数々が、周りの方のサポートのもと、バンバン壊されていきました。

本当に、友人と三人で馬鹿みたいに笑って、純粋に、無邪気にアトラクションに乗るなんてイベントが自分の人生になんて思っていませんでした。

障害があっても、サポートしてくれる周りの人次第で、乗り越えられる壁は案外たくさんあるのかもしれないと、前向きな気持ちを感じることができました。


そんなしみじみした余韻を胸に、帰り道を歩きながら「ここがありがたかったね」や「これ最高に笑ったよね」なんて言い合い、友人たちの笑顔を見ながら、ヘトヘトな体に反して、私はとても幸せでした。

家に帰って疲れて「動きたくなーい」なんてダラダラして
「笑いすぎて腹筋が痛い」と言い合ったくらい、三人でゲラゲラと笑い、騒ぎ続けた約一週間の旅でした。

いつどこで何が起きるのかなんて何もわからないし、私達はもしかしたら人よりもたくさん困難な道を歩むことも多いのかもしれないけど、

それでもわそれを乗り越えた先のどこかに向けて
「また会おうね」や「また必ず遊ぼう」と約束を交わして、「さぁ次はどこに行こうか」なんて相談して、

いざ帰る前は「寂しいの?」と聞いて「また会えるじゃんか」なんて笑い合いつつ、本当は自分だってやっぱり寂しい気持ちになって。
その寂しい気持ちさえ、自分には新鮮で、ありがたいもので、それ故に泣いてしまいそうな気持ちが…およよ。

こうして執筆しながらこの一週間のことを振り返り、こんな私と付き合い続けてくれている友人はもちろんのこと、旅の先々でサポートしてくれた方々に感謝が止まらないです。

友人二人、そして今回の旅をサポートしてくれていたたくさんの方へ、最大の感謝を込めて。

最高に楽しい旅をありがとうございました。

こういった対応をしていただけることは決して当たり前ではありません。そのことを肝に銘じた上で、最大限感謝を。

また、いつかどこかで友人と集まり、最高だったねと笑えますように。
「またね」が叶いますように!


最悪でもありながら最高な人生に負けぬよう、お家に帰ってまた、頑張ります。

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