「消費税の課税選択の変更に係る特例」をうまく使って税負担の軽減を!

 消費税の納付額の計算は、預かった消費税額から支払った消費税額を差し引いた残額を納めるものです。
 ですから預かった消費税額よりも支払った消費税額の方が多ければ、税金を納めるのではなく還付されることになります。しかし、免税事業者には「消費税を預かる」という考え方が税務上ありませんので、支払った消費税額の方が多くても、税金が還付されることは絶対にありません。
 簡易課税制度の場合も同様です。簡易課税制度では売上高をベースとして消費税の納付額が計算されますので、預かった消費税額より支払った消費税額の方が多くても、還付されることはありません。
 通常は課税期間が始まる前までに「免税事業者から課税事業者になる」、「課税事業者から免税事業者になる」、あるいは「簡易課税制度の適用を受ける、またはやめる」ことを選択しなければなりません。
 しかし、この「消費税の課税選択の変更に係る特例」を使えば、課税期間が始まったあとでもこれらの選択ができるのです。
 したがって、売上が低迷して預かった消費税額よりも支払った消費税額の方が多くなると見込まれる場合、課税期間の開始後であっても、免税事業者は課税事業者を選択し、簡易課税制度の適用を受けている事業者はその適用をやめることにより、消費税の還付を受けることが可能となるのです。

 「消費税の課税選択の変更に係る特例」の概要は以下のとおりです。
 新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響を受けている事業者の方で一定の条件を満たす方は、納税地の所轄税務署長の承認を受けることで、「特定課税期間」以後の課税期間について、課税期間の開始後であっても、課税事業者を選択する(又はやめる)ことができることとされました。
 ここで 「特定課税期間」とは、新型コロナウイルス感染症等の影響により事業としての収入の著しい減少があった期間内の日を含む課税期間をいいます。
  勿論、課税事業者の選択をやめる場合であっても、納税義務が免除される事業者は、その課税期間の基準期間(法人は前々事業年度、個人事業者は前々年)における課税売上高が 1,000 万円以下の事業者等に限られます。

 この特例の対象となる事業者は新型コロナウイルス感染症等の影響により令和2年2月1日から令和3年1月 31 日までの間のうち任意の1か月以上の期間の事業としての収入が、前年同期比で概ね 50%以上減少している事業者です。

 なお、この特例により課税事業者を選択する(又はやめる)場合、通常求められる2年間の継続適用要件等は適用されず、この特例により課税事業者を選択した課税期間の翌課税期間において、課税事業者の選択をやめることも可能です。

 また、消費税の簡易課税制度の適用に関しては、現行法においても「災害その他やむを得ない理由が生じたことにより被害を受けた場合」の特例が設けられています(消費税法 37 条の2)。
 新型コロナウイルス感染症等の影響による被害を受けたことにより、簡易課税制度の適用を受ける(又はやめる)必要が生じた場合、税務署長の承認により、その被害を受けた課税期間から、その適用を受ける(又はやめる)ことができます。

 これらの特例を上手に活用したいですね。
 是非、税理士等にご相談ください。

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