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 日本経済新聞によると、帝国データバンクが実施したSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)に関する企業調査の結果、2割強の企業がSDGsに積極的な姿勢を示していることがわかりました。
 自社におけるSDGsへの理解や取り組みについて尋ねたところ、「意味や重要性を理解し取り組んでいる」と答えた企業は8%でしたが、「意味や重要性を理解し取り組みたい」と答えた企業は16%で、合わせて24%がSDGsに積極的だったとのことです。
cf. SDGsに積極姿勢、企業の2割に 帝国データ調査(日本経済新聞)

 この24%という数字を高いと考えるか低いと考えるか、受け取る方によって異なるでしょう。
 私個人的には、この数字は実態を表していないと考えています。
 というのは、「言葉は知っていて意味や重要性を理解できるが取り組んでいない」33%「言葉は知っているが意味や重要性を理解できない」15%と、合わせて48%の企業がSDGsを認知していながら実践していないことになります。
 しかし、SDGsは改めて取り組まなければ実践できないものではなく、現実に実践している企業の活動がもう既にSDGsの17の目標と169のターゲットを充足していることがありうるところに、その特徴があります。

 次に挙げたのは、株式会社セブン-イレブン・ジャパンの掲げる<5つの重点課題>です。

9 社会課題への取り組み
持続可能な社会の実現に向けて、さまざまなステークホルダーとの対話を通じて特定した「5つの重点課題」に対し、積極的に取り組みます。
<5つの重点課題>
重点課題1 高齢化、人口減少時代の社会インフラの提供
重点課題2 商品や店舗を通じた安全・安心の提供
重点課題3 商品、原材料、エネルギーのムダのない利用
重点課題4 社内外の女性、若者、高齢者の活躍支援
重点課題5 お客様、お取引先を巻き込んだエシカルな社会づくりと資源の持続可能性向上
(注:特定した重点課題には、日本固有の社会課題を背景とするものが含まれます。)

 この<5つの重点課題>は、もう既にSDGsに適合しています。
「重点課題1 高齢化、人口減少時代の社会インフラの提供」は、169のターゲットのうちの「1.5 2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。」を、
「重点課題2 商品や店舗を通じた安全・安心の提供」は、「11.1 2030年までに、全ての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。」を、
「重点課題3 商品、原材料、エネルギーのムダのない利用」は、「12.3 2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。」を、
「重点課題4 社内外の女性、若者、高齢者の活躍支援」は、「8.5 2030年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する。」を、
「重点課題5 お客様、お取引先を巻き込んだエシカルな社会づくりと資源の持続可能性向上」は、「9.1 全ての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。」を充足しています。
 細かく見ればもっと適合しているターゲットもあるでしょう。

 「株式会社セブンーイレブン・ジャパンは大企業だから、そこで掲げられている重点課題もSDGsに適合するほど高度なものだなのだろう」といわれるかもしれません。しかし、そんなことはありません。
 例えば、「紙や電気の使用量を削減し、ごみの減量をはかる」という目標を定めたとします。特別に珍しい目標ではなく、多くの企業で掲げられているものです。
 ところがこの目標は、「9.4 2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う。」に適合しています。
 「あなたの会社は、もう既にSDGsを実践しています」と言われれば驚くかもしれません。でも、SDGsとはそういうものなのです。

 「SDGsに取り組もう!」と言われれば戸惑うかもしれません。
 「まず、あなたの会社が実践しているSDGsを見つけましょう」から始めるのが、中小企業や小規模事業者のSDGsの取り組み方です。
 決して、SDGsは高いハードルではないのです。

 SDGsは17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓うものです。
 大切なことは、この思いを経営で実践することなのです。

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