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ヘイ、ヨー、ヨー。俺は雪国生まれ、雪の中育ち♪ 雪だるまだけが唯一の友達♪

タイトルで言いたかったのは、「友達がいない」ではなく「雪国に住んでいる」ってことだったのに、なぜかすごくさびしくなったよ。


ここ数日の間にたっくさんの雪が降った。
暴風のともなう雪で、家の壁や電柱に叩きつけたような雪の跡が残った。道路は雪で大幅に狭まり、車も埋まった。そのとき、外を歩いていた人はきっと埋まっただろうし、せっかく掘っておいた落とし穴も埋まっただろう。なにか恥ずかしいことがあって、ちょうどいい穴を見つけたので入っていたという人はそのまま冬眠だ。
これだけ多くのものが雪に埋もれてしまうのだから、隠しておきたいものを外に放置しておくという方法もある。一般的なものでいえば、へそくりや死体でしょう。ただし、春になったらこんにちはなので、気をつけなければいけません。

もし、私が日がな安楽椅子に腰掛け、空から降る雪片のひとつひとつを数えることしかしていないのであれば、さぞ有意義に過ごせただろうが、実際の生活はそういうわけにいかない。
外に出かける用事もあれば、歯間につまったものを取り出す楊枝もある。幼児に戻りたい気持ちをおさえ、要事をこなしていく。

さあ、まずは外に出ることが大変。
ドアの前に大量の雪が鎮座し、なんて重たいドアだと思った方も多いだろう。お父さん、お父さん、ちょっと来て、ドアが開かないの、なんてことになった方も多いだろう。どれどれ、お父さんがやってみよう、うーん、確かにこれは重いね、ドアのたてつけが悪くなったかな、いやいや、雪のせいでしょお父さんったらやぁだ何言っちゃってんのかしらおほほほほ。

やっとの思いで外に出ると、今度は足をとられる。積もった雪にずっぽりと足がはまってしまうのだ。とられちゃったものはしょうがない。取り返しにいくより、先を急ごう。足がないまま、車の前へ。あれ? こんなところに雪山が? 違う違う、この雪山はまだ月々の支払いが五年も残っている車の成れの果てさ。これだけ立派な山ができたらスキーできちゃうね。よし、ここにスキー場をオープンしよう。そうして得た収入で残りのローンを払っちゃおう。リフトなんかも設置してね。言うてる場合か。

せっせと車の周りの雪をどけ、ようやくドアが開く状態に。しかし、このまま発進するわけにはいかない。車の上に積もった雪をおろさねば危険だ。ドボドボ、ドサドサ、車の上から雪を落とす。さあ、これでいいぞ、と思ったら落とした雪が多すぎてまたドアが開かない。もう一度車の周りの雪かきをすませたところで、いざ出発、と思ったら、除雪車が家の前に置いていった大量の雪や道路から削られた氷がいくつもの岩のように積み上げられていて出られない。雪の孤島に取り残されてしまった。
こうなったらもう雪かきをしながらどこまでも歩く以外に方法はない。雪かきをしながら目的地までの道を作り、やっとこ目的の場所に到着したところで、家まで歩いて戻って車に乗るのだ。もう着いたんならそれでよくない?

そもそも目的地はどこなのだ。いったい誰に会いにいくというのだね、友達もいないというのに。
あっはっはっは。


雪害はおそろしいもので、各地で事故も多発している。
屋根の雪下ろし中の滑落など、本当に気をつけなければならない。

私も屋根の雪下ろしをした。
が、安全を考慮し、屋根に上がるのではなく、二階の窓から、お好み焼きをひっくり返すときに使うへらみたいなやつの長ーーーーーーーーーいバージョンでせり出した雪をつっつき落とすという方法だ。
気温が上がると落雪事故も起こりえる。大量の湿った重い雪が頭上に当たれば命の危険もある。
私は長いへらを手に窓から身を乗り出す。そのときの私の心境はこうだ。「この長いへらでお好み焼を上手にひっくり返せたら、かっこいいだろうなぁ」邪心、邪心、邪心だ!! 作業に集中しなさい!

雪の塊にへらをさくっと刺すと、どぼっと落ちてくる。私が落としたのだから、私の上に落ちてくる。あっという間に雪男。そして腰から下は家の中にいるわけだからね。家の中が雪だらけになるのって、本当に嫌な気分。激おこぷんぷん。室内は暖かいわけだからすぐに溶けちゃって床はびしょびしょ。せっかく年末の大掃除で床もふいたのに。

とにかく、これで一通りの除雪作業は終えたことになる。窓から外を見ると、自らの働きぶりが形となって表れている。除雪作業の済んだところと、積もったままのところとでは雲泥の差。よく頑張ったなぁと、自分を褒めてあげながらお好み焼きを焼くのだ。

そして、翌日。
連日の豪雪により、ふりだしに戻る。

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