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石の上にも三年。「にも」ってことは、この人別のとこにも何年かいたんだろうな。

最近、小学三年生の息子がことわざを勉強している。
あいうえお順に辞書でことわざを調べ、その意味をノートに書き写すという徹底ぶりだ。

なぜわざわざ辞書で調べるようになったのかというと、それにはちょっとしたからくりがある。
最初は、私に「ことわざってどんなのがある?」と訊いてきた。そこで私はしばし沈思黙考し、丁寧にこう答えた。「うんうん。ことわざね。はいはい。ことわざ。うーん、そうね。ことわざ……。ことわざ? 裏技じゃなくて? ことわざ、か……。まあ、要するに、あれだ。辞書引くことを強くお薦めする」

とっさにたった一つのことわざも浮かばなかった。このような状況のことをまさに「ポンコツに口なし」といって、【知恵や知識のない者はいざという時に意見を発することができない】の意となる。

もし私が少年期に親からそんなことを言われようもんなら、家庭学習ノートに「こまった、こまった、こまどり姉妹」ということわざだけを書いて提出し、先生に怒られ、翌日のノートには「しまった、しまった、島倉千代子」ということわざを書いていたことだろう。

息子が自ら調べたことわざを口に出して言うたびに、「ああ、そうそう。それ知ってる」や「はいはい。それね。有名なやつね」と相槌をうつ。

そんな息子だがたまに言葉に詰まることも。
「えーと、あれ、これは……。ぎょふ……?」
ぎょふ、と聞いて私にはピンときた。大人だもの。それくらい知ってますよ。
「それはこういうことわざだ。『魚腹に葬らる』。意味は水死、溺死することのたとえ」
「えっ。こわ。なにそれ。いや、違う違う。漁夫の利だよ」
「え、魚腹……。違うの? 海や川で溺れ死んで魚に食われ、その腹の中に葬られるの意から……」
「こわいって。何それ」

そんなこんなで、いろいろなことわざを久しぶりに耳にしたよっていうお話。

それではここからの司会進行を、以前、私が書いていたブログに登場したモン太とサル男にお任せしたいと思います。


モン太「今回はことわざのお話ということでね。最近は本当どこに行ってもことわざが使えて便利ね。なんでもことわざで済んじゃうから」

サル男「いや、スマホ決済みたいな扱いで言うな。どういうたとえ方なの、それ」

モン太「本当、これぞまさに『終わり良ければ総て良し』ですな」

サル男「今始まったばかりだし、良いところ一つもないし」

モン太「普通の会話の中でもうまい具合にことわざを放り込めたら、ちょっとかっこいいよね」

サル男「そうだね。状況にぴったり当てはまることわざが言えれば知的に見えるね」

モン太「一番有名なのはこれだよ。『犬も歩けば棒に当たる』」

サル男「うんうん。聞いたことないって人いないだろうね」

モン太「これもおもしろいもんでさ、『犬も』ってことは他にも棒に当たったやつがいたんだろうね」

サル男「いや、そういうことではない」

モン太「あ、猫が当たった! ネズミも当たった! うわ、犬も当たったよ……って感じだな」

サル男「ああ、犬もダメだったか~、じゃないのよ」

モン太「みんな棒に当たっちゃって。『二度あることは三度ある』なんつってね」

サル男「お。ことわざを混ぜてきたね。君、なかなか『口も八丁手も八丁』だね」

モン太「このことわざもすごい。千手観音の上をいっちゃったからね。口が八兆個に手も八兆本って……」

サル男「ちょう違いだね」

モン太「すみません。『蝶よ花よ』と育てられたもんで」

サル男「またちょう違いだね」

モン太「ことわざって日本語だけじゃなくて英語でもあるよね」

サル男「うん。同じ意味のやつもある。タイムイズマネーとか」

モン太「そうそれ。あとは『待てばカイロの日よ。Really?』ってやつね」

サル男「待て待て。違うわ。『待てば海路の日和あり』だよ。無理くり英語にするな」

モン太「そうだった。それと同じ意味のことわざに『果報は寝て待て』がある」

サル男「寝るにまつわることわざも多いね。『起きて半畳寝て一畳』とか」

モン太「うん。『三年寝太郎、暁を覚えず』とか」

サル男「ないわ、そんなもん。暁を覚えないのは春眠」

モン太「いやいやそれにしても、我々が公の場に登場するのはかれこれ10年振りだそうですよ。三年寝太郎どころじゃないですね」

サル男「以前のブログに最後に登場したのが、今調べたら2012年の1月でしたから。正確に言えば9年と11か月振り」

モン太「そうか。あと2年寝かせてもらえれば11年と11か月振りで『時の経過はポッキーの如し』になっていたのにね」

サル男「そんなことわざあるか。いい加減にしなさい」

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