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言葉を選択し、使用していくことは難しい。もういっそ全部「あれ」で通したい。あれのあれは……あれだったっけ?

今回、考えてみたいのは、我々が日々使っている「言葉」。

何気なく使っている言葉の中にも「あれ? これ、どういう意味だっけ?」と思うもの、「あれ? 使い方間違ってない?」と思うもの、「あれ? あの課題の提出期限はいつだっけ?」と焦るもの、「あれ? あのとき助けた猫だっけ?」と懐かしくなるもの、「あれ? 猫なんか助けたっけ?」ともう何がなんだかわからなくなるものなど、様々あります。
そんな中から一つの言葉をピックアップしてみましょう。

地下鉄やバス、エレベーターなど、乗ったり降りたりするものに対して「乗り降り」という言葉を使います。
この「乗り降り」、果たして本当に正しい言葉なのかなぁ?
さあ、ちびっ子のみんな~、一緒に考えてみよ~う!

あるシーンを想像していただけないでしょうか。そこをなんとか。

月曜日の朝、昨日までのだらけた生活がまるで夢だったかのように、仕事にいかなければなりません。重たい体に鞭を打ち、あくびをしながら、土の中から顔を出します。
パジャマから甲冑に着替え、歯を一本一本丁寧に赤と緑と交互に塗り終わったら、パラシュートを背負い、マンションの窓から飛び出します。パラシュートが開く前にアスファルトに脳みそをぶちまけるところが難点ですが、月曜の朝から贅沢なことは言っていられません。カラスが寄りつかないうちに脳みそをかき集め、会社へ行きましょう。

会社までの交通手段には地下鉄を使いましょう。本当なら颯爽と馬にまたがりたいところですが、今日は「乗り降り」の話をするので、馬にはまたがりません。そしてそもそも馬にはまたがりません。馬を飼っていないのですから。

地下鉄の駅に着くと、いったいどこからわいて出たのかというくらいの人だかり。よく見ると、ベンチの裏や、床と壁の境目くらいのあたりから、にゅるっとわいて出ているようでした。
ホームで地下鉄が来るのを待っていると、アナウンスが流れてきます。
「間もなくぅ、2番ホームにぃ、地下鉄が参りますぅ。薄汚い靴の裏をぉ、しっかりと拭いてお待ちくださいぃ」

減速していく地下鉄の窓から、たくさんの人が乗っているのが見えます。地下鉄が停止すると、ドアから窓から運転席から、はたまたレールの下から、どんどん人が這い出てきます。
たくさんの人がホームへ降り立つと、ようやく舞っていた、いえ、待っていた人たちが乗る番です。
地下鉄の中でもアナウンスが流れています。
「乗り降りをする際にはぁ、閉まるドア、足もとにご注意ください」

さて、ようやく本題です。
もう書くのに疲れちゃったところでようやく本題に入ります。

「乗り降り」という言葉は、最初に、「乗る」がきています。そして次に「降りる」です。しかし、日常のシーンでよく目にする光景は、「降りる」が先で「乗る」が後です。誰も降りていない満員電車に無理っくり乗り込んだら、ちまたでよく言う「もうこれ以上食べたら耳からペンネが飛び出しちゃうよ」状態です。

なので、これから先、地下鉄がホームに滑り込んできた際には「乗り降り」ではなく「降り乗り」というようにしましょう。

なんだかしっくりこないって?

それじゃあ、「降り乗り」ではなく「俺の利」にしましょうか。「漁夫の利」みたいに。
それとも、楽しそうな感じで「ノリノリ」にしましょうか。それとも、こんな話はもう「こりごり」にしましょうか。

ただし、「乗り降り」の語源はきっと乗らなきゃ降りられないってとこからきていると思うので、全てを「降り乗り」にしてしまうのではなく、状況によって「乗り降り」を使うときと「降り乗り」を使うとき、「韓国のり」を食べるときと、「味付けのり」にするときを使い分けるようにしましょう。


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