うまい標語みたいなのを考えられるようになりたい

モン太「最近、はまってるものがあってさ」

サル男「なんでしょう」

モン太「標語っていうのかな。なんかよくポスターとかに書いてあるキャッチコピーみたいな」

サル男「はいはい。交通安全の標語みたいなやつだ」

モン太「そう。『青信号 ぼーっと見てたら 赤信号』みたいなやつ」

サル男「なにしてんの、その人。そうじゃなくて、『この道も 車が来ないか たしかめよう』みたいな、そういうやつでしょ」

モン太「ああいうのを見るのがおもしろくて。うまいこと言ってるなっていうのがたくさんあるからね」

サル男「まあ、注意喚起を促すようなものが多いから、やっぱりキャッチーで記憶に残るようなフレーズにするものね」

モン太「最近の子供はさ『いかのおすし』っていうのを教わってるらしいんだよ」

サル男「はいはい。子供たちが犯罪被害に遭わないように気をつけましょうっていうね」

モン太「あれ、知ってた? 単純にいかのおすしがおいしいって意味じゃなくて、一文字一文字に意味があるって。暗号みたいになってるの! 暗号みたいになってるの!!」

サル男「え、何を興奮してるの。当たり前じゃん。犯罪に巻き込まれないようにイカのお寿司食べましょうだと意味わからん」

モン太「まず、『い』! いい大人が何してるの。次に『か』! 必ず捕まるよ」

サル男「ちょっと待て。それ、犯罪者側に向けてない?」

モン太「『の』! ノリでやっちゃいました、じゃ済まされないよ」

サル男「いや、だから違うって。これは子供たちへのメッセージだから」

モン太「え、そうなの。どんなメッセージが込められてるっていうのさ。え? ウニに中トロ? ふざけるんじゃないよ、あんたはイカでも食べてなさいって、そういうメッセージかい? 冗談じゃないよ! やってられないよ、もう!」

サル男「どこでキレたの」

モン太「なにはともあれ、他にも好きな標語があってね」

サル男「こういうのは結局、危険なことや悪いことを未然に防ぐためのものが多いよね」

モン太「たとえば、これ。『飲んだら乗るな、乗るなら飲むな』」

サル男「飲酒運転はいけませんよ、っていう標語だ」

モン太「これのすごいところはさ、ビールとかアルコールとかアタリメとか上司の愚痴とか夕暮れの街並みとかむしゃくしゃした気分とか、そういうお酒を連想させるような言葉をいっさい使わずに、飲酒運転を想起させているってとこね」

サル男「まあ……何をもってお酒を連想するかは人それぞれだけどさ」

モン太「本当、この標語を見たら、僕も車の運転はやめようと思うもんね。ひっく」

サル男「え、今飲んでるの?」

モン太「ちょっとむしゃくしゃしちゃって」

サル男「いかのおすしのこと、まだ納得いってないの」

モン太「この『飲んだら乗るな』はさ、他にも応用がききそうだよね」

サル男「そうかい? たとえば?」

モン太「『飛んだら乗るな』とかね」

サル男「いや、ドラッグやっちゃってるよ! 車の運転どころか、ドラッグをやるなよ。ダメ、絶対!!」

モン太「あ、それもよく見る標語だ」

サル男「危険薬物、断固反対! 絶対にいけませんよ!」

モン太「やるわけないだろ、そんなもん。『欲しがりません、きれるまでは』」

サル男「いや、やってる奴の言い分! いい加減にしなさい!」


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