娘に自転車を買ってあげたというほのぼのした話のはずがなんでこんなことになってしまうのだろう 前編

先日、めずらしく買い物に行ってきた。普段、殻にこもって生活するヤドカリ式ライフスタイルを実践する私にとって、わざわざ実在の店舗に足を運ぶのは稀なことだ。いつもは「さぁて、今日も仕入れてきた足を足屋さんに運ばないとな」と実在しない店舗に足を運ぶ想像ばかりしているので。

わりとなんでもネット通販で済ませてしまうことが多いのだが、実物を見て購入したほうがいいものもある。
代表的なものといえば、拳銃だろう。
自分の手にしっかりフィットするか、指でくるくる回して発砲したばかりの銃口にふっと息を吹きかける様が似合っているかどうかを確認してからでないと購入するわけにはいかない。ときには、威力を確認したくなることもあるだろう。そんなとき私は、店員さんに銃を持ってもらい、自分の頭の上にりんごを置く。そして額にバツ印を書いて「このバツ印に一発ズドンとお願いします」と頼む。すると店員さんは躊躇なく私の脳天を撃ちぬいてくれるので、油性ペンで書いた汚れもきれいさっぱり消し飛ぶというわけだ。

今回、何を買いに行ったかというと、娘の自転車だ。私自身の物であればどうだっていいのだが、娘が乗る自転車ということになると実際に高さや長さや太さや味や匂いや添加物の有無を確認したほうがいいだろうと考え、脱ぎたくもない殻を脱いで外へ出た。

帰りに自転車に乗って帰ってくることを考え、徒歩での移動。今年は春の訪れが早く、殻を一枚脱いできても過ごしやすい気候だった。
天気の良い日曜日ということもあり、外はにぎわっていた。ちょうどその日は選挙があったため、小学校の体育館はにぎわっていた。久しぶりに外に出たせいか、小石につまずいて転びそうになった私は「にぎわ!」って言った。

それにしても娘の成長というのは、今年の春の訪れよりも早い。これまで乗っていた自転車は幼稚園時代に買ったものだったので、高さが合わなくなってしもうた。急に昔話みたいな言葉遣いになってしもうた。
本来なら昨年、新しい自転車を買うべきだったところ、だましだまし一年もたせた。しかし、そのだましだましをしているうちに、娘の身長は一気に伸びた。食事中に呼ばれ、一仕事終えて戻ったときのカップ焼きそばの麺よりもずっと伸びた。誰かが打ち出の小槌を振ったに違いないなんて思ってしもうた。

そんなこんなで店舗に到着。
早速、娘は自転車を物色する。色やデザインを吟味し、味や匂いをたしかめる。お気に入りのものが見つかったようで無事に購入。
その日のうちに乗って帰るつもりでいたのだが、日曜で混み合っていたのか、お渡しまで時間がかかるという。きっと自転車の点検、整備、メンテナンスなどやることがかなりあり、さらに、店員さんから自転車へのお別れのお手紙の朗読、思い出写真のスライドショー、フルーツバスケットにハンカチ落としなどやることがかなりあるのだろう。

私はハンカチで目元を拭いながら店員さんに「みなまで言うな」とうなずく。それならば明日引き取りに参るので、今宵は存分にお別れの儀を楽しんでつかまつれとだけ伝え、その日は帰った。歩いて。こんなことなら車で来ればよかったぜど畜生だなんて悪態はついておりませんのでご安心ください。

うーわ、なんでこんなに長くなっちゃうんだろう。
実は言いたいことは、翌日、自転車をとりにいった後に起こる大事件についてだったのに、もうだいぶ書きすぎちゃった。ここから十万字も書いてたら読む方もしんどいと思うので、めずらしく次回に持ち越しとさせていただきたき候。

次回、《十万字と豪語したがきっと二千字以内》をお楽しみに。

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