頓珍漢の宴を解釈してみる

ピノキオピオーの楽曲で、頓珍漢の宴という物がある。

サビの流れるような熟語が特徴的な曲で、コメント欄には「俺歌えたぜ」っていう中高生がわんさかといる。この楽曲のおもしろい点の一つに、歌詞のストーリーがある。
サビ以外は飲み会にでも来たかの様な歌詞。
あまり他では見られない詩だ。
しかしサビは単語の羅列。一見意味のない様に思える。
しかし、単語の意味を一つ一つ解釈して見ると、曲全体がひとつのストーリーになっているのではないか、と思う。
というわけで3億番煎じの歌詞考察をしていきます。

○考察

グズゴズメズ グズゴズメズ

まず、冒頭のグズゴズメズ。
呪文にしか聞こえないが、これは牛頭馬頭(ごずめず)に因んだものだと思われる。
牛頭馬頭に関しては後述する。

さあ わかるかい わからないかい
もう慣れたもんだと割り切るかい

イントロが終わるや否や、急に問いかけてくる。
そして間髪入れずに質問責めをしてくる。
しかし、何に対しての質問かまだわからない。

3名で予約した「牛頭馬頭」です
あと1名遅れてやってきます

こちらの疑問も置いてけぼりに、次へ進んでしまう。
ここでまた出てきた牛頭馬頭について解説する。
牛頭馬頭とは、仏教において地獄で亡者を責める役職の獄卒。
牛の頭に体は人間の牛頭と、馬の頭に体は人間の馬頭で牛頭馬頭。
二人一組。
そんな牛頭馬頭も、ストレスが溜まるのだろう。
毎日毎日、亡者を責めまくる生活を送っているのだから自然なことだ。
最初の数日は楽しいかもしれないが、何日もそれが続けば狂いそうだ。
もしかすると、地獄で働く者の賃金もそう高くないかもしれない。
地獄も不景気なのかも。
低賃金で過酷な仕事を続けていれば、そりゃ相方とも飲みに行きたくなるもんよ。
ちゃんとお店を予約しているあたりも。なんだか人間くさくて牛頭馬頭を好きになりそう。
しかも牛頭馬頭って。普通どっちかの名前で予約するやろ。
山田と鈴木が予約する時に山田鈴木とは書かんやろ。しかしそんなとこも好きだぞ。
どうやら1名遅れてやってくるそうだが、きっと彼こそグズに当たる人だろう。
グズは漢字で愚図と書ける。
愚図とは、以下の意味である。

はきはきせず、動作・決断がにぶいこと。そういう人。

やはり愚図で間違い無いだろう。
飲みの約束に遅れてくるなんて、まさに動作が鈍い。
彼は今回だけでなく、これまでも、これからもそう有り続けるだろう。
しかしそんな愚図を見捨てず、付き合い続けてくれる牛頭と馬頭はなんと良いやつなのだろう。

接客は概ね好印象 
だけど頭の中は無法地帯
古今東西で腹の探り合い
愚痴と無知を放り込んだ闇鍋で宴会 

店員さんの接客に好印象を持つ牛頭と馬頭。
きっと、かわいいお姉さんが「はい、牛頭馬頭さんですね~!ご案内致します!」とでも言ってくれたのだろう。
しかし、彼らの脳内は無法地帯だ。
無法地帯というからには、もうすごいんだろう。
法が無いんだから、きっと脳内ではあんなことやこんなことをしているのだろう。
まったく、牛頭馬頭も俗なやつだ。
そしてこれから始まるのはただの飲み会じゃなくて、愚痴と無知を放り込んだ闇鍋で宴会だ。
女子会や連れとちょっと飲むくらいのことではなく、もはや魑魅魍魎の域だ。
ところで、闇鍋を許可してくれるお店も中々だが、遠慮もせずその闇鍋に愚痴と無知を放り込む牛頭馬頭も大概だ。
そういうのは連れの家とかで楽しむもんじゃないのかね。
これから始まる楽しい宴会に心を躍らせる牛頭と馬頭之情景が浮かぶ。
だって既に脳内は無法地帯なんだからね。二人のテンションが伺えるよ。

乾杯! 悩みも怒りも 
一生 人である縛りも
アルコールに混ぜて一気飲み
意気揚々とスイッチをポチ

いよいよ乾杯。
いつだって酒の席は乾杯から始まる。
悩みも怒りも、人である以上は一生ついてくるものだ。
彼らもまた、それらをアルコールに混ぜて一気飲みする。
地獄で働く者も、我ら社畜となんら変わりないのだ。
しかし、一気飲みは良くない。急性アルコール中毒は恐ろしいからだ。
気持ちはわかるが、彼らはそのあたりを理解しているのか?
少し心配に思う。
そして、アルコールが入り更にテンションが上がった彼らは意気揚々とスイッチを押す。
意気揚々とだ。普通に「あ、俺押すわ」とかじゃなくて、きっと「牛頭っち押しちゃいまーーーす!」みたいな感じで押したのだろう。
ここからも彼らのテンションの高さが伺える。

ポチ ポチ おかわりが欲しい 
n番テーブル スイッチ ポチ
ポチ ポチ 軽薄なオチ 
世界が終わる スイッチ ポチ

やはりテンションが高い。
一度押すのでは満足できず、連打している。
さっきの節も合わせて計7回も押している。
さらに、PVだと歌詞以上に連打している。

画像1

しかも最後に関してはトリビアの泉に出てくる「へぇボタン」だ。
きっと持ち込んだのであろう。
さすがにこれらの行為には店員さんもキレていいと思う。
ここで注目したいのが最後の節だ。
世界が終わるスイッチ ポチ。
これはもしかしたら某国の核発射スイッチのことかもしれない。
さすが地獄に仕える者、指先一つで世界を終わらせられる。
人間っぽいところもあるけど、彼らが恐ろしい者であることは忘れてはならない。

劣等感 武器に脅すんじゃねえ
優越感の押し売りすんじゃねえ
なんて右ならえ滅多打ちもねえ
シーザーサラダは取り分けますね

急に怒り口調になった牛頭と馬頭。
アルコールが入って理性を失いつつあるのだろう。
劣等感を武器に脅す、というとなにか矛盾している気がする。
が、「自分は劣っているから」と理由を付けて、自分を守り、時にはそれを武器に振る舞う人たちに対する警告ともとれる。
優越感の押し売りはちょっとよくわからないが、大体似たようなもんだろう。
続く、なんて右ならえ滅多打ちもねえという部分。
右ならえとは久々に聞く言葉だ。
一応意味を書くと、そのままの意味で自分の右手にいる者にならえという意味。
要するに他者にならって同じ様にしろ、と捉えることができる
これは、もしかしたらルールに縛られ個性を失い、出る杭は打たれる現代社会に対する風刺なのかもしれない。
地獄というこの世から離れた視点だからこそ見える、現代社会の不条理さ。
客観的、というよりは地獄観的。
そうキレ散らかす二人だが、シーザーサラダを取り分けるとなると急変する。
急に敬語になり、「あ、いいよいいよ、俺が取り分けるよ」みたいな雰囲気になってしまう。
地獄に仕え、日々血肉を見ている彼らもシーザーサラダは好きなのだ。
もしかしたら、シーザーサラダは世界平和につながるキーアイテムなのかもしれない。
みんなもシーザーサラダを食べよう。
そして、彼らのように来た食べ物を率先して取り分けられる気遣いも持とう。

さあ いただきます
頓珍漢 消化器官 対 毒性 暴飲暴食 昏倒寸前
妄言多謝 悪酔強酒之弁 一触即発
前後不覚 無限地獄後 理論武装 自問自答 続行

いよいよサビだ。
少し長いので前半と後半で分けさせて貰った。
シーザーサラダも取り分け、頼んでいた料理も届いたのだろう。
ちゃんといただきますと言うあたり、育ちの良さが垣間見れる。
ふと自分を振り返ってみると、ご飯を食べるときにちゃんと「いただきます」と言えているだろうか。
家では言っていても、外食する際はついつい言わない人も多いのではないだろうか。
今一度、食物への感謝を考え直すのもいいかもしれない
そして、怒涛の熟語ラッシュ。
ここで少し聞き慣れない言葉がでてくるので、先に解説しておく。
妄言多謝とは、口から出まかせに、いい加減な言葉を並べたてたことを深くわびることらしい。
悪酔強酒は望んでいることとやっていることが相反する様子で、酔うのは悪いとは思いつつも無理に酒を飲むことが由来らしい。
なんとなく熟語の流れを物語にしてみると、こんな感じになると思う。


酔いが回ってきていよいよ頓珍漢なことを言う様になり、体内では消化器官毒性(美味しいものに限って体に悪い)が闘いを繰り広げる。
しかし彼らの暴飲暴食は止まらず、今にも昏倒しそうなくらいになってきた、
すこし落ち着いて来て、さっきまでの自分の言動に反省し「少し休憩しよう」と思いつつも、楽しくて無理に酒を飲んでしまう様子だろう。
正しい判断もできず、まさに誰かが何か下手なことを言えば爆発しそうな雰囲気だ。
後先がわからなくなるほどに泥酔し、それが無限に続くような感じだが、酔って逆に口が達者となり理論で自分を武装しつつ自問自答する。

意外に物語になっているっぽい。このまま後半もやってみる。

毀誉褒貶 流言飛語 罵詈雑言 嘲笑 炎上 防災訓練
疑心暗鬼 虎視眈々 煽情
諸行無常 伽藍堂 酩酊千鳥足之百鬼夜行

また難しい言葉が沢山並んでいる、
流言飛語とか20年生きてて初めて聞いた。
意味の解説をすると、毀誉褒貶とは頬めたりけなしたりする世間の評判で、流言飛語は根拠のないでたらめな情報のことらしい。
個人的に、サビの後半部分は彼らの様子というよりは、現代の風刺に思える。

世間の意見はデマや虚偽の情報によって左右され、、非難される者は多方向から罵詈雑言を浴び、それを見る者は嘲笑う
それが俗に言う炎上で、いつ自分がボロを出し世間の標的になるかわからず、自分が炎上しない為に結局ことなかれ主義になってしまう。
そして、人々は疑心暗鬼になり、目立つやつが出てこないか虎視眈々と構えるようになり、それが扇型に広まっていく。
まさに現代におけるSNSの炎上みたいだ。
しかし諸行無常、つまりいつかは朽ちて無に還り、がらんどうになる。
そんなことを議論しながらも、牛頭と馬頭は酩酊しまるで千鳥足の百鬼夜行みたいになってしまった。


少々無理があるが、大体こんな感じの解釈をしている。
続いて二番へ行きましょう。

人生相談の模範解答
期待通りすぎて響かない
グラスを倒して水浸しにして
誤魔化しても解決しない

一旦落ち着いて、人生相談をする牛頭と馬頭。
しかし、返ってきた答えが期待通りすぎてちっとも響かない。
グラスを倒してテーブルを水浸しにして誤魔化しても、店員さんに迷惑をかけるだけで何の解決にもならない。
店に入ってからの牛頭と馬頭、いくらなんでもやりたい放題ではないだろうか。
よく店から追い出されないな。
もしかしたら、店員さんも「またあいつらやってるよ」くらいに思っているのかもしれない。
なんとも優しいお店だ。

因果応報 戒めを受け
頼んでいた唐揚げがまだ来ない
先伸ばしで増えていく諸問題
やっと遅れて駆けつけた知り合い

グラスを倒したのが牛頭なのか馬頭なのか定かでは無いが、因果応報を受けることになる。
頼んでいた唐揚げがまだ来ないのである
飲食店で頼んだ品がなかなか来ないとイラつく人も多いが、お店も忙しいので仕方ない。
しかし唐揚げとなると、彼らも楽しみにしていたであろう。
飲み会で起きるあの雰囲気はたしかに嫌なものである。
にしても、届くのが遅れる唐揚げから先延ばしにしていく諸問題を連想する彼らもなかなかすごいと思う。
普段からあらゆる問題について考えているのだろう。
そうこうしていると、一人遅れて駆けつける。
愚図だ。
筆者も完全に忘れていたし、大遅刻もいいとこだ。
やはり、愚図はそういうやつだった。

乾杯! 改めもう一度
いつか訪れる別れも
アルコールに混ぜて一気飲み
下戸や未成年はジュースでいい

ともあれ、改めて乾杯。
今は仲良くやっている3人も、いつかは別れが訪れる。
でもそんないつ起こるかわからないことを考えて不安になっても仕方ないし、アルコールに混ぜて一気飲み。
酒はすべてを忘れさせてくれる。
下戸は無理して飲まなくてもいい。アルハラは良くない。
未成年は勿論酒はだめだが、ジュースで乾杯してもいい。
しかしここで疑問に思うのが、牛頭と馬頭で乾杯したときにはこのような歌詞はなかった。
つまり、愚図が下戸、もしくは未成年という疑惑が浮上する。
下戸と考えるのが自然だろうが、未成年の説も否定はできない。
愚図の年齢はわからないが、未成年だとしたらこのままでは将来が不安だ。
きっと、約束は破り、時間にも超ルーズな大人になってしまうだろう。

全能感 耳塞いでんじゃねえ
背徳感 食い散らかすんじゃねえ
この玉子焼きは注文してねえ
ああ、でも 大丈夫です

また口が悪くなる3人。
全能感とは、自分が何でもできるとという感覚のこと。
背徳感は人の道から外れたことに後ろめたい感覚のこと。
もう議論はヒートアップ。
そんなとこに届いた玉子焼き
しかしそれは彼らの注文したものではなく、つい怒り口調で店員さんに答えてしまう。
しかし、その直後には敬語でしっかりと対応しているあたり、まだ理性は保てていることが伺える。
怒っている人に関係ない人が話しかけてもなんか怒った言い方されることありますよね。
そんな感じ。
にしてもこの間違えて来た玉子焼き、きっとオーダーミスで先述の唐揚げと入れ替わっちゃったものと思われる。
つまり、他の席に唐揚げが運ばれていったということだ。
しかし今の彼らには唐揚げなどどうでもいい。
全能感の耳塞ぎと背徳感の食い散らかしでいっぱいだ。
でも玉子焼き来ちゃったし、酒でも飲もうか。

いただきます
頓珍漢 消化器官 対 毒性 暴飲暴食 昏倒寸前
妄言多謝 悪酔強酒之弁 一触即発
前後不覚 無限地獄後 理論武装 自問自答 続行
毀誉褒貶 流言飛語 罵詈雑言 嘲笑 炎上 防災訓練  
疑心暗鬼 虎視眈々 煽情
諸行無常 伽藍堂 酩酊千鳥足之百鬼夜行

結局、一番と同じ阿鼻叫喚な様子に。
やはり酒は人を狂わす。

起死回生 重火器 対 徒手空拳 弱肉強食 家内安全 
表裏一体 殺傷事件 性倒錯 愛情表現
大義名分 主従関係 人心掌握 強迫観念 
笑い上戸 泣き上戸 絡み酒 汚い床に寝っ転がって

また別の熟語ラッシュがやってきた。
これを物語に解釈するのはちょっと難しいが、無理やりにでもやってみる。


飲みすぎてぶっ倒れる寸前だったがはっと目が覚め、重火器丸腰で立ち向かう英雄を思い出して自分もああなれないかなぁと思うが、所詮現実は弱肉強食の世界なのでとりあえずできそうな家内安全でも祈ろうかー、と思う。
そんなこんなで世間からは異常性癖と呼ばれるものも、本人にとっては愛情表現の一つの形なのかもしれないな、と考える。
さらに大きなことをやるにはそれなりの理由があるし、それには主従関係が築かれているけどそれが行き過ぎると人心掌握してしまうし、それは打ち消そうとしてもいつまでも心にまとわりついてくる恐ろしいものだ...
と考えてたら仲間の一人は笑ってばっかだし、もう一人は泣いてばっかだし、自分も絡み酒しちゃうしなーとか思うけど疲れちゃったし寝転がるか!


といった感じだろうか。
なんとも理解できないが、酩酊状態の脳内なんてこんなもんだろう。
その魑魅魍魎観を表したものがこの歌詞なのだろうか。

宴もたけなわ 
ラストオーダー? あ、ええと
お冷三つで 

そうこうしてたら意外と時間経っちゃってったみたい。
ラストオーダーを聞かれるも、十分楽しんだし、お冷でもお願いしよう。

頓珍漢 消化器官 対 毒性 暴飲暴食 昏倒寸前
妄言多謝 悪酔強酒之弁 一触即発
前後不覚 無限地獄後 理論武装 自問自答 続行
起死回生 重火器 対 徒手空拳 弱肉強食 家内安全
表裏一体 殺傷事件 性倒錯 愛情表現
大義名分 主従関係 人心掌握 強迫観念 
毀誉褒貶 流言飛語 罵詈雑言 嘲笑 炎上 防災訓練 
疑心暗鬼 虎視眈々 煽情
頓珍漢の宴 御会計

お冷でさっぱりしながら、今日の宴会を思い返す。
色々どんちゃん騒ぎしたけど、やっぱり仲間と飲む酒は美味いし、楽しいもんだなぁ。
死ぬまでにあと何回こうやって飲めるかわからないけど、また仲間と飲みたいな。
そんなことを思いながら、お会計を済ます。

○おわりに

当たり前ですが、サビ以外は割と物語っぽく解釈できました。
そりゃそうだ、ほぼ物語みたいな歌詞だから。
サビはもうゴリ押しです。というか後半ふざけました。
一部それっぽくなりましたが、無理がある。
というのも、恐らくサビの作詞自体がすべて意味を持った言葉の羅列とは限らない、と思うんです。
酔っ払って、理性を失い騒ぎまくっている様子を上手く表現したものだと、私は思います。
とはいえ、この歌詞の意味なんてピノキオピー様しか知らないですし、そもそも歌詞に意味なんて無いのかもしれませんが。

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