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一章 企業と倫理

記事一覧
一章:企業と倫理
二章:私事と公共
三章:企業と公共
四章:道徳と良心
五章:浪漫と算盤


はじめに


私は、労働人口不足の廃棄物業界をITの力で省力化することをミッションに、事業開発を行っているファンファーレというスタートアップ企業の代表です。AIが効率的な廃棄物回収の配車計画を作成する「配車頭(ハイシャガシラ)」というサービスを提供しています。
年齢は29才、会社をつくって1年半ほどが経ちました。少しづつではありますが会社を成長させることができ、成長と社会貢献の両立を目指す「ゼブラ企業」として日経に取り上げていただけるようにもなりました。

学生の頃より「社会になにか貢献できる事業に取り組みたい」と活動していたのですが、ファンファーレを起業して事業開発を進めるなかで、そもそも「社会に貢献する」ということの意味を改めて考えるようになりました。そこでこのnoteでは、企業として企業倫理を考える前に、まずは「わたしの企業倫理」と題して、私個人としてファンファーレの企業倫理をどう考えるのかを言語化することにしました。これを元に、今現在、あるいはこれからファンファーレにかかわっていただける方々と議論して深めていこうと思います。

学生のときの活動からファンファーレ起ち上げまでについては、よろしければ以下の記事「わたしたちについて」をご覧ください。


なぜ企業倫理について考えるのか


さて本題に入りましょう!まず最初に私が考えたことは、「そもそも会社は利益を上げることと同時に、社会貢献について考える必要があるのだろうか」ということです。これは「企業はより倫理的であるべきか」という問いになおしてもよいと思います。もちろん、法令を遵守することは当然です。それに企業である以上、利益を上げることも大前提です。では法を守って利益を上げていれば、企業はそれでよいのでしょうか?もちろんそれでよいという考え方もあるでしょう。
ただ、いろいろと考えた結果、わたしの価値観として、社会的によりよいものを提供できれば、それに越したことはないと考えています。そこで、私は自分で会社をやるからには、個人のエゴとして欲張って両方を追いかけていきたいと思っています。では、「スタートアップが創業期から成長し続けるために企業倫理を考える」ことの意味について、①スタートアップが、②創業期から、③成長し続けるためにという3つのフェーズにわけて自身の考えを述べたいと思います。

1 “スタートアップが”「私的領域」のみについて考えるだけでは不十分


まず1つ目のフェーズであるスタートアップについてです。まず、現在、企業の社会的な影響力が大きくなっています。歴史的にみても、現在の企業の規模は大きく、政治的に設定された境界線を越えて活動している企業も多く存在します。同時に、資本と情報の集積スピードも非常に速い時代となっており、その結果として、スタートアップのような小さな単位で意思決定できる集団が短期間で急成長できる状況が生まれています。このように、過去と比べて企業の規模や影響力、成長スピードが変わっていることを考えると、企業倫理の捉え方も、それにあわせて変わっていくべきではないでしょうか。
このことは、「公共」の歴史を考える延長線上で、考えることができるのではないかと考えています。「公共」という言葉は、「私的」という言葉と対になっています。企業とは本来、自分たちの利益について考える「私的領域」のアクターのはずで、歴史的にみれば「公共領域」のアクターとしての位置づけは弱かったと思います。ただ、先ほども述べたように、スタートアップを含む現在の企業の規模や、社会的に影響を与える範囲は、過去の歴史からは想像できないほど大きくなっています。そのような状況下では、従来と同じように企業が「私的領域」のみについて考えるだけでは、不十分になっていると考えています。


2 “創業期から”考えることに意味がある


ただ、ファンファーレは、現時点では創業間もないスタートアップ企業であり、まだまだ社会的に大きな影響力を発揮できるとは言い難い。では、ファンファーレが大きくなってから、企業倫理についても考えるべきでしょうか。
私は、そうは考えていません。
なぜならば、倫理規範を作成した瞬間から企業が倫理的に振る舞えるのではなく、日々発生する事業の諸問題について、日頃から考えていくことで会社としての企業倫理が育ち、それが組織文化として定着していくと考えるからです。なので、創業期からこのことを日々考えていく必要があるといえます。また、廃棄物業界の方々には、意識するにせよしないにせよ、私を含む多くの方々が日頃お世話になっている業界のはずです。そして、電気・水道などと同じレベルの社会インフラである廃棄物業界の、労働環境や業務プロセスは、まだまた良くなる白地があると強く感じています。自分にできることを考え、そしてそれが自分だけの思い込みにならないように、業界の方々に対してリサーチと共感を重ねてきました。その結果が、今のサービスにつながっています。
そして、先ほど廃棄物業界は、多くの人がお世話になっていると書きましたが、その意味で、ファンファーレ自身も間接的により広く社会につながっている企業だと考えています。だからこそ今から自分たちの影響力や企業倫理について考えておくことが、重要になると思います。それは、次の“成長し続けるために”という理由にもつながっていきます。


3 ”成長し続けるために”社会からの応援がより必要に


成長し続け、持続可能な会社にしていくためにも、企業倫理は重要だと考えています。なぜならば、企業活動を継続していくうえで、多くの人から応援してもらえる企業であることは重要です。現在の人々は、ただ安くて便利だからという理由で商品を手にとるだけでなく、その社会的意味など購買する体験を価値として、商品を手に取ることが多くなっています。私はUX職という専門家として体験よる付加価値について長年考えてきました。この傾向は、生産性向上によって、世界中で最低限の衣食住がより簡単に満たせるようになることで、ますます加速します。
より多くの方に応援し続けていただくためには、しっかりとした企業倫理があること、またそれに基づいて行動をしていることが重要です。このような状況から、私は企業が社会の倫理的な要請に応えていくことが、企業の持続可能性を高める条件になっていると考えています。わたしはこの変化を「企業倫理の民主化」と呼びたいと思います。このことは、「社会が企業を管理する」というような強い意味は含みません。あくまでも、広く社会の価値に応えることができる環境を整え、また同時に社会にも発信していく相互関係を示すものです。そのようなポジティヴなフィードバックが働き続けることが「企業倫理の民主化」であり、企業の持続可能性を高める条件になると思います。


以上が「スタートアップが創業期から成長し続けるために企業倫理を考える」必要性を感じている理由です。このような理由から、私は社会的な利益とファンファーレの利益を一致させたいと強く願っています。

それでは次回以降は、「公共」をキーワードに、社会的な利益とは何かについて考えてみたいと思います。


補足:企業以外じゃダメなの?


社会から応援してもらうためにも企業倫理が必要、と書きましたが、同時に社会的な活動を継続するうえでも、営利企業というかたちが今の私にはしっくりきています。「社会に貢献する」というとき、それは別に会社でなくてもいいわけです。NPOやNGO、ボランティア団体、公共サービスの供給者という意味では行政という選択肢もあります。でも、私は企業活動を通して、社会をよりよくするサービス、価値観を提供していくことを選びました。もちろん、他の選択肢がダメだというわけではありません。ただ、私自身は企業のプロセスに、継続的な活動の可能性をみている面があります。何かプロジェクトを起こしたときに、しっかりと利益を出して、従業員に還元していく。このサイクルを回すことが、継続的にプロジェクトを続けていくうえで非常に重要だと感じています。それは、世の中への価値提供「社会貢献」を継続するためにも、組織内部の人たちが疲弊しないことが重要だと考えているからです。もちろん、マネタイズは難しいけれど、重要なプロジェクトというのも多くあると思います。そういったプロジェクトも、もちろん重要だと思いますが、私自身は企業活動の社会的インパクトの大きさと、継続性という観点からあくまでもマネタイズしたうえで、社会的な活動に参加していきたいと考えています。よって、持続可能性を高めるためにも、社会から応援してもらえる企業を作る、そしてそれに応えられるようしっかりと従業員にも還元していく、そのようなループがまわるようにするためにも、「企業倫理」は重要なのではないかと思います。

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