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西洋菓子店プティ・フール
千早茜さんの「しろかねの葉」が今年の直木賞を受賞したというニュースを知ったとき、偶然読んでいたのが千早茜さんの小説だった。
それがこの「西洋菓子店プティ・フール」。
千早さんの作品が直木賞候補になっていることはまったく知らなかったので、嬉しい偶然。
東京下町の老舗西洋菓子店「プティ・フール」を訪れる人たちが各章で語り部となり、一つの物語を織りなす連絡短編集。
一流パティスリーで修業し、尊敬する祖父の店である「プティ・フール」で働き始めたパティシエの亜樹、亜樹にひそかに好意を寄せるパティスリー時代の後輩、その彼に片思いするネイリスト、プティ・フールの常連客の主婦…
各章にはヴァニーユ、カラメルなどお菓子の材料の名前が付き、それらになぞらえて各登場人物たちのさまざまな心情が語られる。
一見キレイなお菓子やファッションの世界観に人間のダークな感情が乗っていて、変な例えだけどゴスロリの人みたいな小説。
連作短編集とのことだけど物語は繋がっているのですが、最初の章だけ浮いていたのが気になった。
最初の章では亜樹の少女時代のヤンデレな友人が登場し、彼女が亜樹の人格形成に影響を及ぼしたように書かれていて、(百合か?友達同士のマウント取り合いドロドロ系か?)とその後の展開を予感させるものだったけど、それ以降まったくそんな展開はなく、再び亜樹のモノローグになる最終章で急いでつじつまを合わせるかのようにその友人に一瞬だけ触れて終わってしまいました。
他の章も読後感はスッキリしませんでした。
きちんと物語が着地したのは常連客の主婦のお話「カラメル」くらいでしょうか。
たぶん、他の人物との関わりが一番少ないからでしょうね。
あちこちに手を広げず、主人公亜樹の人物像や変化がもっと丁寧に描かれていたらよかったな。
…なんて思いながらも、この小説にはキレイで美味しそうなお菓子がたくさん出てきたので、頭の中はケーキでいっぱいになってしまい、読了後にデパ地下でケーキを買って帰りました。
お菓子はほとんど食べないので、私にとってはかなり珍しいこと。
つやつやのベリーのムースは目にも舌にも美味しかった!
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