いちごムース、階段、バッファローの群れ
数の子を冷蔵庫の奥に見つけた。驚いたことに賞味期限は切れておらず、捨てるわけにはいかないけれど、六月に食べる気にはなれない。
とりあえず見なかったことにして、手前のガラスカップに盛り付けたいちごムースを3つ取り出した。
低い丸テーブルを囲む友達は顔をあげて、わあーおいしそうと声をあげる。
私はテレビをぼんやり見る。画面のなかのバッファローの群れがハイエナから逃げる。
10分したら自然番組はオペラになり、みんなお酒を飲んでぐでんぐでんになり、23時半にそれぞれうちに帰る。
玄関でバイバイしたあとシンクに並んだいちごムースの器を見て、そうか妹の誕生日だったと気がつく。
ラインを見ると母親⇔妹のやりとりが33件未読になっていた。そこに「誕生日プレゼント明後日になりそう」といきなりコメントいれて、アマゾンでなにかプレゼントらしいものをあさる。
テレビはさらに中国語講座に切り替わる。
外階段では帰ったはずのエリが電話でもめている。
0:30の表示、ラインに並ぶバースデーケーキの写真、妹のインスタ更新。
「私はそういうつもりで言ったんじゃない」とエリが声をあげるから窓から外階段の方角をのぞいたら、エリのことを空からさそり座が突き刺してた。
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