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古寺炎上

15年ほど前だったと思う。遠戚の菩提寺が燃やされた
古い木造の伽藍はよく燃えた

火をつけたのは近所に住む引きこもりの男で、
その朝、ライターと新聞紙を持って家を飛び出したらしい

伽藍に残った水分の爆ぜる音がいつまでも聴こえてきた
自坊に帰ってからもその音は頭に残っていた

しばらくしてその遠戚は亡くなった
清潔な焼き場では音もなく、その人は骨だけになった

濾過された薄い煙が空へと昇っていった

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