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8km未満の移動の25%を電動自転車に置き換えることは33.8万台分の自動車交通の削減と等しいと試算

case|事例

ロッキーマウンテン研究所(RMI)は、電動自転車の普及が環境や社会に及ぼす影響を評価するためのツール「E-Bike Impact calculator」を公開した。このツールでは、短距離移動を電動自転車に置き換えた際の効果を2つのシナリオで評価することが可能。ひとつは、現在の与条件の下で都市全体の影響を評価するもので、10年間の累積効果が算出できる。もうひとつは、電動自転車の普及のためのインセンティブを変数として評価するもので、市の予算やスケジュール、車両タイプ、市民へのインセンティブなどを変数として想定する政策の潜在的な効果が算出できる。

シミュレーションでは、温室効果ガスの削減量、NOxやPM2.5、一酸化炭素などの大気汚染物氏の削減量、自動車走行台キロの削減量、燃料費やメンテナンスコストの圧縮に伴う利用者にとっての経済的なメリットなどの指標がアウトプットされる。

RMIが開発したインパクト評価ツールは、政策決定者がデータドリブンなアプローチで意思決定することを支援し、定量化した環境的なインパクトや経済的なインパクトに基づいて政策決定ができるようになると期待される。

RMIは、インパクト評価ツールの公開に先立ち、シミュレーションのデモンストレーションを公開した。このデモンストレーションでは、5マイル(約8km)の短距離移動の25%を電動自転車に置き換えた場合のケースを想定している。結果として、環境面では都市全体の交通量のうち台キロ換算で3%の削減効果が示されており、これは338,000台の自動車が道路からいなくなったインパクトと等しい。また経済面では、自動車の維持コストや燃料のコストが圧縮されることで総額で毎月9,100万ドル(約141億円)もの節約効果があると試算されている。さらに社会面での効果は直接計算では示されてはいないが、幅広い電気自転車の普及によって大気汚染が改善されることで公衆衛生にプラスの影響をもたらす可能性やアフォーダブルな移動手段が提供されることで移動制約の解消につながる可能性が指摘されている。

insight|知見

  • 確かに気候変動対策で電気自動車の普及の重要性についてはよく言及されますが、電動自転車の普及は見過ごされているように思います。

  • 国交省も5km以内の移動であれば自転車が最も所要時間が短くなると示しており、電動自転車の普及が進むことで自転車の移動が優位になる距離帯が拡がるように思います。

  • また、記事で指摘されているように、このようなシミュレーションツールが政策立案をより精緻化するだろうなと思いますが、根拠に基づいて対話ができるので市民とのコミュニケーションツールとしてもとても有用ではないかと思いました。