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シンガポールのデジタルの持続可能性推進政策

case | 事例

シンガポール情報通信メディア開発庁(IMDA)と政府技術庁(GovTech)は、情報通信セクターのグリーン化(Green ICT)と、デジタル技術を活用したその他の経済のグリーン化(ICT for Green)に関するデジタル持続可能性イニシアチブを発表した。イニシアチブはシンガポールの環境行動計画である「シンガポール・グリーン・プラン2030」と、シンガポールの公共部門が目標とする2045年のネット・ゼロ達成に寄与するものである。

発表された目玉政策は、IMDAの3,000万シンガポール・ドル(約33億円)の「グリーン・コンピューティング・ファンディング・イニシアチブ(GCFI)」の立ち上げで、ソフトウェアの設計によりエネルギー効率の最適化を進める研究を推進するものである。情報通信業界において、ハードウェアの効率向上は必要だが、急速なデジタル化に加えてAIのような技術の利用が増える中、それを支えるコンピューティング(演算)やソフトウェアから視点のエネルギー効率改善も強く求められているとしている。このグリーン・ソフトウェア開発に参加する産学界のパートナー(アマゾン・ウェブ・サービス、NCS社、アント・グループ、シンガポール工科大学など)は、自身のアプリケーションに技術を適用して排出量削減などの影響を測定する試験に参加し、結果をもとに将来的にはグリーン・ソフトウェアの開発ガイドラインを策定し、シンガポールの競争力につなげることが考えられている。

情報通信セクター以外のデジタル技術を活用したグリーン化に関しては、民間向けにはアドバンスト・デジタル・ソリューション(ADS)プログラムが用意され、資源の最適化や排出量管理など持続可能性のための9種類のデジタル・ソリューションの導入の際、最大70%の助成金が支援される。政府部門に関しては、GovTechがシンガポール政府のデジタル変革を推進しており、デジタル署名・決済の導入促進、リモートワーク等の変革、政府内の情報プラットフォームの開発、政府データセンターの統合、政府における商用クラウドサービスの採用、環境政策立案・運営・データ分析などの導入を進めている。

insight | 知見

  • 企業がデジタルソリューションを導入する際の補助金や、政府部門のデジタル化は日本でも盛んに進められていますが、エネルギー効率の高いソフトウェアを開発を支援することで情報通信企業の将来の競争力を高める、というのは戦略的だと思いました。

  • 日本の情報通信企業はハードウェア分野は強いがソフトウェアは弱いと言われてきていますが、将来の社会変化を見据えて、ニッチ分野からでも日本の強みが発揮されるようなソフトウェア分野に投資をすることが必要かもしれません。