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香港のスマート・モビリティ化が軌道に乗りはじめている

case | 事例

香港は、交通システムをスマートで持続可能なモビリティ・エコシステムに変革するために前進している。2020年に香港政府が発表した「香港2.0のためのスマートシティ青写真」では、生活と密接な関わりがある交通が香港のスマートシティ開発の中心として位置づけられているのだ。政府のバックアップのもと、効率的な交通管理、公共交通機関の利用の最適化、道路渋滞の緩和、二酸化炭素排出量の削減、持続可能な開発を促進する革新的な技術の推進を目指している。香港政府は3つの主な戦略の下に9つの交通戦略提言をまとめているが、3つの戦略とは、楽しい移動(Enjoyable Journeys)、つながりの良い都市(Well-connected City)、健康的なモビリティ(Healthy Mobility)である。

戦略のもとに進められている主な取り組みには、様々な交通施設やアメニティにワンストップでアクセスできる次世代交通インターチェンジ・ハブの開発、交通検知器と車線制御信号を備えたスマート自動車道の開発、自律走行車の推進、電気自動車や新エネルギー自動車を推進、環境に優しい大量輸送システムの整備などがある。また、香港のスマート・モビリティ・システムにおいてビッグデータの活用は欠かせないが、交通管理と輸送効率を向上させるため、香港天文台により交通データ分析システムが開発され、降雨量、交通事故、香港のさまざまな道路区間における所要時間など、過去およびリアルタイムの包括的なデータから、90分先の交通所要時間を予測することが可能となっている。道路利用者は道路交通や天候の状況からルート計画が可能で、特定の道路区間で渋滞が発生した場合に警告を受け取ったり、運輸省の交通管理と緊急時対策も強化できるようになっている。

香港は自律走行車に対しては、公共の安全の確保を前提に公道での幅広い試験と利用を可能にしており、2024年末までに住民が公道で自律走行車を体験できるようにすることを目標に、V2X(Vehicle-to-Everything)通信と自律走行車の技術開発を促進している。その他香港政府による資金援助で、スマートモビリティ・ソリューションの開発基盤が整いつつある。グリーン・ソリューションも推進しており、2027年までに700台の電動バス、3,000台の電動タクシー、グリーンな大量輸送システムの導入を目指している。

insight | 知見

  • 交通のスマート化の戦略で「つながりの良い都市」「健康的なモビリティ」はよく目にする考え方ですが、「楽しい移動」は大事な視点だと感じました。記事を読んでもどのようにこの楽しさを作っていくのかは分かりませんでしたが、我々の通勤通学を含めた日々の移動に「楽しさ」が加われば、生活がとても豊かになるのではないかと感じます。公共交通機関が「安全」や「定刻・安心」などに加えて「楽しさ」をサービス提供の基本的な考えにするといいのではないかと思います。

  • 自動運転(自律走行)は中国本土では進んでいますが、香港も同じように積極的に進みそうですね。日本ではまだライドシェアの議論が始まったばかりの段階ですが、10数年先の自律走行社会を見据えて、データの取得とそのデータから交通をスムーズにしていくようなインフラのアップデートの議論を急いで欲しいです。