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バーチャル・シティがもたらすリアルなメリット

case | 事例

  • 工場、ビル、都市などの現実のシステムを仮想的に複製し、データを使って現状や予測される挙動を反映させるデジタル・ツインは、エンジニアリングのためのツールにとどまらず、世界中の都市が、都市システムを複製するローカル・デジタル・ツイン(LDT)を活用することで、都市のイノベーションと市民参加を促進できる強力なツールになると認識されてきている。

  • アムステルダム、ストックホルム、チューリッヒなどでは、都市部の3D LDTを作成し、新しい建設開発の影響をシミュレーションし、デベロッパーや住民からのフィードバックを集めている。ヘルシンキの都市計画デジタルツインは、2030年までにカーボンニュートラルを達成するために、建築物のエネルギー消費に関するデータを高精度でモデリングしている。ロッテルダム港は、3D都市運営プラットフォームでビルのエネルギー消費の可視化、モビリティの監視、治安の改善など、複数の目的を持った野心的なLDTを構築している。フィンランドのタンペレでは、自動運転車のテスト、エネルギー効率と消費量の測定と最適化、歩行者体験の向上から文化的な散歩道の開発まで、様々な地区や用途でLDTが活用されている。

  • LDTに取り組んでいる欧州の都市の数多いが、リアルタイムのデータを使ってさまざまな結果をシミュレートしテストするプラットフォームはまだ12しかない。都市やコミュニティはLDTの多様な応用の可能性を理解し始めているが、初期投資や費用対効果、信用性への懸念はまだ残っているためである。この分野の先駆者であるタンペレ市は、将来的にメタバースのコンセプトを持つ「シティバース」につなげたいと構想しており、ECでもエストニアが主導し、ドイツ、スロベニア、チェコ、スペインが支援する欧州デジタル・インフラ・コンソーシアム(EDIC)を通じて、シティバースに向けデジタル・ツインズの規模を拡大するための資金提供を開始した動きもある。

insight | 知見

  • 日本では東京都がデジタルツイン実現プロジェクトを進めていたり、国土交通省が日本全国の3D都市モデルを整備しようとするProject PLATEAUが動いています。ただ、福岡に居るからか、まだ身近で地区開発のシミュレーション、都市交通の管理やビルの排出量把握などでLDTが活用された事例になかなか接することができません。

  • 可視化プラットフォームやデータの集約・基盤の整備を先行して進めることも重要だと思いますが、記事で事例にあがっているような、開発影響、排出量、交通、治安、歩行体験など何らかの検証ニーズを持つテーマがあって、その検証のためにLDTを活用してみる、というチャレンジを促す動きも必要だと感じます。

  • 福岡では九大キャンパス跡地の箱崎がスマートシティとして開発される構想がありますが、開発前のシミュレーションからLDTを活用して、交通・住宅の専門家や市民のフィードバックをもらう動きがあると良いのではないかと思いました。