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NYC交通局の「生活しやすい道路推進室」新設

case | 事例

パンデミック時のNYCでは、公共空間や道路の使い方を変えて、自動車の通行を遮断して歩行空間や自転車の走行空間、遊び場などへと転換する経験を積んだ。その経験を経て今、NYC交通局は、あらゆる交通手段を利用する人々を受け入れる道路を設計し実現するための新たな組織「Office of Livable Streets(生活しやすい道路推進室)」を立ち上げている。同局によると、この種の推進室の設置は米国初だという。同室は道路改良室(Office of Street Improvements)を改名した組織であるが、推進室は公共空間、自転車、政策、ストリートファニチャー、ストリート改善プロジェクト、管理部門などのサブユニットから構成されている。今回のリブランディングは、パンデミックでの経験の他、ニューヨーカーが道路を車の交通場所や駐車場としてではなく、オープン・ストリート・プログラムのような枠組みを通して、コミュニティを築き、つながるための場所として利用し始めたことから生まれたという。

NYCでは交通局が街灯、ストリートファニチャー(バスベンチや駐輪場など)、標識など、道路や歩道の表面上のすべてを管轄しており、道路を利用する人々のニーズに合わせて道路を再設計し、さまざまなレベルの介入手段を整えようとしている。介入方法は、ロータッチなもの(一時的なバリケードや看板を使ってオープンな道路を作るなど)から、ハイタッチなもの(自動車が永久に通行できない歩行者広場を作ったり、自転車レーンを追加して歩行者の安全性を向上させるなど)まで様々考えられている。目下推進室は、自転車やキックボードの急増に対応するため、政策とデザインの両面からマイクロモビリティに注目している。また、配達に使われる電動カーゴバイクの増加に対しても、新しい安全基準整備のほか、充電ステーションや車両保管庫、自転車通行レーン拡張プロジェクトなどに予算措置が講じられている。

insight | 知見

  • 組織の機能を「道路を改修・管理する」ものから、「道路をよりよく使う」ものに担当職員の意識も含めて変えるためのリブランディングの事例だと思います。機能を実現するためには色んな組織の再編や権限委譲が必要だったのではないかと推察します。市民のニーズの変化に合わせて組織が提供する機能を変えていくことは、行政組織としてとても大事なことだと思います。

  • 先日のLAのダウンタウンの街灯の記事で、アメリカでは歩道や街灯等の設置は隣接する不動産所有者の負担と書きましたが、上の記事ではNYCは交通局がすべて管理しているとあるので、都市や地域ごとに負担や管理主体が異なるのだと思います(「アメリカでは」とまとめて言ってはいけませんでした失礼しましたm(_ _)m)。