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公共交通の成功における歩きやすさの重要性を示す政策レポート

case | 事例

歩く権利の確保を目的とする国際NPO「ウォーク21(Walk21)」がこのほど発表したポリシー・ブリーフでは、自動車交通量の削減と都市の居住性の向上には、徒歩と公共交通機関の統合が不可欠であることが強調されている。レポートでは、公共交通機関の成功は、歩きやすさに大きく依存していることが示されている。

レポートでは、公共交通機関は乗客が目指す目的地にピンポイントに到達できないため、本質的には歩きやすい都市環境が必要であるという事実を強調している。歩行インフラと公共交通機関の利用に優れた都市は、自動車交通量を顕著に減らし、徒歩と公共交通の共生関係ができている事例も示されている。レポートでは公共交通と歩行の統合戦略として、3つの優先分野を示している:

  • 歩行インフラの強化: 公共交通ハブへの安全でアクセスしやすく、楽しい歩行ルートの開発。

  • 健康メリットの促進: 徒歩や公共交通機関が自家用車よりも健康面でもコスト面でも有利であることの提唱。

  • 利便性の認識: 徒歩と公共交通機関の組み合わせが、自動車を利用するよりも便利だという実情と認識の普及。

レポートでは、欧州の主要都市の交通機関分担率における公共交通機関と徒歩のマトリックスから、マドリッド、チューリッヒのような都市が、自動車の分担率を減らして持続可能な交通システムを構築できていることが示されている。また、歩きやすさは公共交通機関の利用しやすさに直接影響し、快適な歩行体験は公共交通機関までの許容歩行距離を3倍にすることがあり、利用者にとって公共交通がより魅力的な選択肢となりうることが示されている。都市の主要な交通手段として徒歩と公共交通を優先させるために、複数の利害関係者が協力し、政策的介入を行うべきことを同レポートでは訴えている。

insight | 知見

  • 新しい地域の開発であればTOD(公共交通指向型開発)といったコンパクトで歩きやすく機能が集積したまちをデザインすることになりますが、既に駅や公共交通の路線が敷かれている成熟したまちにおいても、公共交通の拠点までの楽しく安全で歩きやすいルートを再構築することにしっかり投資をすることが重要なのでしょう。

  • まちづくりにおけるアート、植栽、歴史文化などの活用も、公共交通拠点とどのようにつながっているか、という視点が重要になると思いました。