見出し画像

オリンピックに向け大気汚染を40%削減したパリのシンプルなトリック

case|事例

2024年夏のオリンピックの開催に向け、パリ市は着実に都市の改造を進め、大気汚染を40%削減した。その方法は実にシンプルで、自動車を都市から追い出すとともに代替の移動手段を整備し自動車依存を減らしただけだ。ではいったいどのようにして自動車依存を減らしたのか?それは大きく3つの取り組みに集約される。

1つめは、自動車の通行の禁止で、都心部の多くで実施された。これは世界のいくつもの都市と共通したアプローチで、自動車の通行を禁止し、歩行者専用の道路を創出することでアクセシビリティが高まり、人通りも増え、結果的に地元の経済も活性化した。

2つめは、市内を走る自動車の小型化で、SUVs車両の駐車料金を3倍にすることで大型の自動車での市内の走行に制約をかけた。これによって自動車の利用は必要最小限にとどめられ、エネルギー消費量も削減された。

3つめは、歩きやすく自転車に乗りやすい環境を創出したことだ。電動キックボードを禁止するなどマイクロモビリティの利用促進では挫折も味わっているが、イダルゴ市長が就任して以来、熱心に一貫して支援が行われている。

これら3つのアプローチで、歩行者が歩きやすい通りをつくり、自転車のインフラを整備し、低排出ゾーンを設定することで大気汚染の改善を進めてきた。また、環境的なメリットを得ただけでなく、コミュニティをより健康的で活気のあるものに生まれ変わらせるなど、生活の質の向上にもつながっている。

insight|知見

  • 福岡に限らず全国のさまざまな地域の方からビジョンや計画が必要だという相談をいただきます。もちろん将来像を共有し、それに向かってリソースを集中することの重要さは否定しませんが、ビジョンや計画の策定はあくまでもスタート地点に立っただけなんじゃないかなと思います。

  • パリの華々しい成果を見ているとビジョンや計画に基づいて施策をコツコツと愚直に実施し続けることの重要さも浮き彫りになります。やり続けるとマンネリ化を感じたり派手さを求めたくなることもありますが、地域のインフラや習慣をつくり文化をつくっていくためには必要なことをシンプルにやり続けることが大切なんだと思います。