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世界の都市・地域の最新事例を紹介するマガジンです(平日毎日更新)。 「case」では海外記事を抄訳して海外の都市計画関連の最新事例を紹介しています。「insight」では海外の最…
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2024年1月の記事一覧

ニューヨーク市はマイクロモビリティによる宅配サービスを管轄する新部署を創設

case|事例 ニューヨーク市役所は、電動自転車や電動キックボード、スクーター、モペットなどのマイクロモビリティを利用する宅配サービスの急増に対処するために新たにサステイナブルデリバリー部という専門の部署をアメリカではじめて設立する。新たな部署は、二輪及び三輪のマイクロモビリティ―に依存する荷物や食料品の商用宅配サービスの規制を担う。 マイクロモビリティは、新たな交通手段として、渋滞の緩和や大気汚染の改善に欠かせない。一方で、歩行者との錯綜や搭載バッテリーを原因とする火災

エジンバラ市の自動車交通を減らす新たな政策

case | 事例 スコットランド初の歩道駐車禁止が施行されたエジンバラ市では、市議会で新しい議案「Our Future Streets」が審議される予定になっている。この議案では、市内中心部の主要道路を閉鎖して、市街地の「自動車支配」を減らすためのさらなる措置を講じることが示されている。 検討されているオプションでは、都心のターミナル駅であるエジンバラ・ウェイバリー駅の南北を貫く幹線道路とその周辺道路の一部は、公共交通機関と許可車以外のすべての交通を締め出すことになって

NYCの公共交通のアクセシビリティ改善には混雑課金がカギ

case|事例 ニューヨーク州都市交通局(MTA)の公共交通システムのアクセシビリティを完全に解決するためには、NYC都心部における混雑課金(CBDTP)による財源確保が欠かせないと、ニューヨーク大学ルーディング交通センターの最新のレポートが指摘している。 同センターによるとNYCの障害者の13%が公共交通の移動の際に困難を伴っており、エレベーターやスロープなどが設置されたバリアフリーな地下鉄駅はわずか30%にとどまっている。2022年にMTAは障害者支援団体からの集団訴

気候変動対策への都市農業の効果

case|事例 ミシガン大学は、フランス、ドイツ、ポーランド、英国、アメリカの都市農業従事者が参加した都市農業と従来農業とのカーボンフットプリントの比較研究論文をNature Citiesで発表した。計73ヶ所の都市農園が参加する過去最大規模の比較研究となる。 今回の研究では、2019年のシーズン中に実施したダイアリー調査のデータを用いて農業インフラ、供給、灌漑用水からの温室効果ガスの排出量を試算している。都市農業と従来の農業を比較すると、都市農業では平均してCO2を1食

イタリア運輸相、市街地の速度制限引き下げを牽制

case | 事例 イタリアのマッテオ・サルビーニ運輸大臣は、今月ボローニャ市が市街地の最高速度を30km/hに引き下げたことを受け、他都市の地方議会に対し、時速制限をボローニャに併せて一律に引き下げないよう牽制した。(ボローニャ・チッタ30:過去の紹介記事はこちら) イタリアのほとんどの都市部の時速制限は50km/hであるが、中道左派の議会が運営するボローニャ市はイタリアの主要都市で初めて制限速度を引き下げた都市となった。一方、サルビーニ運輸相は極右政党同盟党の党首で、

英国の慈善団体が子どもへの配慮に欠けた都市空間が子どもの健康状態を悪化させていると警告

case|事例 英国の慈善団体「Playing Out」は、子どもたちの屋外の遊び場所などが減少し、子どもに優しくない都市環境が作られてしまうことで子どもたちの健康状態やウェルビーイングに大きな損害を出していると警告している。前の世代と比較すると、屋外の都市環境の変化によって、いまの子どもたちは活動の制約を受けており、よりインドアになり、孤立し、アクティブではなくなりつつある。 実際、子どもや若年層の身体的・精神的な健康状態は長期的に悪化傾向にあり、特に貧困が問題を深刻化

バルセロナの2023年の持続可能な移動は8割を記録

case | 事例 2023年調査におけるバルセロナの都市内の移動の80.1%は徒歩、自転車、パーソナルモビリティ、公共交通によるもので、自家用車による移動は20%であった。このデータは、1998年に設立されたモビリティ協定(バルセロナのモビリティ政策のコンセンサス形成のための官民組織で構成された参加型フォーラムで市内のモビリティと交通安全の改善策に関わる)が今般公開したもので、新しい都市モビリティ計画(PMU)2024も含めてウェブサイトからアクセスできる。 2023年

パリは短期住宅賃貸用のキーボックスの設置の規制を検討

case|事例 パリはAirbnbなどをはじめとする短期住宅賃貸のカギの受け渡し用のキーボックスの公共空間への設置を禁止する規制を検討している。来月の市議会で審議する予定で、仮に議案が通った場合、公共空間へのキーボックスの設置は原則禁止される。また、私有地に設置する場合、家主は他の入居者の許可を得ることを求められる。 今回の規制の導入の背景には、景観悪化への懸念がある。Airbnbなどの短期住宅賃貸の台頭によって、建物の壁面や出入口周辺、街灯、駐輪場など街のいたるところに

英国では電動キックボードの事故による負傷者数の過少報告の可能性が指摘されている

case|事例 病院での治療が必要なレベルの負傷が発生した電動キックボードの事故の大半が英国の公式道路事故統計に記録されていないことが、「運輸の安全性のための議会諮問委員会(PACTS)」からの委託研究で明らかとなった。 今回の研究では、2021年下期の2か月分のデータを用いて、英国内の病院で記録された300件の事故負傷者数、警察の記録、キックボードのレンタル状況とのデータ一致を特定し、事故記録の実態を分析している。結果として、電動キックボード関連の事故は9%しか公式記録

テック企業によるカリフォルニアでの新しい都市開発

case | 事例 リンクトインの共同創業者や故スティーブ・ジョブズ氏の奥様の他、ベンチャーキャピタリスト、ソフトウェア開発者など、テック業界やベンチャーキャピタル界の億万長者たちが支援するカリフォルニア・フォーエバー(California Forever)社は、カリフォルニア州北部サンフランシスコから約100km離れたソラノ郡の農業地帯に新都市を建設するという物議を醸す計画の詳細を公開した。同社は、郡に投票を求めるイニシアチブを提案する予定としていることから、今年後半にも

自転車通勤者は抑うつ剤を処方される可能性が低くなる傾向

case|事例 自転車で通勤する人は、他の手段で通勤する人よりも抗うつ剤の処方量が少なく、自転車通勤がメンタルヘルスを害するリスクを低減させる可能性があることがエジンバラ大学の研究で明らかとなった。 今回の研究では、エジンバラもしくはグラスゴーに居住し職に就いている16歳から74歳までの約38万人が対象となっている。調査対象者は2011年に実施されたセンサスから抽出され、2011年以降の処方箋データと紐づけて分析が行われた。また、調査対象者は、いずれも自転車道から1マイル

英国の住宅危機から見る世界的な政策の失敗

case | 事例 (国連ハビタットのマイムナー・モハメド・シャリフ事務局長の論説) ロンドンをはじめ英国は過去数十年間、住宅物件の供給不足が価格を押し上げ、現在の英国では1,100万人以上が収入の4割以上を住宅に費やしており、その割合は欧州で最も高い。この住宅危機は英国だけの問題ではなく、世界的にも過去から失敗が繰り返されてきたものでもある。1948年の世界人権宣言では、人々の充分な生活を享受する権利を認め、1976年にバンクーバーで開催されたハビタットI会議では、各国の

オフィスから住宅への転用が縁石空間の利用ニーズを変える懸念

case|知見 アメリカの諸都市では、住宅不足を背景に、パンデミックによって空いてしまったオフィスや商業用途床の住宅への転用が増加傾向にある。RentCafeの調査では、今後数年間によって、オフィスや商業床の転用で約12万戸の住宅が建設され、そのうち37%がオフィス、次いで23%がホテル、14%が工場からの転用と予想されている。 しかし、ゾーニングや、配管と照明のレイアウト、階段の位置などいくつかの要因が住宅への転用を複雑にするという理由から、他の用途から住宅への転用は単

ロンドン交通局は平等な交通環境整備に向け交通事故解析のためのデータツールを開発

case|事例 ロンドン交通局(Transport for London:TfL)は、交通事故の死傷者数と地区の貧困レベルの関係を解析できる新たなデータ解析ツール「Vision Zero Inequalities Dashboard」を開発した。データ解析ツールには、すでに2017年から2022年までの事故データと社会経済データが格納されており、年次別、自治区別、重症度別、移動手段別にフィルタリングが可能。また、生活資源の欠乏状況を示す多重剥奪指数(IMD)との相関を分析す