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英国では電動キックボードの事故による負傷者数の過少報告の可能性が指摘されている

case|事例

病院での治療が必要なレベルの負傷が発生した電動キックボードの事故の大半が英国の公式道路事故統計に記録されていないことが、「運輸の安全性のための議会諮問委員会(PACTS)」からの委託研究で明らかとなった。

今回の研究では、2021年下期の2か月分のデータを用いて、英国内の病院で記録された300件の事故負傷者数、警察の記録、キックボードのレンタル状況とのデータ一致を特定し、事故記録の実態を分析している。結果として、電動キックボード関連の事故は9%しか公式記録に反映されておらず、最も重大な負傷を伴う事故に関しても、全体の4分の1強しか記録されていないことが示された。結果を受けて、PACTSは英国運輸省(DfL)に事故の報告義務を国民に明確に伝えることと共に、警察の使用する記録システムとの連携などをシェアリング事業者や自治体へ指導することを求めている。またPACTSの副事務局長は、2026年5月までの電動キックボードの実証期間内で、事故の記録方法の改善と記録の徹底をしてほしいとコメントしている。

英国では、電動キックボードのシェアリングは本格導入されておらず、リバプールやロンドンの一部の自治区での実証を行っている最中である。走行速度は15.5mph(約25kmph)が上限とされ、個人所有の公道利用も認められていない。一方で、広く電動キックボードの入手が可能であるため、個人所有の違法利用も目立ち始めている。2023年に公表されたデータでは、事故の半分以上は、シェアリングサービスが認められていないエリアでの事故であったため、その取り締りの強化が求められている。

insight|知見

  • 日本の自転車や電動キックボードの事故でも同様の問題がありそうです。先日、電ジャラス自転車の危険性の記事が話題になりましたが、対歩行者などに対する事故の責任は自転車も電動キックボードも同様で賠償責任が生じます。交通マナーの徹底ではなく交通ルールや法規の教育が必要な気がします。

  • また、一方で、英国の事故統計がデータ化されており、異なるセクターで持っているデータの紐づけ(何かしらの数学的な処理をしていると思いますが)が可能であることに驚きました。もしかしたら日本のデータでもできるのかもしれませんが、デジタルデータの整備は改めて重要だなと感じました。