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世界の都市・地域の最新事例を紹介するマガジンです(平日毎日更新)。 「case」では海外記事を抄訳して海外の都市計画関連の最新事例を紹介しています。「insight」では海外の最…
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2023年9月の記事一覧

ニューヨーク州は米国で初めてコンクリートの低炭素調達のルールを設定

case|事例 ニューヨーク州は、2025年1月1日から州の公共建築の開発や交通インフラの整備で調達するコンクリートのCO2排出制限「the Buy Clean Concrete」を設ける。すべての州機関が契約する38立方メートル以上のコンクリートを使用し建設費100万ドル(約1.5億円)以上の開発、およびニューヨーク市交通局が契約する152立方メートル以上のコンクリートを使用する300万ドル(約4.5億円)以上のプロジェクトが対象となる。緊急性が求められるプロジェクトや高

物理的な分離のないカラー舗装だけの自転車レーンは事故率が高くなる可能性がある

case|事例 アトランタを対象にした研究で、ペイントのみの自転車レーンでは自動車と自転車の衝突事故が発生しやすく、その確率は自転車レーンが未整備な場合よりも高くなる可能性があることが明らかにされた。端路部は物理的に分離されていても幅員などの理由で交差点部分はペイントのみとなっている場合も同様の傾向がみられた。また、縁石での区分かプラスチックボラードの区分かによらず、何らかの方法で物理的に分離されている場合は安全が確保されることも示されている。 この研究はエモリー大学のチ

商業空間に対する都市景観・デザインの重要性が増している

case | 事例 米国の小売環境は大きく変化しており、従来の郊外型ショッピングセンターから、ECを背景に小規模なアメニティに富んだビレッジセンターや街区商業の時代へとパラダイムシフトしている。また、パンデミックを経て、屋外での活動、歩きやすさ、自然資源や質の高いオープンスペースへのアクセスが重視されてきている。 事例研究から得られる示唆として、(1) 伝統的な都市型のメインストリート小売はあらゆる地域開発における中心的存在であり続ける。(2) 伝統的なデザイン・スキル(

バーミンガム市の「食の正義」に向けた取り組み

case | 事例 バーミンガム市議会は昨年の都市食料政策ミラノ協定(MUFPP)の世界フォーラムで「世界食の正義誓約(GFJP)」を立ち上げた。GFJPはパンデミックにおける食料不安の教訓から、国内外の都市間の協力と協働を進めることを目的にしている。社会的・経済的資源に関係なく、世界中すべての市民のために、安価で栄養価が高く、持続可能な食料システムを構築し、支援するための横断的な政策の必要性を強調している。(MUFPPは、世界200以上の都市が署名している都市の食料政策に

独ハノーファーは都心を人間中心の空間とするために自動車の締め出しを検討

case|事例 ドイツ北部の都市ハノーファーは、都心を散歩やパーティを楽しめる人間中心の空間とし、レジリエントな商業拠点へと再編するために、都心から自動車を締め出すことを検討している。より持続的で環境にやさしい都市になること、そしてオンラインショッピングの台頭によって空洞化してしまった都心の商業地を再生することを目的としている。 具体的には、都心に4,000台分ある路上駐車帯を撤去し、解放されたスペースにカフェやテラスを設置したり、緑化を進めたりする。また、都心の道路網は

ヴェネチアはオーバーツーリズムへの対抗として新たなに入場料を徴収することを検討

case|事例 ヴェネチアは、オーバーツーリズムを解消するために新たに5ユーロ(約790円)の入場料を徴収することを検討している。ヴェネチア地域の観光入れ込み客数は、2023年の第1四半期で250万人と、前年の150万人から急増しており、ヴェネチア市はその対応に苦慮している。今回の入場料徴収は、歴史的な市街地に訪れる大量の観光客を規制することと、歴史的な遺産と繊細な生態系を保護することを目的としている。入場料の聴取は、2024年に長期休暇期間を対象として30日間の実証実験を

エジンバラの健康的な街路と住みやすい地域づくり

case | 事例 2023年にエジンバラ市で、公共スペースの改善とコミュニティ・アート作品を通して交通量を減らし、徒歩、自転車、公共交通機関の利用を促し、地域がより安全で便利になることを目的にしたスコットランドでは初めてのプロジェクトが、港湾部のリース地区と郊外住宅地のコーストフィン地区でわれた。 リース地区では、数年前から住民が地域の交通量とスピード違反について懸念を表明していたが、「リース・コネクションズ」プロジェクトを通して、車両の進入制限、歩行者アクセスや自転車

シカゴは食の不平等を解消するために市営の食料品店開業を検討

case|事例 シカゴ市は、経済格差の拡大などに起因する食の不平等を解消するために、非営利団体の「Economic Security Project」と協働して市営の食料品店設置に向けたフィージビリティスタディを行っている。公営の食料品店設置は小規模な自治体での事例はあるが、主要都市ではアメリカではじめてとなる。シカゴ市長は、今回の検討に際し、「全てのシカゴ市民に便利で手ごろな価格で健康的な食料品店の近くに住む権利があるが、市南部や西部では多くの市民が食料品店のアクセスに難

シアトルは地域主導型の都市林業とその職業訓練を進める

case | 事例 米連邦農務省森林局は、樹木の公平性と健全な樹冠を推進するシアトル市のリーダーシップを評価し、猛暑と気候変動への対応、自然へのアクセスの改善、若者のグリーン・キャリアの支援のために、市民の生活・学習・憩い空間での樹木の植樹・維持に1,290万ドル(約20億円)を提供する。今年初頭にシアトル市は2021年の「キャノピー・カバー・アセスメント(樹冠被覆評価)」を発表し、人種的・経済的不平等が現れている地域は、より恵まれた地域よりも樹冠が27%少ないことを明らか

24年間自動車流入を抑制しているスペインの都市「ポンテベドラ」

case|事例 スペインの北西部に位置するポンテベドラ市は、フェルナンデス・ロアーズ氏が1999年に市長に就任して以降、24年間にわたって市内への自動車流入の抑制を続けている。市長就任当初、ポンテベドラ市は、大気汚染や若年世帯の流出、地域経済の低迷など様々な都市課題を抱えていた。ロアーズ市長は、J.ジェイコブスの「アメリカ大都市の生と死」や「ブキャナンレポート(Traffic in Towns)」などを読み、市内の渋滞する道路から自動車を取り除き、市民に開放することを決断し

リバプールのウォーターフロントの新たなステップ

case | 事例 リバプールのウォーターフロントは、数十億ポンドを投じたリバプールONEの開発、受賞歴のあるアリーナや会議場、クルーズ客船ターミナル、新しいリバプール博物館ができたアルバート・ドック、ピアヘッド、キングス・ドックの大規模なアップグレードなど、ここ数十年で大きな変化を遂げた。その結果、毎年数百万人の新規観光客が訪れるようになり、2008年の欧州文化首都から今年5月のユーロビジョンまで大規模な国際イベントの開催が可能になった。 今般(9/19)リバプール市議

トロントではオンタリオプレイスの再開発が大論争

case|事例 トロントではオンタリオ湖に浮かぶ人工島「オンタリオプレイス」の再開発案を巡って大論争が巻き起こっている。トロント市では、オンタリオ州の再開発案を承認するかどうかの判断を今秋に控えており、市民とのパブリックミーティングを重ねている。 再開発案は民間事業者「Therme社」が運営を担うウエスト島の屋内型ウォーターパークを中心とするものだが、その建築計画が破壊的でオーバースケールであるとの批判を受けている。計画案は昨年から修正を重ねているが、建築計画がオーバース

都市のスマートグロースで盲点になりがちな工業用地と雇用

case | 事例 (カナダ・メトロバンクーバーのシニア地域プランナーであるエリック・アダーネック氏の論考) 多くの都市にとって、市街地のスプロール化を抑制するスマート・グロース戦略を採用することは、比較的安価な工業用地を、商業と住宅が混在する再開発用地に転換することに関連付けられてきている。実はこの動きは都市の経済基盤を弱体化させ、良質な雇用を生み出す土地の供給を減らし、産業部門の郊外への拡散を助長しかねない。スマートな成長とは、あらゆる所得水準の家族のために住宅を建設す

英バースで排出量ベースの駐車料金体系の導入が決定

case|事例 バース&イーストサマセット議会は、大気汚染の改善を目的として、議会が所有する公共駐車場を対象に9月8日から排出量ベースの料金体系へ変更することを決定した。新たな料金体系は、すべての自動車が平等に値上げされるわけではなく、都心への排出性能の悪い自動車の流入を抑制するために、排出量が大きい自動車ほど高い駐車料金が設定される。またCO2排出量が131g/kmに満たない環境性能の高い非ディーゼル自動車は値上げの対象外となる。 この排出量ベースの駐車料金体系は、排出