「地球平面説とSDGs」
経済的に利益を出すことと、環境や社会にとって良い活動をすることは、別々の方向に進んでいるように見える。どちらを優先すべきなのか?経済的な利益を犠牲にしてまで環境や社会への配慮をしなければならないのか?といった議論がよく聞かれる。
今回の投稿では「SDGsとはどのような考え方なのか」について社内で行った説明を一部紹介しようと思う。
以下のような図だ。
この絵で見ると、利益を追求することと、社会に貢献すること・環境に配慮することはそれぞれ別の方向に進んでいるように見える。企業は、あるいは日本社会は、環境や社会貢献を目指すのではなく、もっと利益を追求するべきなのではないのか?余計な方向には進まず利益への最短経路を目指すべきなのではないのか?
その「利益への最短経路」を示すと次の図のようになる。
地図として正しい方角を示しているのはこの図2である。さきほどの地図も、この地図も、だいたいニューヨークとリオデジャネイロと、パリか?マドリードか?あたりを示しているのだが、実はこれらは日本から見てほとんど同じ方向である。いままで間違った地図を使って考えていたから、別々の方向のように思っていただけで、正しい地図を描くとこの3つはほとんど同じ方向の延長上にあることが分かる。しかも図1で「利益への最短経路」に見えていた道は実は最短経路ではなくかなり遠回りの道である。もう一度見比るために再掲しておこう(図3も参照)。
正しい地図で「利益」の方角に最短経路で進むと勝手に「環境」や「社会」にもたどり着くのだが、頭の中の地図が間違っているのでいままで別々の方角のように思い込んでいたにすぎない、ということだ。ニューヨークへの最短距離だと信じてハワイの方に向かって飛ぶとかなりの遠回りになる。逆に、東京から見るとみんなで札幌の方に向かって飛べば、ニューヨークもパリもリオデジャネイロも、だいたい最短距離で着くことになる。比較対象として年配者の方には懐かしの南回りルートも掲載しておく。
環境か?経済か?というのもこれと同じ話だ。みんなが地球は平らだと信じていた時代に、いや地球は丸いからどっちに進んでも着くよ、とコロンブスがアイデアを示したように、環境や社会貢献や経済成長・利益は別々の方向ではなくて、同じ方向に進めば着くよ、と気づいたのが近年のSDGsでありESGのアイデアだ。SDGsではこれを”integrated”(統合された)という言葉を多用して示している。経済的利益と、環境・社会貢献が「統合された」道に進むこと、つまり経済的利益を犠牲にして進むのではなく、環境保全や社会貢献を目指すと勝手に経済的利益も実現されてしまうような「統合された」道があるということ、それを探すということを意味している。
このポイントがズレているので、「環境か?経済か?」という議論が起きがちだ。そうではない、「両方」だ。日本から見てパリとニューヨークは全く逆の方角にあると信じている人に向かっては、何度地球儀を見せて話をしても、頭の中がメルカトル図法のまま、パリとニューヨークがほとんど同じ方向にあるということを納得してもらえないだろう。そういうことが起きている。あたかも地球平面説のように環境保全と経済成長は全く逆の方向だと信じている人が多いので、環境や社会を守りながら経済成長を目指しましょう、と何度言っても伝わらない。「だってそれ逆の方向でしょ?」という議論から抜け出せないのだ。(ちなみに「地球平面説」というのは14世紀の過去の説ではなく、アメリカの真ん中らへんにはいまだに本当に信じている人がいる。)
ならば、実際にやって見せるしかない。スペインから「西方向」に向かって出港して陸地に辿り着いて見せた先人は、地理学という学問上で成功したのではなく(略奪によって)莫大な利益を出して富豪になった。おそらくだが、一般の人々が確かに地球は丸いと信じた理由はむしろそっち、コロンブスとその仲間たちが権力者・億万長者になったからではないだろうか?地球が平らだと信じているような奴は儲け話・出世話に乗り遅れる、それはもうみんな必死で地球が丸いことについて考えを深めようとするだろう。現代は15世紀ほど殺伐とした世界ではない。ただ、人が何を信じるかの理由は今も昔もあまり変わらない。人は成功した人を信じる。90年代に失意のスティーブ・ジョブスを信じていた人と、2022年にスティーブ・ジョブス本を買い求める人と、どちらが多いだろうか。成功することは最大の説得力である。
“integrated”な道に進むことは誰の専売特許でもない。いわばまだ未開拓の新大陸である。当社は先駆けして、環境・社会への貢献できる道を進むことにした。おそらく「新大陸」への道からは将来的に莫大な利益が出るだろう。日本の他の投資・不動産のプレーヤーを見ていると、こうした環境・社会への貢献はまだ「やらないといけないこと」としてやっているような温度感であるように見える。何が不足していると感じられるのか、具体的な戦術に関わる部分はここには書かない。ただ、当社は義務ではなく喜んで「環境的・社会的な貢献をやらせていただきたい」という大圏航路に気づき、いまそれを進みつつある。
さて東京からパリに着く前に、先にフィンランドに着く。もちろん正しい道を進めば、の話だ。当社も、最終的には長期的利益を計上することが目的地ではあるが、先にいくつかのマイルストーンを経由することになる。当社は今後、環境的・社会的な目標地点を先にいくつか経由する予定だ。今後、「なぜ?」と思われるかもしれない環境・社会貢献関連のニュースリリースが出していく予定だが、その意義についてはまた今後noteにて説明してきたいと思う。
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