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089. 「うすい」「やわらかい」という日本人の個性

bonsoir!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。
今日はフランスで気がついた日本人の「うすい」「やわらかい」という個性について。

フランス生活でびっくりしたことは多々あるのだけれど、そのうちの一つがポケットティッシュ。こういうタバコのケースのようなものに入っています。取り出してみるととにかく分厚く、ティッシュというより紙ナプキンですね。

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先の感染症の影響で衛生概念が変わったそうなのだけれど、元々フランスでは、鼻をかむなどして一度使ったティッシュは捨てずにポケットにしまって再利用する人が多かったのだとか。それに、日本ほどポケットティッシュが身近に手に入る存在ではない。日本では、人通りの多い場所へ行けばポケットティッシュが配られている光景を普通に見ますよね。でも、そういえばそんなのフランスではみたことがないのです。何気なく配られていたその広告入り粗品ティッシュでさえ薄くて柔らかいのも驚きだ。

フランスですき焼きにトライした時に知ったのだが「うすく作る」というのは、実はかなり技術のいることらしい。日本にいるときには気がつかなかったけれど、「うすい」「やわらかい」というのは、実は日本の良さでとても強い個性なんじゃないだろうか。

そんなわけで、うんと希少価値が高くなったポケットティッシュ。枚数も少ないし捨てるがもったいないなぁ・・とは思ったのだけれど、やはり日本人のわたし。こればかりは郷に行っては郷に従えず、娘のお鼻をチーンとした立派なティッシュ紙たちを泣く泣くゴミ箱へ捨てるのであった。

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あと「うすい」「やわらかい」に関連して、フランスに来てからびっくりしたことのもう一つが、化粧水事情。

フランスにはいわゆる「日本人が考える化粧水」というものが売っていない。pharmacieファーマシー(日本でいうところの薬局)にLotion(ローション)と書かれたものは売っているが、それらは日本の化粧水のように肌を潤すためにつけるものではない。フランスでLotionといったら「拭き取り化粧水」のこと。肌についたほこりや汚れを落とす、クレンジング剤なのです。

肌を潤すためのいわゆる日本的な化粧水に近いものは、アベンヌのようにスプレー缶に入ってシュッとやるものとして売られている。

それを知らずに、数年前に新婚旅行でフランスへいったとき、お土産として買ってきたボトル入りの〝Lotion〟を使い続けていたら肌がボロボロのガサガサになってしまい、「おかしいな」と調べて発覚したのだった。

メイクをクレンジングオイルやミルクで落として、化粧水をつけ、乳液や美容液をつけて・・という何重にも丁寧なスキンケアって、実は日本(アジア?)特有のものなのだ。

もしかしたらスキンケアに潔癖になりすぎている?と思い、この件に関しては郷に行っては郷に従い、ファーマシーでBIODERMAビオデルマの拭き取り化粧水を買った。はじめは拭き取り化粧水をした後に水で顔を洗い流したい・・という欲求に駆られたのだけれど、フランスの水は硬水で、日本の軟水とは違い石灰分がたっぷり。せっかくクレンジングしたのに肌に石灰がついてしまうとのことだった。なるほど、理にかなっている。それにしても軟水ってありがたいな。

とはいえ、フランス生活は、普段肌をきれいに洗いすぎていることに気がつく良い機会となった。拭き取り化粧水はちょっとわたしの肌には合わなかったのだけれど、その代わり、洗顔フォームの代わりにフランス産のクレイを使うようになってきた。

日本人は肌のキメが細かくやわらかいと言われる。昔、イギリス人に「日本人って、男女ともに肌が柔らかくてきれいだよね」と言われたことがあるけれど、海外で過ごしてみると納得する。

日本人の肌は欧米の人に比べて表皮の角質層がうすいらしい。しかし、面白いことに角質の下にある真皮と皮下組織は欧米の人に比べて厚いらしい。外の面の皮はうすい、けれどその下のやわらかい部分は重厚。ターンオーバーにも時間がかかりそうで、まぁ、よくも悪くも日本の体質そのものだなぁ・・なんて妙に納得してしまう。

すき焼き肉にせよ、ポケットティッシュにせよ、スキンケアにせよ。「うすい」そして「やわらかい」というのは、日本人の個性そのものなのかもしれない。

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