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今さらCDレビュー トリーネ・レイン『Finders Keepers』

皆さんは『Now(ナウ)』というシリーズのCDをご存じでしょうか? 今でこそさまざまなアーティストによるコンピレーションアルバムは珍しいものでなくなりましたが、その先駆けともいえる『Now1』が発売されたのが1993年。その翌年には『Now2』が発売されました。

このアルバムにトリーネ・レイン(Trine Rein)の『Just Missed the Train』という曲があるのですが、この曲を収録した彼女のオリジナルファーストアルバム『Finders Keepers』を取り上げてみます。

トリーネ・レインは1970年アメリカ・サンフランシスコ生まれ。ほどなくして故郷のノルウェーに戻り、高校生のころに音楽活動をスタートさせました。上記アルバムは1993年リリースなので23歳でデビューしたことになります。その翌年に早くも彼女の楽曲が世界規模のコンピレーションアルバムにノミネートされたことからも早熟の才能の持ち主であることがうかがえます。

艶めいたソバージュヘア。175センチ前後の長身。そして白いシャツの胸元から見えるたわわな…(詳しくは各自確認してね)といった具合にワイルドな風貌も彼女の魅力でしょう。パワフルなボーカルと相まって、ノルウェーの大黒摩季と呼ばれているとかいないとか(←いません)。以下、アルバムの曲から代表的なもの、個人的に気に入っているものを中心に紹介します。

『Finders Keepers』楽曲

#1 Just Missed the Train

『Now2』にも収録された代表曲で口火を切る。スローテンポな気だるいニュアンスの曲で、歌詞は別れが近い男女の距離感を表現した内容。よく「恋愛はタイミング」と言うが、恋人同士の行き違いを電車に乗り遅れたことに例えている。

#4 I Need a Break

1曲目からマイナー調の曲が続くがここで一気にテンポアップ。ヒューイ・ルイスやブルース・スプリングスティーンを想起させるゴリゴリのパワーポップです。軽くドライブしたギターサウンドも心地よい。もしかしたらアルバムの中で一番好きな曲かも。

#5 You Are All Mine

前曲の軽いノリを継いだかのような、シャッフル調の曲。冒頭の歌詞に「Finders are Keepers」とフレーズが出てくるため、アルバムのタイトル曲という位置づけなのでしょうか。ラストのサビの「Don't you walk away from baby」と歌うところは、都はるみばりのコブシが効いた、ひそかなハイライト。

#7 Summernight Magic

タイトルからもわかるようにれっきとしたパーティ・チューンで、シンセサイザーを前面に出したきらびやかな曲調が特徴。でもAメロがABBAの『ダンシング・クイーン』に似ている… やっぱりABBAは北欧の人たちのDNAに組み込まれているんでしょうかね? あと、ここまで恋愛(というか別れ)をテーマにした曲が大半でしたが、ようやくこの曲で少しカラッとした雰囲気に変わります(笑)

#8 Gypsy Heart

音数を絞り極力シンプルなアレンジが施された曲。反面、要所でシャウトするトリーネのボーカルは、恋愛においてどうにもならない苦悩を吐露しているように聞こえる。おそらくアルバムの中でテクニック、声量ともに求められる歌唱的にもっとも難易度の高い曲。でもこれくらい歌いこなせなければ「Diva(歌姫)」を名乗る資格はないだろう。

#10  Bad News Travels Fast

アルバムのラストを飾るにふさわしいスローな曲。仕事が終わったあとなど夜に聴きたくなる。#8とは対照的にトリーネのボーカルも非常にリラックスしている。ちなみに曲名は「悪事千里を走る」という意味だそうです。

デビュー作ながら非常に作りこまれた名盤

洋楽にありがちな、アルバムの一曲目に代表曲(ヒットチューン)を持ってきて、残りは駄作を並べるような構成ではなく、カバー曲のチョイスも含め非常によくできた名盤です。捨て曲ナシです!

歌詞に関して言えば、上記でも軽く触れていますが、男女の別れに未練タラタラな女子の気持ちを綴った内容が多く、そこは好みが分かれるかもしれません。

トリーネ・レインは今?

アルバム『Finders Keepers』はノルウェーで20万枚のセールスを記録する大ヒットとなりました。ノルウェーの人口が約400万人なので、国民の20人に1人が同アルバムを持っている計算になります(1993年発売当時のライナーノーツより抜粋)。日本でも『Now2』効果からアルバムは売れましたが、その後は目立ったヒット曲はありません。

2015年に、同じノルウェー出身の冒険家と結婚し、2020年現在もノルウェー国内を中心に音楽活動を続けているみたいです。公式HPを見ると、来たる5月15日にコンサートをやる予定。新型コロナウイルスの影響から人数を絞り、客席の間隔を空けた制限付きのライブになるようですが、久々にステージに立つ彼女の意気込みが記されています。

トリーネ・レイン公式HP

なお、2011年の東日本大震災のとき、母国でチャリティコンサートを開いてくれました。そんな彼女を見て、いつか日本にも来ないかな? と、つい淡い期待を抱いてしまいます。

Just Missed the Train



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