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2022年ベストアルバム9選

うーん、あんまり僕が書くようなものでもないような気がしちゃいます。だってTwitterを見て、みんなが聴いてるものを聴いてるだけだし、新譜に対してはどこまでも受動的だし。

というか、今年はsyrup16gとART-SCHOOLとPeople In The BoxとThe Novembersの年だったし……。

まあ、そんなことは置いといて、あくまでも記録として。邦洋も一括りにして、今年のアルバム9枚を紹介していきます。



4s4ki - Killer in Neverland

4s4kiにハマったのは去年の暮れのEPの『Here or Heaven』と続編の『Here or Hell』から。「ブラックホール」とか「胎内」みたいなディストーションギターが前面に出たロックな曲が好きなのだけれど、今作はグリッチ
コア色が強め。かといってハードコアに振り切っているわけでもなく、ネットラップ由来の彼女のポップさが戻ってきてもいる。
そしてライブはどこまでエモーショナル。「SUCK MY LIFE 3」と言った内省的な楽曲のパートが一番グッと来た。

syrup16g - Les Misé blue

個人的に今年はsyrup16gの年だったと最初にも言ったけど、このアルバムが出たことでそれが決定的になった気がする。
『darc』は複雑すぎる、『delaidback』は単純過ぎる、といった前二作の欠点を補い、"syrup16gらしさ"、を更新する素晴らしいアルバムだった。「Dinosaur」のリフだとか複雑なコード進行だとか、サウンド面での良さはもちろんなんだけど、今作は何といっても歌詞。
特に「Alone in Lonely」なんて泣き出しちゃうくらいの暖かさと鋭さを兼ね備えてるし、かつての尖ってる、とも違う「五十嵐さん、こんな境地に達しちゃってるんですか?」と畏敬の念を抱くリリックの数々。
来世はお煎餅屋になりたい。

Arctic Monkeys - The Car

みんな褒めてるし、僕なんかがアクモンについて語るのもおこがましい。
でもこのアルバムにビビッと来たのは、夏頃にずっとScott Walkerを聴いてたせいかもしれない。こういう大人の世界というか、『AM』期のAlexが、リーゼントに固めた髪をポマードで撫でつけながら歌っている光景が目に浮かぶ(今はロン毛にしてる場合じゃないだろ、アレックス!)。

後半が退屈って意見もわかるけど、名盤って分かりやすいものよりも、こういう年々熟成されていく感じのアルバムのことを指すのではないでしょうか。


UlulU - UlulU

ジャパンカウントダウンが日曜午前に放送されてて、地下室タイムズが力を持っていた頃の"邦ロック"に対する僕の憧れは、人一倍強い気がする。仮想敵だった"ロキノン系"さえ、2022年には実態のないものになってしまっているし、その当時を経験していないからこそ、ありもしないノスタルジーを感じてしまう。

UlulUがいわゆる"ロキノン系"だなんて言うつもりはないのだけれど、あの頃のバンドを聴く時と同じ甘酸っぱい気持ちになってしまう。
クランチからディストーションへなだれ込むギター。爽やかなメロディとコーラス。嫌いになるわけがない。
彼女たちは共通の影響元としてandymoriを挙げていることにとても納得する。日本のオルタナティブロックバンドの1stとしては最っ高のレベル。

Horsegirl - Visions of Modern Performance

ナカコーが紹介していた3人組女子バンド。同年代の女の子たちがゴリゴリのオルタナをやっているのもカッコいいし、そういう点でLinda Lindasなんかに通ずるものはあるんだけど、Horsegirlは70年代ポストパンクの香りが強い気がする。
まずバンド名もだし、先行シングルが「Anti-glory」っていうのも面白いし、3人の雰囲気が程よくダラけているのも好き。
アルバムの中盤あたり、スタジオで実験……というより手当たり次第やってる時間があるのも青臭くて好み。
「Anti-glory」のメインリフ、ベースなのかと思ったらまさかのダブルギター。僕は彼女らを逆ニューオーダーと呼んでいます(フッキーのベースがギターに聴こえるから)。

Thus Love - memorial

ドリームポップとポストパンクの融合、なんて評されていたけど、これはそんなものじゃない。Unknown Pleasuresが"トランジスタラジオに乗り移ったジム・モリソンの亡霊"と評されたように、このアルバムは"現代に甦ったEcho & The Bunnymen"そのもの。
もちろん、声がイアンっぽいだけなんだけど、一曲目のギターフレーズなんかが『Porcupine』期のエコバニにそっくり。
ぶっちゃけドリームポップ/シューゲイズに食傷気味だったので、こういうバンドに出会えて最高。

羊文学 - our hope

1stアルバムが2018年という、きのこ帝国の活動休止の時期だったせいか、羊文学に"きのこ帝国的なもの"を求めていた人は多かったように思う。もちろん羊文学は羊文学だってことはみんな知っているし、そんなことを考えている人間も羊文学そのものの魅力に気づいていった。
けれど僕はきのこ帝国のような強靭なバンドアンサンブルを求めてしまっていた。そんな僕を打ちのめしたのが今作。「電波の街」の太いベースも「金色」での塩塚モエカの声の張りも素晴らしかった。ルーズな部分は残しながら、バンドとしてタイトに纏まった今作は僕みたいなめんどくさいやつの欲求まで呑み込んでしまった。

↓ここでは触れられなかったことも書いているので、時間があれば是非


nouns - While of Unsound Mind

夏。帰省先の実家の二階で、エアコンもつけず、天井を見ながら、このアルバムを再生した。



うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ



カオスがそのまま襲ってくるかのような衝撃に頭をぶち抜かれた。
いやいや、確かにコレはヤバいアルバムだけど、繰り返していけば何か掴めるはず。
そう思って夏休みの間、ずっと聴いていた。
確かに何が行われていて、何が起きているのかは理解できてきた。だけどそれを言葉にした途端、ただのアルバムになってしまう。ハードコア寄りのエモを基調にパワーメタルみたいなギター、エイフェックス・ツインを思わせる打ち込みストリングス、どこかのアニメからサンプリングされた台詞……全てを言い尽くそうとすればするほど、実態から遠ざかってしまう。 
ああ、これこそが音楽なんだ。言語化すると陳腐になってしまうこのエモーションこそが、音楽体験そのものなんだ、と。


The 1975 - Being Funny In a Foreign Language

「Part of the Band」のMVを見た瞬間に、今作は最高傑作だと確信した。イングマール・ベルイマンのオマージュはもちろん、これまでありそうでなかった曲だったことも素晴らしかった。
アルバムの後半から内省的な「Wintering」「Human Too」、そして1stアルバムの名曲「Robbers」の続編「About You」も感動的。
個人的な思い出も含めると2nd「I like it when you sleep, for you are so beautiful yet so unaware of it」が好きだし、同時代性を持っていたアクチュアルな傑作として「A Brief Inquiry into Online Relationships」を挙げたい気持ちもあるけれど、やっぱり今作「Being Funny In a Foreign Language」が最高傑作だ。不満といえば、収録時間が42分間だけってことくらい。

(あんまり関係ないんですけど、「All I Need To Hear」ってMr.Childrenの「others」に似てませんかね……)



以上9枚が僕の2022ベストアルバム。
やっぱり好きなアーティストの新作が良かった年だったのかも。

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