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シカゴのニューアルバムに驚愕する2022年夏

 いや、正直久しぶりに驚きました。2022年7月に発売された、シカゴのニューアルバム Born For This Moment のことです。

 思えば、シカゴとの出会いは、ちょうど50年前(!)の1972年です。この年にヒットしたSaturday In The Parkをリアルタイムに聴いて以来、割と好きなバンドではあったのです。来日公演も2回くらい見ています。ただ、そんな大ファンかというと、そうでもなかったんですよね。というのも、70年代のアルバムは、だいたいベスト盤ですませちゃってますし、大ヒットした16〜18こそCD持ってますが、19以降は聴いてなかったんです。

 それこそ2000年以降はまったくニュースにも触れておらず、ウォッチしてなかったのです。一番売れたときのボーカリスト、ピーター・セテラもバンドを離れて久しいですし、彼のソロワークの情報も聞かなくなってましたし…最近忘れかけている感じだったのです。

 ところが、7月下旬のある日、AppleMusicが週に1度プッシュしてくるNewMusic Mixというコーナーの1曲目にシカゴの見たことがないタイトルの曲が並んでたんです。え?シカゴ? 新曲?と思って、その曲を聴きながら調べたら、何とリリースされたばかりのニューアルバムの曲だったのですね。

 そして、AppleMusicにピックアップされていたこの曲が実に良い曲でして、そのままニューアルバムを聴いて、絶句してしまったのです。何だコレは!シカゴだよ!すばらしいじゃないか!と。

 ちょっとユルい感じあるかもしれませんが(笑)、これはシカゴそのものの音に聞こえるし、なにより良い曲じゃないですか!

 調べたところ、これはシカゴの38枚目となるオリジナルアルバム(といって、彼らはライブ盤やベスト盤とかのコンピレーションも通算するので、ときどき数字が合わない感じがするのは相変わらずですがw)。そこには何とオリジナルメンバーが3人も残ってるんですよ。

ロバート・ラム キーボード/ボーカル(77歳)
ジェームス・パンコウ トロンボーン(74歳)
リー・ロックネイン トランペット(75歳)

 最年長ロバート・ラムは、77歳ですか。まあミック・ジャガーは78歳、ポール・マッカートニーは80歳になりましたが、それに匹敵するレジェンドぶり。改めて凄いなと思います。

 で、音の方なのですが、これが本当に素晴らしかったのですね。実はあわててAppleMusicで2000年代のシカゴのアルバムを聴いてみたりしたのですが、恐らく楽曲の粒ぞろいという感じでは、2000年代のアルバムの中で一番よくできてるのではないかと思うのです。

 そりゃもちろん、トランペット、トロンボーン、サックスという、シカゴの特徴である3本の管楽器のうち、2人が74歳と75歳という事実は隠すことができないのだと思います。以前のアルバムに比べると、なんかホーンの音が生っぽい感じがするのですが、ひょっとするとこれはホーンの皆さんの肺活量が落ちてる結果なのではないかなんて思えます。でも、それはそれでホーンが上手いことカウンターメロディを入れたりしていて、これが見事にシカゴなのですよ。こういうこなし方を「加齢による技術の低下」をごまかしてると見るのか、「円熟の技」と見るのかで、評価が大きく変わると思うのですが、わたしは絶対にこれは「円熟の技」だと思うんです。以前と同じ事が同じパワーで出来なくなっているにもかかわらず、誰がどう聞いてもシカゴの曲のホーンセクションになってるのですからね。

 あと、これも今回初めて認識したのですが、2018年に加入した新メンバーで、ボーカル&ギター担当の、ニール・ドネルという人がいるのですが、この人が現在66歳なんです。ということは、シカゴに加入したときすでに62歳という、なかなか渋いメンバーなのですが、これがどんぴしゃシカゴにハマってる。(まったく、60過ぎるまで何やってたんでしょうねえ…w)今回のアルバムはこの人が参加して制作された初めてのオリジナルアルバムになるんですね(2019年にクリスマスアルバムを出してるのでここには参加してますが…)。これはわたしの思い込みかもしれませんが、ひょっとすると、シカゴに新しい力を与えたのはこの人なんじゃないかとも思ったりします。この人を中心にしてうまいことハモることで、それがまたシカゴを感じさせるようにうまく作られてるんですよね。この曲のハモリを是非聴いてみてください。

 先日のアバのニューアルバムを聴いたときにも思ったのですが、往年のビッグスターがこの年齢になってリリースするアルバムというのは、永年のファンからすれば、もう評価を超越した存在なのです。アルバムがリリースされることだけで奇跡に近いわけで、もう中身なんか何でもいいからという話になりかねないのですが、どっこい今回のシカゴのアルバムは、忘れていた昔のなまくらファンすらも再起動させるに十分な内容であるほどの佳作だと思うのです。

 こんなにも充実した彼らの活動に触れることができて、今年63歳になるわたしも「まだもういっちょう」くらいに感じてしまうんですよね。そういう勇気や希望を2022年に与えてくれたシカゴ。改めてとてつもないバンドだと思うんです。いやあ、音楽って本当に良いですね。

PS.ついでに最近ピーター・セテラどうしてるのかと思って調べたんですけどね、AppleMusicにある最後のアルバムは2005年のもので、それ以降のリリースはありません。Wikiによると、2016年にシカゴがロックの殿堂入りする際に再結成の話し合いがもたれたようですが、それも決裂したそうなんです。(いい年なんだから仲良くしろよないいかげん....。)その後は特に情報も無く、今年の2月からはオフィシャルサイトである、petercetera.comがアクセスできなくなっている状況が続いているようです。彼ほどのビッグ・ネームがそんな状況というと、ひょっとして病気してるのかとか…。なんかちょっと心配ですねえ。




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